神鳴る地から、再び―後編
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「ここか…」
「見るからに怪しいわね…」
目前にあるどう見ても怪しい研究所を見て、2人は口々にそう言った。
グスタフにクリスを任せ、社とシェルミーは『払う者』と闘うことにしたのだ。
とりあえず、社はワークパンツのポケットからあるものを取り出す。
それはグスタフから手渡された、GPS機能付き携帯電話だった。
「ったく、便利な世の中になったもんだな」
「ほんと、そうよね」
2年の空白を感じながら、社はグスタフに現在地を知らせる。
ほどなくしてメールが届く。内容を見て、社は歩を前に進める。
「さて…赤毛と草薙を倒すとするか!!」
「クリスのために、ね」
決意を胸に、2人は研究所へと入っていった。
バリイィン!!
社のスレッジハンマーの一撃で、窓ガラスはあっけなく割れた。
同時に灯りすらついていない部屋に、2人は侵入した。
「さて…どうしたもんか」
「とりあえず、何もないこの部屋にいても意味ないし…動くだけ動く?」
「そうする」
社は迷うことなく、部屋からつながっている通路へ歩みだした。
ほどなくして、社達は一つの広い部屋に出た。
そこで見たものは―
「これは…クローン、なのかしら?」
「草薙の親が子作りしたとは思えねぇよな。この数じゃ」
そこには、大量の『草薙 京』がいた。皮膚の色は茶色いが、紛れもなく全て本物である。その数、実に50近く。
多くは壁際に置かれた機械化されたベッド―ポッドとでも言うべき代物だが―に入って眠っていたが、
それでも2、3人は外に出て普通に覚醒していた。もちろん、2人の存在にも気付いている。
覚悟していたとはいえ、さすがに2人の歩みも止まる。
「侵入者を発見。排除する」
草薙の内の1人が、感情の無い声でそう言う。
あとの2人もそれに続いて同じことを言った。
「悪ぃな…赤毛の前にテメェから死んでもらうぜ!」
言うが早いか、社は手近な所にいた1人の草薙に駆け寄る。
対して草薙も、社に向かって駆ける。
そして、2人がぶつかるかと思われたその瞬間。
「おらぁッ!!」
ゴギャア!ズドンズドンズドン!!
「があっ!?」
「どうした?本物の『草薙 京』は、これ位のことじゃやられなかったぜ」
草薙は、社によって頭から床に何度も叩きつけられていた。
2人が接触した瞬間、社は草薙が仕掛けてきた琴月を前転してかわし、
その隙に咽ぶ大地を叩きこんだのである。
最後に思いきり地に叩きつけたきり、草薙は起きなかった。
「こりゃあ、本物より数段格下だな。なんなら2人同時に来いよ」
「貴様…オリジナルと比較するな!」
激怒した残りの草薙は、社の挑発通り2人がかりで襲ってきた。
青い学ランの草薙が遠間から闇払いを撃つと同時に、茶色の学ランの草薙が殴りかかってきた。
「連携はできる、か…ふん、ムキになるなよ!!」
草薙の拳をガードした社は、タイミングを見計らって草薙の九傷を受け流し、アッパーデュエルを叩きこむ。
2段階で繰り出されるアッパーを放ち、宙へ飛んだ社の足元を闇払いが通り過ぎていった。
だが、茶服の草薙はすぐに受身を取り、再び社に殴りかかっていく。どうやら、近接戦闘に特化してるようだ。
一方、青服の草薙は焦っていた。
「ちいっ、闇払いをかわすとは…なら、これでどうだ!」
言うなり、青服の草薙が右腕を振り上げる。そして、その身が炎に包まれた。
いくら社とて、インファイトを仕掛けられた状況下ではもう1人の動きに甘くなる。
「大蛇薙をくらっては、無事ではいられまい!炎に…」
青服の草薙が、もう1人の草薙もろとも社を倒そうとしたその時。
「逃げちゃダメよ♪」
「な、何っ!!」
ゴガシャッ!!
背後に回ったシェルミーのバックドロップ・シェルミーフラッシュが、青服の草薙にキレイに決まった。
「おとなしく寝てろっ!!」
グシャア!!
ほぼ同時に、社のファイナルインパクトが茶色の草薙のボディにめり込む。
毒咬みが来ると踏んだ社が、相手にカウンターを叩きこんだのだ。
2人の草薙は、社とシェルミーの渾身の一撃の前に叩き伏せられた。
「これで終わりか。後はそこに寝てる連中を…!!」
社がポッドに眠る草薙を見やると、ポッドの蓋が開いていた。
それも、50近くあるポッド全てが。
「社…さすがにこれは…」
「ああ。いくら粗製品だろうと、これだけの数がいると厄介だな…」
そう言ううちにも、草薙達がゆっくりと、しかし次々とポッドから出てきている。
はっきり言って、数で押されては八傑衆とて勝ち目は薄い。
それも相手は、粗製品とはいえ草薙の力を持っている。状況は2人にとって思いきり不利だった。
だが、社は妙な気配を感じていた。血の暴走ではないが、何者かが暴れている気配―
「侵入者を発見。排除する」
草薙達の声がすると同時に、その気配が危険なものにすりかわる。
「シェルミー、行け!」
「え?きゃっ!!」
ゴオオオオオオオッ!!
