神技を超えるもの
----------------------------------------------------------------------------
----
「今日でここともオサラバか…」
アメリカのとあるダウンタウン、その中心部。
明かりの消えた安アパートの一室を、一人の男が去ろうとしていた。
「なんだかんだあったが、それも終わる。次のKOFが終わる時にな…」
白いジャケットにGパン、黒のインナーを着たその男は、確かにここ2〜3年生活環境を激変させていた。
地球意思を封印に追い込むもつかの間、秘密組織ネスツに捕まり、そこから逃亡。
99年、ネスツの真意を問い質すために単身ネスツ基地へ乱入し、一年の逃亡生活を経て翌年もネスツ地下施設に現れた。
その後、ネスツの監視が甘くなったのを契機に、ここアメリカでストリートファイトで生計を立てていた。
当然だが、その生活はかつての学生としての日常からは、あまりにもかけ離れていた。
ただ一つ変わらなかったもの-それがKOFだった。
(そう、いつもKOFだった。全てが終わった時も、全てが始まった時も)
KOF97直後に行方を眩ました後も、どういうワケかこの男はKOFの場に常に姿を現していた。
ネスツの関わった99・2000年の大会は無論のこと、オロチ一族の絡んだつい最近の大会にまで首を出している。
そして、今度の2001年大会にも。
(主催がネスツなら、今度こそケリをつけられるハズだ。神楽がオロチを誘い出した
あの時みたいにな…)
重い決意を胸に扉を開け、脇にあった表札を剥ぎ取る。
「ユキ…もう、待たせねぇ」
そう言って投げ捨てられた銅板には、ただ「KYO」とだけ刻まれていた。
「ああ、明日の夜十一時。例の公園でな」
その言葉を最後に、草薙 京は電話を切った。
安アパートを出て数分後、京は近くの公衆電話から国際電話をかけていた。
終盤小銭が切れかかったが、なんとか日本にいる紅丸と話をつけられた。
アメリカで世話になった面子には昨日のうちに顔をあわせてある。後は京が日本に戻るだけだった。
一夜に一本しかない空港行きの深夜バスに乗るべく、京はボストンバッグ片手に人気のない町を歩き出す。
時間に余裕を持って出てきてはいるが、京は物好きなあの女が見送りに来るのはわかっていたので、ゆっくりするワケにもいかなかった。
歩き始めてそう経たないうちに、ある場所に辿り着く。そこは―ストリートファイトの舞台だった。
(大分世話になったな…)
日当たりの悪い路地裏を抜けながら、そう思う。
生計をただ闘いのみにて支えていた京にとって、ここで闘うことは日常の一環だった。あの女と会ったのもここだ。
だが、それも終わりである。少なくとも、ここに来ることはもうない。
歩を止めることなく大通りへと抜けようとした、その時。
「やっと見つけたぜ…オリジナルさんよ」
背後から自分と同じ声がする。
京が振り返ると、そこには自分がもう一人いた。
「…クローンか?もういなくなったと思ったんだがな」
「二年前に出回った半端ヤロウどもはもういねぇよ。オレはそいつらとは違う。オレの今の名は『KUSANAGI』。オリジナル、つまりテメェとすりかわる為に来た」
かつて京自身も着ていた改造学ランに身を包んだKUSANAGIと京は、ちょうどストリートファイトの舞台の上に立っていた。
「すりかわるだと?何ほざいてやがる」
言いながら、京はKUSANAGIを睨みつけていた。
「大体草薙の名も拳も、お前なんかに渡した覚えないぜ」
「どうせ言ってもムダなのはもうわかってんだよ。なら−実力で黙らせるまでだ!」
言うなり、KUSANAGIは地を走る炎−闇払いを音もなく2連射した。
(早い!)
炎の速さに驚きながらも、京はすぐさまボストンバッグを放り投げ、闇払いを避ける。
「いくぜ!」
体勢を立て直した直後の隙を狙って、KUSANAGIは一気に距離を詰めた。
そして、前転から起き上がった京とぶつかる。
「真っ赤に燃えろッ!」
「受けろ…このブロー!!」
ゴウッ!!
