平成社会の人々の動き



第 2 話  「仕事熱心」は「会社の敵」か?
(狂牛病騒動の周辺)


<狂牛病発生とその影響>
 ほぼ16年前の1986年、英国に発生した狂牛病(参考メモ・その1)は6年前遂に人間を襲い、
(1996年3月、狂牛病は人間に移る可能性を英国政府が発表)その後、欧州に蔓延した病原体は、
いよいよ2001年9月、日本の千葉に上陸した模様です。
 後手に回った政府の対処政策も、少しづつ事態の後追いをしています。

 ー21世紀の到来とは、米国のテロ事件とそれに続く
  テロリスト掃討戦争と狂牛病の蔓延の幕開けに過ぎません。
  何たる希望の持てない新世紀なんでしょうか。ー

 さらに年が改まり、2002年には狂牛病は新たな社会的病痢をばらまくというおまけまでついて
きました。  
<国産牛肉買い取り制度>
 政府が打ち出した狂牛病対策である国産牛肉を公的資金(即ち国民の税金)で買い取って処分する
(参考メモ・その2)という動きにまんまと便乗して、自分の会社の倉庫に溜まった輸入牛肉も
ついでに国産牛肉とすり替えて、転売してしまおうという魂胆です。

 次の新聞記事は、牛肉偽装転売を伝える朝日新聞第1報(平成14年1月23日)朝刊と夕刊です。
 関係者は、朝のインタビューでは、「輸入牛を国産牛と偽ることはない」「我が社の品質管理や
在庫管理の体制から考えて、あり得ない話だ」と発言していたのが、半日経つと「詰め替えた量は
13.8トンです。大変申し訳なくお詫びします。」となったわけです。
 中国の諺に「朝令暮改」というのがあります。人間は、二千年も三千年も前から、同じ行動を
繰り返しているのです。

平成14年1月23日付けの朝刊。22日の情報キャッチ第1報
同日付けの夕刊。関係者の陳謝会見。
 後で恥を掻くなら、最初に「調べます。」ぐらいに言っておけばよかったものを、完全に否定して
しまうと、聞く者の怒りは倍になって帰ってきます。
 概して、これまで新聞紙上の社会悪報道は、だいたいこの手の展開ですから「またか」の感がします。
 人間がだんだん素直で、正直に、誠意が出しにくい世の中になってきました。

 「会社への忠誠」というより、自分の管轄職場の「業務処理」に熱心の余り、遂に「会社への不忠」
ひいては、「社会的信用の失墜」を招いてしまう結果となりました。やってしまった関係者は、
気がついたら、狂牛病にむしばまれていたのです。  
  影響は、当該事態の処理、あるいは当該企業だけの問題でなくなり、親会社を含めた会社存亡問題
まで発展しそうです。

系列企業集団全体の経営大改革に迫らざるを得ないことを伝える新聞記事
(読売新聞H。14.2.3) <企業の社会的責任とは>
 「社会道徳の狂牛病」にかかってしまった当該食品会社の親会社も、また2年前(2000年)に
食中毒事件(参考メモ・その3)を起こして社会的不安(中毒患者1.1万名以上の過去最大の
中毒有症者を出した)を与えてしまいました。

 たまたま会社が同じ系列に重なってしまったのかも知れませんが、一般食品消費者からみれば、
「またも」「おまえもか、ブルータス!」と叫ばざるをえないのです。

 因みにホームページの関連情報(参考メモ・その4)を拾ってみますと、実は、当該食品会社は、
ハムにゴキブリが混用する騒ぎを起こしたとされています。(2000年9月5日付け新聞情報)

 企業はその担当業務を通じて、社会に貢献するというのが本来の経営目的のはずです。自分の
企業だけが生きて行く、また生き残って行くための排他的動きは、明らかに非企業的行動であり、
反社会的盲動といわざるを得ません。   
 己の企業だけ生き残ってもその顧客たる一般大衆がいなかったら、企業は存続どころか成り立たない
事を考えるべきでしょう。 
<十二支は人間を襲うのか?>
 人類の歴史の語るところでは、狂牛病の発生前に、19世紀には狂犬病が発生していました。
 かのフランスのルイ・パスツール(参考メモ・その5)が人類に貢献する研究を行ったことでも
有名です。