社がシェルミーにタックルを仕掛け、2人が通路に飛びこんだ瞬間、さっきまでいた部屋で大爆発が起きた。
「危機一髪、ってところか」
「一体誰がこんなことを?」
「さぁな。だが、直にわかるな」
そう言いながら、社は業火の渦巻くさっきの部屋を見た。
炎の中に、一つの影が現れていた。そしてそれはこちらへと近づき、やがて姿が見える―
「あれは…八神かしら…?」
「なっ…赤毛…」
炎の中から現れたのは、誰あろう八神 庵だった。
通路に入りこんだ庵は、社達の目前に来る。
「何故お前達がここにいる?オロチ風情が何をしにきた」
「それはテメエも同じだろうが、赤毛野郎!!」
「ふん…オレはNESTSとかいう組織が、京を捕らえてくだらんクローンを造っているのを聞いて、ここを丸ごと破壊したにすぎん」
「NESTS?おい、なんなんだよ、NESTSってよ!?」
「貴様らにこれ以上話すことなどない。そこをどけ」
「黙って帰すと思うかよ、赤毛。ケリをつけてやる!」
そう言いながら、社はその瞳を赤く輝かせた。
だが、庵はもはや社に取り合わなかった。
庵は社の頭上を大ジャンプで飛び越え、社達の入ってきた部屋へと歩いていく。
その背中に向けて、思わず社は飛びかかっていた。
「赤毛!ベコベコにしてやるぜぇ!!」
「貴様など知らんな」
背後から仕掛けたスレッジハンマーの一撃を、庵は最小限の体のひねりで避ける。
「オレは京を殺すためにさまよっているのだ。貴様などに用はない」
「うるせえ!そうやってカッコつけてやがるのが…!!」
そこまで言って、社は異様な感覚に襲われた。それは…既視感だった。
目覚める直前に見た、あの時と同じことが起きていた。
(ならば…)
社は、オロチ八傑衆としての力を込めて打ち出した吼える大地を、わざと止めた。
「邪魔をするなら…死ね!!」
社の目前まで来た庵だったが、動きを変えた社の回し蹴りがその身を捉えた。
当たりは浅い。距離も離れた。だが、読み合いで社が勝ったのに違いない。
「赤毛、今日は見逃してやる。だが、次は叩き潰す!」
「ふん…」
壊れた窓から、庵は1人外へと出ていった。
「社…なんで逃がしたの?」
シェルミーが不思議そうな顔をしてそう言う。KOF97時点で庵のことをライバル視していた社が、
自分から庵との対決を止めることは考えられなかったのだ。
「いや…クリスのことを考えてな」
そう言った社だが、その実真の理由は違う。
庵に勝つために何が必要か、それが社なりにわかったのだ。
(よし…見てろよ、赤毛。次に会う時がお前の命日だ!!)
クリスが目覚めた、という内容のメールが社に届いたのは、その時だった。
「へぇ…それで、草薙と八神はそのNESTSって組織に追われてるんだ?」
「そうよ。まぁ、八傑衆としての意思がない以上、私達には関係ないんだけどね。
今年のKOFもNESTS絡みだったらしいんだけど…」
料理をつくりながら聞くクリスに、シェルミーはそう答えた。
クリスが目覚めてから1ヶ月後。
シェルミーがデザイナー業を再開し、クリスがそのアシスタント兼モデルとして働くようになり、3人は日本へと移って1つ屋根の下暮らしていた。ちなみに社は荷物持ちである。
家計が安定した頃には、KOF99は既に終わっていたので、資金繰りは普通の仕事で賄うしかない。
だから社を使って経費を浮かしているのだが…。
「社、いつまでゲームしてるの?」
「うるせえ!赤毛に勝つには読み合いを極めなきゃいけないんだよ!!」
「あのねぇ…」
庵と闘ったあの日から、社は格闘ゲームをやり出した。
理由は社自身の言う通りだが…シェルミーが呆れるのも仕方ないことだろう。
「しまった、また超必でぬけられた!くそぅ、赤毛めえっ!!」
社の努力はともかくとして、こうして3人は平穏な日々へと戻っていったのだった。
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(後書き)
作者(T’s):ということで、KOF99のSS「神鳴る地から、再び」でした〜。
いやぁ、グスタフが書けてすっきり。
M’s:あのさぁ…「Ring〜」の3作目が出来るの遅いから書いたんでしょ、コレ?
T’s:え!?いや、あのな、これも贈り物なんだから、そーゆーことは……。
M’s:慌ててるあたりが余計怪しいわよ。
それにグスタフはEX2やってないとわかんないし、シェルミーあまり戦わないし…。
とりあえず後で暗黒地獄極楽落とし決定ね。
T’s:やめろって。手加減しないとホントに死ぬし。
それじゃ、今回はこれで!逃げるぞーッ!!
M’s:あ、こら!待ちなさ〜い!!
(管理人からのコメント)
T’sさんからのいただきもの「神鳴る地から、再び」でした。ちなみT’sさんに俺が送った「2002に出られた理由」も社サイドがあったりしますw
涙ぐましいですなあ七枷君w、クリスの作った飯を食いてえ俺がいたりいなかったりw
やはり庵はクローン京を爆壊している、んでもってその強さは恐ろしい。
あとがきを見ると、どうやら全てはグスタフのためにあったのかしら?w
T’sさん、楽しませていただきやした、感謝いたします。
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