炎を纏った両者の拳は、見事に直撃していた。
京のボディブロー・百八拾弐式を受けたKUSANAGIは壁に叩きつけられていたが、京自身もKUSANAGIの琴月を喰らっている。状況は五分だ。
「流石にやるじゃねぇか…オリジナル!」
KUSANAGIの声には、明らかな歓喜、そして−何故か若干の焦りが含まれているように見えた。
「K9999の奴とは比べ物にならねぇ…オレが座るべきイスはこうでなくちゃなぁ。灯蛾の如く、燃え尽きさせてやる!」
「お前も前の奴よりは思い切りがいいみてえだな。だが…こっちも人を待たせてんだ。本気でいくぜ」
言いながら京は、懐から日輪の描かれたボロボロのグローブを取り出し、拳に嵌める。
「這え!」
「その手はくわねえ!」
またも打ち出された闇払いを、京は小ジャンプで越える。
「オラァ!」
「ほうりゃあ!!」
バキッ!!
(な…!)
低空の蹴り上げを見て七拾五式・改が来ると踏んだ京だが、反射的に出した鬼焼きは何故か下方に向けた蹴りに潰されていた。
「七拾五式・改からR.E.D.KicKに変えやがったのか…?」
「七百拾壱式・乱れ独楽ってとこか。テメェもストリートファイトをやってたみてえだが、殴り合いの経験で引けをとる気はねえ。
だから独自に編み上げた技があったっておかしくねぇだろ。テメェがさっき使った”もう一つの百八拾弐式”みてえにな」
地に叩きつけられた京を見下ろしながら、KUSANAGIはそう言った。
「本気で来いよ、オリジナル。それとも火影姿に見惚れたか?」
「馬鹿言え。お前の勝手で…技作られてたまるかよ!」
起き上がるなり、京とKUSANAGIの拳がまたぶつかる。
荒咬みと黒咬み。双方共にボディを狙った一撃が、相手を直撃する。
そして、間合いが離れたその一瞬。
キュン!
二人の間を銃弾が通っていった。
「ちっ、来やがったか…」
KUSANAGIがそう漏らした直後、青の軍服を来た男の一人が高らかに宣誓する。
「反逆者KUSANAGI。そして草薙京。我らネスツによりこの場で始末する!!」
キュキュキュキュン!!
「何がどうなってやがる!お前、反逆者ってどういうことだ!?」
物陰に隠れて銃弾の嵐を避けながら、思わず京はそう聞く。
「…オレはテメェのクローンの内、唯一自我を持った。上の連中はオレを重要視しながらも危険視し、密かに処分しようとした…だから、テメェとすりかわるしか生きる術がもうねぇんだよ!」
そう叫ぶと、KUSANAGIは路地の外にいる兵士に飛び掛る。
京は即座に周りを見回したが、退路をネスツ兵士に塞がれていることを悟ると、KUSANAGIとは逆方向へ駆けていった。
「狙いが甘ぇよ!」
兵士の弾を身を翻してかわし、KUSANAGIはカウンターで蹴りを叩き込んだ。
見たところ、そう数はない。しかし京になりすますことを考えると、時間もない−。
KUSANAGIはいきなり賭けに出た。
「おああッ!!焔に…還りやがれえぇッ!!」
ゴオオオオオオォッ!!
全身に向けられる弾の威力を炎で減衰させ、KUSANAGIは走りながら大蛇薙を放ったのだ。
敵を一網打尽にした上、一応の防御効果はあった。しかし…。
「血?かすったか…」
体の各所に赤い染みが浮かぶ。直撃弾は一発もないものの、地味でこそあるが結構な傷を負っていた。
「これで邪魔は…入らねぇ。オレは…生きてやる!」
そういうと、KUSANAGIは再び路地へと戻っていった。
(迂闊に時間をかけようもんなら、あの女まで巻き込んじまう)
京もまた、賭けに出ようとしていた。
銃剣で刺そうとしてくる兵士を容赦無く炎のアッパーカット・轢鉄で殴り倒し、京は一撃必殺を狙う。
兵士に背を向けて力を溜める京。だが、そこへ向けられた弾丸はことごとく見えない炎の渦に巻き込まれていく。
「これで…きめるぜ!!」
ゴオオウッ!!
