「お前もお返し配るのか? 大変だなプッチー?」
横にいる、なにやらサンタクロースもビックリな袋を抱える、猫の着ぐるみを着た少年に俺は声をかける。
「そういう小緋だって、大変そうじゃにゃい」
俺の抱える袋を指差し、そうプッチーは笑う。俺だって、好きでんなことやりゃせんわい!
「ん、まぁな。ったく、なんでこんなことせにゃいかんのか……」
「やっぱりもらったらお返ししないと」
「そらそうだが……はぁもぉ」
魔力の塊だったころなら、こんな妙な習慣に踊らされずに済んだろうけど今はそうも行かねぇ。ま、てめえで選んだ道だ、文句を言うのもアホらしい。
「んじゃま本日のお仕事、開始としますか。プッチーがんばれや」
「そっちもね」
そう言って、お互い別の方向にダッシュ。さーって、配るぞコノヤロウ!
「んと、数はざっと20弱か。ったくよ……」
しかし……なんで走ってるんだ俺? まあプッチーもだけど。
「あ、オープンスケベなしゃおふぇいくんだ〜。ヤホ」
こんなことを言うのは、自分がオープンスケベな飛鳥だな。
ダッシュの勢いを殺すために、意味もなく前方ジャンプし着地する。そうしてからひとこと「よ」とだけ答える。
「かっこい〜」
とかいいながらパチパチと拍手する飛鳥、心にもねぇこと言ってんだろうなぁこいつ……。
「あのさ……意味もなく、拍手の手の動きおおげさにしてね?」
そのせいで、腕で胸を寄せては腕が離れて胸が揺れ、のサイクルが繰り返されてる。正面にいるから、たぶん俺の男子として当然の反応は見られてるんだろうな?
「あ〜ばれた?」
しかし、男子の反応部分には触れることなく、それだけを飛鳥は答えた。
「はぁ。ほんとお前挑発好きだよな?」
やれやれと肩をすくめる俺に、飛鳥はひとこと。
「オープンスケベですから〜」
「ち! ち! を! よ! せ! る! な!! んなことしてっと襲うぞほんとに」
呆れて言う俺に、飛鳥はにこにこしながらこう言った。
「だいじょーぶ、襲われそうになったら、物理的にぶっとばすから♪」
「笑顔で言うことか?」
「ところで、その袋なーに?」
そこしかとですかそうですか……。
「ん? ああ、これな。今日3月14日だろ? 先月くれた奴にお返しだよ」
「ほれ」っていいながら、俺は袋を漁って、やっつけ程度に袋に包んであるクッキーを取り出した。
「愛がないなぁ〜、もうちょっとかわいいラッピングしてたりとかしないの〜?」
「あのなぁ……お前だって簡素なもんだったろうが?」
「ちっちっちぃ、わかってないなぁ〜。相手がいくら簡素な物をくれようが、そこはそれとして お返しは派手にするのが筋ってものだよ〜」
指を振る動作はいい。どうしてそう乳揺れを誘発するような距離で腕ごと指を振るんだ……。
「んなこと12歳に諭されたくねぇよ! それとお前乳揺らしすぎだ!」
「んもぉ、いくらわたしが巨乳だからって、そんなわざとおっぱい揺らしたりなんかしてないよぅ。しゃおふぇいくんのえっちぃ〜」
とかいいながら、俺の手からクッキーをぶんどった。
「お前の方がよっぽどだ……」
ああもぉ、疲れる……。
「ところで銘菓いねぇのかよ?」
「お菓子じゃないですよ」
「おわっ?! い、いつのまに?」
「小緋さんが叫んでたので来てみたんです、たぶん叫んでる内容からしてお姉ちゃんと話てるのかな とも思って。こんにちは」
「あ、そ そうか……こんちゃ。ってこるあ飛鳥! 袋の中を漁るな!」
「あ、いいのみーっけ。これ明香のぶん〜っと」
取り出されたそれは、俺が人をサンドバッグ扱いにしてるけったいなマスターにやろうと思ってる奴。
「まて飛鳥、それはやれん。ぜぇぇったいにやれん!」
いいながら飛鳥から、最重要物をひったくる。
「わっと、なんだよぅ〜。限定品あるんだったら、別にしとけばいいのに〜」
「……ごもっとも……」
