NAVIGATION’01 【始動・・・】
「P-1706-014 パイロット・マリー、パイロット・ハキの指導下で
右翼ハンドルの操作を習技しましたイツキ=ヒトツギです。よろしくお願いします。」
「僕はS-1706-087 システマー・ハーレル、パイロット・ハキの指導下で
アウスラーの整備を習技しましたゼノン=ウォルトです。」
アウスラー第4号機の前に立ち
俺とゼノンは俺達を見定めるように睨む先輩達の前で自己紹介をした。
今、第4号機の前にいるのは俺とゼノンを含めて全部で6人。
新人は俺達2人だけで残りの4人の人たちは、
いずれもアウスラー内では名の知れた各々が実力を持ち合わせている。
「始めまして、イッキくん、それからゼノンくん。2人のことはハキから聞いているよ。
こちらこそよろしく頼むよ。」
「あ、はい。足手まといにならないよう頑張ります。」
薄い金髪碧眼の彼は今回、
惑星・エスクゥード上陸チームのリーダーに選ばれたシエルさんだ。
に、してもだ。
・・・ハキ先輩に聞いてる・・・か。
あの人の名前が出てくると、あんまり良い印象に思えないのは何故だろう・・・。
「ほら新人! いつまで突っ立ってるのよ。ボサっとしてないでさっさと乗った乗った!
時間は待っちゃくれないわよ?」
「すみません、今行きます!」
俺に手招きをした彼女は今回のチームで唯一の女性パイロットだ。
制服の違いで見分ければ、今回の搭乗員はパイロットが4人で
システマーが2人ってところだろう。
隣を見れば、ゼノンも早速先輩方の指示を受けて調整に入っている。
「あたしはレフトパイロット専門なの。君はライトでしょ?
だからそっちに座って。リーダーと副リーダーが中央に入るから。」
そう言われて俺は第4機の中を見渡した。
本艦の中にこの第4号機がしまわれてあったわけだから
小型の戦艦だろうとは予想してたけど・・・・・・
・・・いくら小型の戦闘艦とは言え、
人数分しか座席が無いのってかなり問題あるんじゃないのか?
「どう? 驚いたでしょ?」
「・・・本当に俺の席ってここなんですか?」
「当たり前じゃない。・・・単独任務に出るということは言い換えれば
『自分の後始末はてめーでなんとかしやがれ』ってことなのよ。
最小限のコスト、最小限の人材で行動してる以上、
新人だからっていって加減してる余裕がこっちにもないの。」
軌道の打ち込みを始める先輩は流石に手馴れてるように見えた。
彼女と俺が左右のハンドルを握るということは、
俺自身も3つの心臓部の1つを支えるということになるんだ・・・。
大気圏内は重力空間の境目。
ミスなんかしたら間違いなく戦艦も俺達自身もただじゃすまないだろう。
「大気圏内との重力誤差および着陸地点の検索を開始します。」
・・・人間の住む惑星だから重力は地球や俺の星と同じくらいか・・・。
「――――着陸地点は座標11・58・36・27に設定します。」
「・・・了解しましたパイロット・イッキ。
それで、着陸地点の文明はどれくらいのもの?」
「はい。着陸予定の場所から10qほど南に集落らしき場所がありそうです。
そこを少数のセンサーが感知しています。
惑星文明レベルは5〜12。俺達の降りる地域周辺はレベル6で、
地球文明で言えば14〜17世紀辺りの旧ヨーロッパクラスの文明レベルだと言えます。」
「そうね、基礎知識はとりあえず合格ってとこかしら?」
・・・やっぱり見られてる。
心臓に悪いな、これ。(すこく緊張するし・・・)
「ローズさん、イッキ。船の最終調整が全て終わりました。
こっちはいつでも出れますよ?」
「了解したわゼノン、ご苦労様。」
ゼノンとシステマーの先輩らしき人が助手席に座る。
「これよりアウスラー第4号機は惑星・エスクゥードに向かいます。
・・・応答どうぞ。」
「―――了解。」
回線から、本艦に残って仕事をしているマリーさんの声が聞こえた。
「それでは、大気圏ギリギリまで降下させてください。」
「わかりました。」
ハンドルを握り隕石の残骸にかすらないよう、着陸予定の座標に向けて艦を動かす。
「イッキ。」
「なんだよゼノン。今話し掛けるなって・・・」
「パイロット・イッキ。前方の検索範囲を広げてくれないか?」
「え・・・? 何で?」
「今、一瞬だけど危険感知パロメータが上昇した。」
俺の隣に座るゼノンは、ハンドルを握る俺の横で突然そんなことを言い出した。
危険感知パロメータが上昇・・・??? どういうことだ?