全力の、炎を乗せたストレート。かつてその場しのぎで生み出したものではない、真の百八拾弐式が兵士を薙ぎ倒す。
「跳ねたヤツをくらったか…」
違和感を感じ、他に兵士がいないの確認してから、足を見た。左足はともかく、右足は集中的に傷つけられていた。
「オリジナル…テメェも賭けに出たみてえだな」
路地に戻ると、全身に傷を負ったKUSANAGIがそう言う。
「いい加減時間もない…。どうせお前ももう限界だろ?とっておきのヤツでケリをつけようぜ!!」
「いいじゃねぇか。覚悟しやがれ、オリジナル!!」
京の提案に、KUSANAGIがのる。ダウンタウンの路地裏に、異常とも思える気合を溜めるものが二人いた。
「これで終わりだぜ…!」
「上等だあぁッ!!」
KUSANAGIの構えを見て、京は相手の手札が読めた。すなわち−無式。
(この足じゃ無式は出せねえ。かといって、大蛇薙や百八拾弐式じゃヤツに打ち負けるな…。くそ、この状況だとアレしかないか!?)
京の脳裏に、この一年のストリートファイトで編み出した新技が浮かぶ。
(あれは百八拾弐式とは逆に威力はあるが、実戦でまだ一度も使ってない技…だが、賭ける!!)
そして京が決断したその瞬間、最後の焔が解き放たれた。
「業火の前に…無に還えれえぇッ!!」
ゴウッ!ゴオオオオオォッ!!
火柱を起こしながら、圧倒的な火力と共にKUSANAGIが殴りかかってくる。
あえて手を出さなかった京は、最初の一撃をモロに肩で受ける。
だが、誰よりも草薙流古武術を知っている京は、無式に存在する一瞬のスキを見逃さなかった。
「遊びは終わりだああぁ!!」
毒咬みから鬼焼きに移行するその刹那、京はKUSANAGIの首を掴み、両手で締め上げる。
「な、なんだと!?」
驚愕の表情のKUSANAGIに向けて、勝ち誇ったように言う。
「見せてやる…これがオレの、新しい草薙の神拳・神塵だ!!」
ズウン!ズオオオオオォッ!!
京の叫びとともに、KUSANAGIの体は爆炎に包まれ、無式をも超える焔とともに連続で拳が打ち込まれた…。
「…やっぱいたか」
「やっぱいたか、じゃないわよ。ホントにギリギリじゃない!バス来るまであと2分よ!?」
「間に合ったんだからいいだろうがよ…」
京の予想通り、深夜のバス停に葉花萌(はばな もえ)が見送りに来ていた。
会った頃と変わらず、相変わらずやたら世話好きで口やかましい。
まぁ、それが彼女のいいところでもあるのは京もわかっているのだが。
「にしても、なんで全身ボロボロなのよ。野試合でもやったの?」
「ガスコンロぶっ壊しちまった。大家に最後に怒られるとは思わなかったぜ」
「はは、バーカ」
「うるせえ」
笑いながら言う萌に京はそう答える。もちろんこんなものはでっち上げだ。
だが、あと少しとはいえ、ネスツが絡んだ話は数ヶ月先まで封印するしかない。
今話せば、KOFですら京の招待状を見て「ラッキー♪これで参加できるじゃない!」
と言って嬉々として参戦した女である。
単身ネスツの支部に乗り込むぐらいはやりかねない。それはいくらなんでも危険すぎる。
他愛も無い話をして誤魔化しているうちに、深夜帯には一本しかこない空港行きのバスが来た。
「それじゃ、恋人のユキさん…だっけ?そっちともうまくやんなさいよ」
「何言ってんだか。…世話になったな。それじゃ、じゃあな!」
「元気でね、京君!またいつでもこっち来ていいんだからね!」
そして京を乗せたバスは、みるみるうちにダウンタウンを離れていった…。
「KUSANAGI、か…」
深夜バスの中、京は路地裏に消えたあの男の最期を思い返していた。
全身に纏った炎が消えぬまま、彼は言葉を紡いでいた。
−へへ…零式まで出して負けたんだ。もう死んでも悔いはねぇ。
最後までオレは、テメェを超えられなかったな。何故かは、わかってるつもりだ…。
テメェにあって、オレになかったもの。それは…信じられる、仲間…だろ。
この炎は、根源的に…人の心を、求めていた。ぐッ…心がねぇヤツには、こいつは真の力なんて出せねぇ。
最初のクローンがクズだったのも、オレがそれを超えられたのも、そして…テメェに負けたのも。
今なら、受け入れら、れる、ような、気が、す、る…。−