軽くへこんでいる俺に、明香はおずおずと切り出して来た。
「あの、わたしお返しとかいいですから」
「いや、流石にもらいっぱってのは悪りいだろ。んじゃ、これでいいか?」
いいながら、ホワイトな板チョコを一枚取り出す。それを可愛らしく両手で受け取りながら「はい」って笑顔で頷いた。
「こーらー! なんで明香だけ表現が優しいんだ〜!」
「人の地の文に文句つけんな! 脳内覗いてるようなもんだぞそれ!?」
「ぶぅぅ〜」
「ったく、こいつは……」
「ずいぶんいっぱいあるみたいですね。ごめんなさいおねえちゃんのせいで体力使わせちゃって」
「いや、明香が謝ることじゃねぇって。さて、ついでなんで明日奈にもわたしたいとこだが、どうやらいなそうだな?」
「うん、あすにゃんならたぶんあっちじゃないかな?」
指差されたのは、今しがた走って来た方角。まじっすか……。
「とんぼ返りかよ……」
「ねえね、わたしたちもついてってい?」
「ん? まあ別にいいぜ」
「よっしゃ、いこっ♪」
「うん」
はぁ、まったく飛鳥のペースだとほんと疲れる……。
「おかえし?」
「あれ? ぼくにもくれるの? ぼく、小緋にあげたっけなぁ?」
飛鳥の言う、おそらく明日奈がいる とされた場所。明日奈は今どうやらトイレらしく、いたのは舞と春奈のみ。
「もらったんさ二人からも。ってことでお返しもらっといてくれや」
ビターな板チョコ二つを取り出し、テーブルにおく。二人は礼をいいながらそれを受け取った。ちなみにここはどこかと問われれば。
「ここは、お兄ちゃんのキャラたちがよく集まってる雑談上ですわ」
「飛鳥、だから人の地の文に答えるなと言ってるだろう? それとなんでお嬢様口調なんだよ?」
「ん? のりだけど?」
「あーそーですか……、なんかその辺りDっぽいな」
「そっかなぁ?」
「あれ? 人増えてる」
「おうあすにゃん、こんちくわ〜」
「こんにちは明日奈ちゃん」
「よ」
俺ら三人の挨拶に、「こんにちは」と少しおっとりした声と調子で答える明日奈。
「しゃおふぇい君、そのおっきな袋は?」
「みんなから聞かれるな……、これホワイトデーのお返し品袋」
「そうなんだ〜」
「と言うわけで、ほれ 明日奈にもやんよ」
板チョコを取り出し渡す。明日奈はそれを頷いて受け取った。
「チョコレートをしてやんよ〜♪」
どこかで聞いたようなメロディーで、そんなことをいきなり歌いだす飛鳥。
「チョコレートをしてやんよって、文章としておかしいだろ?」
「ところで、後どれぐらいあるの?」
春奈に聞かれて、俺は「そうだなぁ、だいたい後5個ぐらいかな?」と答える。
「そっか、がんばれ」
「おう、がんばるさ」
そういい席を立つ。くっついて来ると言っていた爆乳小学生姉妹も、いっしょに席を立った。
「あ、しゃおふぇいくんにあすかちゃんとめいかちゃん。こんにちわ〜」
「こんにちわまりえちゃん〜」
「ういーっす「こんにちは」」
と言うわけで、次になにかをあげる人登場。
「その袋な〜に?」
答えるのめんどくさくなってきたんですけど……。
「バレンタインのおかえしが入ってるんだって」
と、後ろから明日奈の声。
「ありゃ? ついてきてたのか?」
こともなげに「うん」と明日奈は頷いた。
「そぉなんだ〜」
「はい、これ」
「飛鳥さん? それはわたさないって言ったでしょうが?」
「冗談だよぅ〜」
「ったく、まりえはこれでいいか?」
このさい、勝手に飛鳥が袋ん中漁ったのはつっこまないでおく。
「わぁ、ちょこくっきーだぁ〜。ありがとぉ」
ものすごい笑顔で、まりえは俺からのお返しを受け取る。
「喜んでもらえたようでなによりだぜ」
「うん。それで、後誰にあげるの?」
「後は紅娘と爆裂姫……ぐらいか?」
考えながらの俺の答えに、まりえは「そっかぁ。がんばってね〜」と。なんかみんなからがんばれと言われるんだがなぜだ?
さて、次の人は?
本を閉じる