ゼノンに言われれば、当然俺もパロメータに目を向けるがそれが動いた形跡が何処にも無い。
普通なら見間違いだと思うだろう・・・。
だって、先輩達も何も反応してないし・・・・・・
だけど・・・もしもゼノンの言ったことが正しかったら・・・?
左翼はローズ先輩がハンドルを握ってるから問題はないだろう。
俺は左手でハンドルを押さえ右手でキーボードを叩いた。
本来ならこのような補助的要素はゼノンの仕事なんだろうけど、
俺達の乗ってる本艦が狭いことと、
もうすぐ大気圏に突入することから立ち上がることは出来ない。
「検索範囲拡張!」
・・・これか、ゼノンが言ってたのは・・・
「どうかいたしましたか? パイロット・イッキ。」
「あの・・・ 1億光年前方に巨大な戦闘艦と思われる物体発見。
こちらに近づいてきます。」
「戦艦の正体をモニターに出してください。
それから、1000光年単位にまで近づいてきたら回線を繋ぎ、
40パーセントほどのシールドを前方に張って下さい。」
「・・・わかりました。」
シエル先輩の指示は的確で・・・おそらくそれは最良の方法だっただろうと俺自身も思う。
なのに、何故か不安を感じた。
俺自身が緊張してたのか、
それとも野生のカンというものなのだろうか?
俺はシールドを張る為にキーボードをたたく予定だった手をとっさにハンドルにつけて、
エスクゥードの大気圏内に本艦を突撃させた。
「イッキ!! 馬鹿っ! お前何やって――――――」
ずどぉぅぉおおおぉおおぉぉぉぉおおおおぉぉぉおおおんっっっっ!!!!!!!!!!!!
『!!!??』
俺を非難しようとしたゼノンの声をとっさに遮ったもの・・・
それは――――――
「・・・今の爆音は・・・?」
「見ろ。この戦艦の背後にあった巨大隕石がこっぱ微塵だぜ?
こりゃどーいうこった?」
シエル先輩の前に座る副リーダーの彼はバックの映像をモニターに移し呆然としていた。
「これはまた・・・。
・・・どうやら今のはイッキくんに助けられたみたいですね。」
座標軸にきちんと辿り着けるよう、
俺がさっきまでハンドルを一生懸命傾けていたのはあの巨大隕石が邪魔だったからだ。
この艦のおおよそ10倍の大きさはあるだろう巨大隕石を避けて
ようやく俺達はエスクゥードに降りる予定だった。
「・・・あれはエリアル砲。どこの戦艦だかわかんないけどなんなのさあいつ等。
あんな物騒な武器もって宇宙を散策してるなんて、頭おかしいんじゃないの?」
「ゼノン。エリアル砲って・・・?」
「エリアル砲は最近銀河同盟軍で開発された新兵器のことさ。
一般に知られるオーソドックスな弾は副砲に配置されていて直砲連射出来るのが特徴だけど、
エリアル砲は直砲型だけど主砲に配置されてるもので、弾がレーザー状になっているのさ。
威力は魚雷砲以上だから、こんな小型の戦艦少しでもかすれば木っ端微塵だろうね。」
あの巨大戦艦が銀河同盟の船だとしたら、
奴等は俺達の乗っている戦艦が連邦のものだとしってたから攻撃を仕掛けたのか・・・?
だとしたら大問題だぞ。
・・・確かに、俺達が所属している銀河連邦と対する銀河同盟は昔から
あまり仲が良くなかったけれど、
同盟の戦艦が連邦の戦艦に攻撃を仕掛けたとなれば、
今回ばかりは戦争は避けられないんじゃ・・・・・・
「イッキ。余計なことは考えなくていいよ。それよりも今は前を見て。
大気圏に入ったとは言え、こっちは向こうの敵船に気付かれないよう基軸を消しながら
惑星内に侵入しなくちゃいけないんだから。」
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