神鳴る地から、再び―前編
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目の前に、男がいる。
自分のバンドの出演依頼連続キャンセルの元凶であり、そしてオロチ一族としての自分としての敵。
百回死んで百回生きかえっても、絶対に忘れないであろうその男―八神庵を目前にし、
七枷社は問答無用で飛びかかっていた。
「赤毛!ベコベコにしてやるぜぇ!!」
「貴様など知らんな」
背後から仕掛けたスレッジハンマーの一撃を、庵は最小限の体のひねりで避ける。
「オレは京を殺すためにさまよっているのだ。貴様などに用はない」
「うるせえ!そうやってカッコつけてやがるのが…ハナにつくんだ!!」
叫びとともに、社の渾身の一撃が繰り出される。
だが、オロチ八傑衆としての力を込めて打ち出した吼える大地は、庵に当たることはなかった。
「邪魔をするなら…死ね!!」
社の放った拳と衝撃波の下をくぐり、庵は社の頭を掴んで地に叩きつける。
ボンッ!ズドンッ!!ボオオオン!!!
地に叩きつけられたまま、社の身が何度も青き炎に包まれる。
(くそ…何故、赤毛に勝てない!?)
意識が薄れゆく中、社はそう思っていた。
「……ッ!」
夢から覚めた社は赤毛への罵詈雑言を叫びそうになったが、
とりあえず自分の置かれている状況を整理しだした。
KOF97の決勝戦後、優勝した日本チームに暴走した庵を差し向け、オロチを復活させた所までは覚えている。
その後、気を失ってあの地―『多頭竜』の伝説の眠る地に、シェルミーと共にぶっ倒れていたはずだった。
だが今、社はあの時の格好のまま、簡素なベッドに横になっている。
それもどう見ても地下室としか思えないところに。
決して狭いところではない。だが、空気がそう感じさせる。
半身を起こして周りを見渡すと、そこには見知った顔があった。
それは、シェルミーとクリスだった。
2人とも、社と同じつくりのベッドに寝かされていた。
とりあえずベッドから降りようとした時、部屋にただ一つだけある扉が開く。
「やはり、目覚めましたか」
「お前は…グスタフ・ミュンヒハウゼンか」
「覚えていましたか」
「ああ。ゲーニッツの片腕とまで言われた男だからな。で、ここはどこだよ?」
「ここは私の教会の隠し部屋です。外部から見つかることはないですから、安心していいですよ」
そう答える男は、かつてゲーニッツが着ていたものと同じ型の、青い牧師服を着ていた。
黒い長髪が似合っているかは微妙なところだが、ゲーニッツ同様に大人の格好良さが見受けられる。
その男―グスタフは、低く渋い声で続けた。
「あなた方が眠りについて早2年…この異変に呼応して目覚めたのですね」
「2年?おい、今西暦何年だ!?」
「1999年の7月です。KOF97からほぼ2年経過しています」
社は絶句した。死んでいないことに驚いたのもそうだが、まさか2年も眠っていたとは思っていなかったのだ。
「貴方が目覚めたということは…もうじき、あと1人も目覚めるでしょうね」
「…あと、1人?」
社がそう呟いた時、隣のベッドにいた者が起きた。
「あら…ここは何処…?」
「どうやら、グスタフが面倒見てくれてたみたいだぜ」
社は親指でグスタフを指しながら、シェルミーにそう答えた。
「2年間人目からひた隠しにしながら、な」
「その通りです。神楽の手の者を欺くのは大変でしたよ…」
肩をすくめながら、グスタフは言う。恐らく、神楽本人と十種神宝にこの2年、悩ませ続けられたのだろう。
社はそれに同情しながらも、未だ起きないもう1人のことが気にかかっていた。
「グスタフ…クリスは大丈夫なのか?」
「人間の体の体調としては、既に健康体のはずです。心音も安定している。
ですが…この異変が、オロチの依り代となった彼を眠らせ続けているのでしょう」
「異変異変ってさっきから言うけどよ…何が起きたってんだ?」
「それが…KOF97終了後、『払う者』と『封ずる者』は行方が知れなかったのですが、信じられないことに、ある地点に複数の『払う者』の反応が現れたのです。それも、2つ3つならまだいい。
少なく見ても、50はあります」
「な…!」
「『払う者』って、草薙のことでしょう?」
シェルミーが確認のために、そうたずねる。
わかりきったことではあるが、信じられないことを前に聞きたくなったのだろう。
「『払う者』の力は、全て草薙本人のもののようです。私の部下が力を測ったので誤りはないでしょう。
私も十種神宝が何か小細工を施したのでは、とも思ったのですが…。
また、『封ずる者』もその近辺にいるようです。こちらは一つだけですが」
「なるほどな…オロチを抹消する力が異常に増大した影響で、危機を感じ取ったオロチがオレ達を長い眠りから目覚めさせたワケだ」
社は納得した。オロチならそれ位のことは、たとえ封じられていても可能だろう。
「ところで、クリスが元に戻っているってことは…やっぱり、オロチは無の世界に帰っちゃったの?」
「ええ。残念ですが…クリス少年を経由して、思念を感じることすらもはや困難です。
オロチ側からの干渉が、草薙の力に阻まれているようですが…」
シェルミーの問いに、グスタフはかぶりをふって答え、更に続けて言う。
「加えて言えば、八傑衆の魂自体も封じられました。力の方は残っているようですが…」
グスタフの言葉に、一時2人は沈黙し、目を見合わせた。
だが、すぐに社は答えを出した。
「グスタフ、草薙が大量発生した場所を教えろ」
「…何をする気です?」
「決まってる。クリスを助けるには、この異変を治めてオロチ自身からの干渉をきっちり伝えるのさ。
草薙を倒して、オロチのおかげでクリスが目ェ覚ましゃ万々歳さ。ついでに―赤毛をぶっ倒す」
グスタフは、社とシェルミーを交互に見やりながら問う。
「シェルミー、あなたも行くのですか?」
「ま、かわいいくりちゅのためだし…」
「2人だけで?」
「ああ。それ以外にどうしろってんだ?」
そう言いながら、社はその瞳を赤く輝かせた。
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注訳…グスタフについて
グスタフ・ミュンヒハウゼンはGBA版「KOF EX2」に登場した、オロチ一族の生き残りです。
本編では十種神宝の天羽 忍を依り代に、ゲーニッツを転生させようと企みます。
その経緯から、独断でゲーニッツ直属の部下だったということにしました。
また本編ではスーツ姿ですが、設定をそうしたからにはと、牧師服を着せました。
以上の設定は公式設定では決してありませんので、お気をつけを。
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