(バカ、だよな。そこまでわかっていて…そこまで戦士であって、なんで『草薙 京』に最後までこだわったんだよ。たとえオレとすりかわったとしても、お前はお前でしかないのに)
珍しく京は感傷に浸っていた。それは、あの男がかつての自分の姿をもっていたせいかもしれない。
(死に土産に名前だけでも持っていけ。オレにはそれしかできないからな、草薙…。)
ふと外を見る。京にはあのダウンタウンから、消え行く草薙の炎が見えたような気がした。
「あいつのためにも、今度こそ終わらせてやる。ネスツ…」
決意も新たに、拳を握り締める。
(仲間…大門も誘ってみるか。まぁ、お前にはあいつの言ったことはまだわからないだろうけどな、真吾…)
旧友、弟子…多くの顔を思い返しながらバスを降りた京に、日の出の暖かい光が差していた。
----------------------------------------------------------------------------
----
作者(T’s):ということで、KOFのSS「神技を超えるもの」でした〜。
       ええと…扱いは01とEX2の両方かな。あと02。
M’s:あれ?KOF2002はただのドリームマッチで、公式ストーリーに入れないんじゃなかったっけ。
T’s:そーなんだけど、02のKUSANAGIのキャラが惜しくてね。2001にいたことにしたんだ。
    で、強敵になるように京−1の黒咬みやオリジナル技まで入れてみたんだけど。
    あと、ついでにいうと時代設定はEX2の少し後、2001の直前。
    EX2・2001の日本チームのストーリーやエンディングと絡んでいるので、
    そっちの方も読んでいたただくと、より楽しめるかと。
M’s:まぁいいけど。あとさ…途中にあった”もう一つの百八拾弐式”って何よ?
T’s:あれは99年版百八拾弐式のこと。こっちの解釈では、あの時は力吸われてたから
    あーゆーの使ってたけど、力が戻った後は2000のみたいな正式なのを使ってる、と。
M’s:ちょっと説明不足じゃない?
    KUSANAGI、愛称ナギ助はまぁいいとしても、萌の立場ナシ。
    ま、しっぺ百連発で許したげるわ。
T’s:あれしか出しようないんだよ…あの子、オロチ編の人だし。
    っておい、しっぺって地味に酷いじゃんか!
    じゃ、身の危険を感じたので今回はこれで!
M’s:あ!?待・ち・な・さ〜い!!
(管理人からのコメント)
T’sさんからのいただきもの「神技を超えるもの」でした。時間的に2001開催直前…でも間に2002が挟まっているという不思議な時間で繰り広げられた、京VS金だwの熱い戦い。
そして毎度恒例あとがきのT’sさんの逃亡劇w 小説もそうだけど、このあとがきのM’sのおしおきのネタとかよく考え付くよなぁw 既刊書庫のキャラのかけあいはT’sさんのリスペクトですw
T’sさん、あっつい小説…ありがとうございました。
いただきもの入り口に戻ります
過払い金の回収ならこちら 海外旅行保険の加入はコチラ! 生命保険の切り替えはココ

[PR] | RMT葬式 費用高崎浦安大井町新越谷中国SEO対策消費者金融車 買取テンプレート沖縄旅行免許合宿二輪引越しプレゼントゴルフ会員権留学レーシックマッサージFXアフィリエイトFXホームページ制作デイトレード海外現地情報ハワイ旅行タイバンコクハワイ レンタカーベスト ハワイ ホテル レーツバリ島Hawaii hotelsHawaii Activitiesbhhrハワイホテルテキスト広告
【運営会社「パラダイムシフト」サービス】 ハワイ現地オプショナルツアーリラックマ) - ビジネスクラス航空券 - 格安航空券(1) - 格安航空券(2) - 海外ホテル - 韓国旅行 - タイムシェア - ホテル 予約
無料ホームページ - 携帯ホームページ - 無料ホームページ作成 - レンタルサーバー - ブログ - ヴィラ - ハワイ コンドミニアム - バリ島 ホテル - プーケット ホテル - タイムセル - 口コミ - 格安国際電話 - ホノルルマラソン - サイトパトロール - 誹謗中傷 - 宿泊料金比較 - 口コミ