平成社会の人々の動き
第 16 話 「九州国立博物館の開館」
<第4番目の国立博物館>
平成17年10月16日、第4番目になる国立博物館が九州太宰府市に誕生しました。東京国立博物館が、内務省の
博物館として明治8年(1875)に誕生してから、125年目、奈良国立博物館の誕生(明治28年・1895年)からは
110年目、京都国立博物館の誕生(明治30年・1897年)から108年目に当たります。
更に遡るならば、聖武上皇の遺品を東大寺に納め始めた天平勝宝8年(756)に正倉院が誕生してから、1250年
振りと云うことになりましょう。
東京の博物館が日本という極東の国が近代国家的な装いを為すための一環として建築されたのに比べて、奈良に
於ける国立博物館の役目は、いわば「正倉院」の伝承的役割が大きく関わり、定期的に行れてきた「正倉院御物展」は
意味のある企画と言えましょう。さらに京都の博物館は、まさしく「古都における博物館」的意味合いが深いわけです。
九州の地に於ける国立博物館の意図するところは、「日本文化形成をアジア史的観点から捉える」ことにあります。
確かに九州の地は、古来「大陸及び西方世界の文化を受け入れる窓口」であったのです。即ち、古くは遣隋使や
遣唐使であり、近世では長崎の出島を通しての文化導入の要路であったわけです。
今回、九州国立博物館は、大凡11年前の平成6年(1994)、文化庁に準備のための委員会を発足させ、8年の
準備期間を経て、平成14年にいよいよ建設に掛かり、3年の工事を経ての開館を迎え、文化庁と福岡県が共同で
「独立行政法人国立博物館」なる新たな体制で出発しました。


九州国立博物館のロケーション(朝日新聞平成17年10月15日付)および博物館案内パンフレットより


(左)東エントランスからの博物館全景(流線型屋根にブルーガラス張り構造)(右)構造物の概要


(左)メインエントランスへのプロムナード(大宰府天満宮との分岐点)(右)(万葉歌碑とエスカレータ入口)


(左)東エントランスへのプロムナード(エントランスホールへの入口)(右)プロムナード脇の万葉歌碑(大伴旅人歌)



(左)展示室各階の構成(中)4階の「文化交流展示室」(右)1〜3階の構成
東京国立博物館が東京という「世界的都市の博物館」中に位置しているという背景があり、京都は正しく何処を
掘っても千年の遺跡が埋蔵されている土地柄に立脚し、奈良は更に古く1300年の遺跡上にあります。
一方、九州博物館は、嘗ての西の都「大宰府政庁」が近接し、加えて1100年の寺社「大宰府天満宮」に隣接して
いるところが特徴と言えましょう。したがっていずれの博物館の立地点とも歴史的に意味があると言えましょう。


(左)大宰府天満宮の楼門(右)拝殿正面
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<特別展示>
九州国立博物館では、平成17年10月開館記念特別企画として、「美の国日本」と銘打った展示を43日間に
渡って行いました。

開館記念特別展の入場券
展示物の構成は次のようになっています。主な国宝も挙げておきます。
第一部 アジア古代王朝の精華 国宝:金印「漢委奴国王」 国宝:伝橘夫人念持仏および厨子
第二部 大航海時代の日本
第一章 風俗画と蒔絵 国宝:洛中洛外図屏風
第二章 芸能と遊芸 国宝:風俗図屏風(松浦屏風) 国宝:花下遊楽図屏風
第三章 武士の装い
第四章 信仰の世界
第五章 肖像

(右下)国宝:金印「漢委奴国王」(中下)国宝:花下遊楽図屏風、その他正倉院御物類

国宝:洛中洛外図屏風

国宝:風俗図屏風
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(参考)「国立博物館」と博物館の在り方
国立博物館は次のように分類されます。
1.文部省(現在の文部科学省)関係
(1)国立科学博物館(生涯学習局生涯学習課所属)
(2)国立民族学博物館、国立歴史民俗博物館(国立大学(大學法人)共同利用機関)
(3)東京国立博物館、奈良国立博物館、京都国立博物館など(文化庁管轄、文化財保護法による)
(4)旧国立大学(北海道から沖縄まで)附属博物館(47館あり)
2.文部省(文部科学省)以外の国立機関に所属する博物館(29館あり)
これらの創設は明治期のものが僅かに5館ほどで、戦前までに設置されたものがそのほかに3館ほどあるだけで、
それ以外はほとんどが戦後の一時期(昭和40年代〜昭和50年代)に建設されたものばかりです。
因みに今回開館された「九州国立博物館」の周辺でみますと、
1.大宰府天満宮宝物殿 昭和3年(1928) 大宰府天満宮内 同神社の1025年大祭記念事業
2.九州歴史資料館 昭和48年(1973) 太宰府市内 県立の歴史博物館
人間の歴史をある限られた建家の中に展示することには限界があります。全ての歴史事物をすべての分野に
渡って万遍なくその遺物を収集・保管・展示することは至難の業です。部分的な文化伝承にならざるをえません。
そこで重要な意味を持ってくるのが、伝統芸能であり、お祭などの一般庶民の習慣であり諸行事であるのです。
一例を京都にその例をとって見ますと、次のような「動く博物館」ともいうべき「伝統芸能的博物館」、
「広域博物館」ともいうべき「空間的地域博物館」が抽出できそうです。
1.時間的博物館 各種の伝統的祭事、 一例 葵祭、祇園祭、時代祭など
2.空間的博物館 各種の埋蔵物、歴史的建造物 一例 神社・仏閣など(世界遺産の例あり)
京都の市街周辺の景観そのものがすでに実地博物館というべきもの
これらの博物館では、一般住民がすなわち「博物館の展示物」であり「学芸員」となっているのです。これこそが
博物館が目指している人類文化の遺産と民族文化の伝承そのものではないでしょうか。博物館内に「本物」でなく
「レプリカ」で展示するのはある程度やむなしでしょうが、祭事や伝統芸能を維持伝承していくこともそれと同等以上に
重要な意義を持っていると見なければなりません。
博物館という名の下に明治以来、西欧社会的構造物の設定と展示物の確保に力を入れてきましたが、これからは、
「動く博物館」や「広域博物館」にも注目して、その展開に配慮すべきではないでしょうか。
人間は放っておきますと、「破壊行為」としての「戦争」に走りやすい者ですから、その破壊行為を上回る、あるいは
押し込める「保管・維持・伝承行為」を意欲的に進めるべきでしょう。世の中が落ち着いているときには、後者が
優先しますが、ややおかしい社会風潮になりますと、前者が頭をもたげます。用心に越したことはありません。
「破壊行為」は僅かなエネルギーでできますが、「保管・維持・伝承行為」はその何十倍の時間とお金がかかる
事を肝に銘ずべきです。
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平成17年12月10日*** 奈華仁志 ***
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