 昔から、ペストの「ねずみ」、狂犬病の「いぬ」ときて、今度は「うし」です。
  また狂牛病には「ひつじ」の骨粉が関係しているとのこと。
 「とら」も元々人間を襲います。
 つぎは、「うさぎ」、それとも「たつ」?「み」?「うま」?。
  はてはて、困った十二支です。 

参考メモ・その1<狂牛病>
  学術名称 牛伝染性海綿状脳症 Bovine Spongiform Encephalopathy 略してBSE
 症  状 脳がスポンジ状に冒されて死ぬ牛の病気
 原  因 プリオンと呼ばれるタンパク質が病原と考えられている
 人の感染 人での脳の病気であるクロイツフェルト=ヤコブ病が狂牛病と症状が
      似ているので牛との関連が疑われている。

参考メモ・その2<国産牛肉買い取り制度>
 制度の目的 狂牛病の牛全頭検査が始まった平成13年10月18日より前に処分された
       国産牛肉を国が買い取って焼却処分する
 法律事業名 「市場隔離牛肉緊急処分事業」
 国の委託先 日本ハム・ソーセージ工業協同組合など6業界団体
 施行予算額 買い取り、保管、消却を合わせた総事業費は293億円(’01年度予算)

参考メモ・その3<牛乳食中毒事件>
 大阪で製造された「加工乳パック」に食中毒病原菌が混入し、喫食した関西圏内約1.1万人以上が
嘔吐、下痢、腹痛などの被害を受けた事件です。
 
 下記の紙面は平成12年6月30日の新聞報道です。
 今回と同じように「発言に窮し、」修正会見を重ねたもの。
 併せて新聞は、今回の事故が初めてでないことを伝える解説記事も掲載しています。


参考メモ・その4<ホームページ参考情報>
 インターネット情報として、各種のホームページを覗いてみますと、いろいろな狂牛病BCEに
関する情報が2万件も発信されています。一例を下表に掲げます。
情報発信源区分発信源ホームページURL
国家機関農林水産省http://www.maff.go.jp/soshiki/seisan/eisei/bse/bse_j.htm
自治体東京都衛生局http://www.eisei.metro.tokyo.jp/vet/bse.html
報道機関NHKニュースhttp://www.nhk.or.jp/kdns/_wakaran/01/1006.html
インターネット
プロバイダー
Yahoo情報網http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/
医師情報国立病院医師
個人ホームページ
http://square.umin.ac.jp/massie-tmd/bse.html
 これらの情報源の内、Yahoo関係は、情報を関連トピックス、特集記事、社説、コラム、解説、
用語、カテゴリ、掲示板等に分類して、情報検索し易いようになっています。
 また、一国立病院の医師の情報発信は、英国で狂牛病が発生した頃現地で研究していた関係上、
狂牛病に関心を持って、既に1996年頃から、個人的ホームページで、情報を発信してきた人です。
 併せて「牛肉を安心して食べるための狂牛病Q&A」(主婦之友社版)も著している医師です。
 現場に近い立場から、事態の認識を正確に、と訴えておられます。

参考メモ・その5<狂犬病とパスツール>
 狂犬病の内容  狂犬病ウィルスを持った犬にかまれて感染する急性伝染病で、届出伝染病。
     症状  発病すると、頭痛、不眠、知覚異常が起こる。次いで発熱、唾液量が増え、
         昏睡状態となり、しばしば呼吸困難になり麻痺を起こして死亡する。
     伝染  発病率10〜20%、死亡率100%
     予防  ワクチンが有効。
     発生  近年国内では見られないが東南アジア、印度、アフリカ、南アメリカなどへ
         行く場合は予防接種が必要。

 パスツール(1822〜1895)
         細菌学の創始者。ソルボンヌ大学で教鞭を執った後、パスツール研究所創設。
         近代微生物学、腐敗、最近など医学および食品加工などの土台となる研究を
         行った。
         低温殺菌法を考え、微生物の自然発生説を否定した。
         狂犬病の予防治療の研究とワクチンの創製(1885)を行っている。
  

平成14年2月6日   ***  奈華仁志  ***


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