「ところでジン、こん中んマップわかってんのか?」
 なんの侵入者対策もしてないことが逆にいやな建物に入ってすぐ、俺はジンに問いかける。
「ああ、だいたいは把握してる」
「お前が言うんだ、大丈夫なんだろうさ。ところで資料を押収するっつったけど、なんで直にしょっぴかねえんだ?」
「確実な証拠を手に入れずに逮捕すれば、時空警察の信用にかかわる。きちんと魔科学者のしていることを洗って、その中に違法性があるか確かめなければな」
「違法性って、全世界共通の法なんてあんのか?」
 俺の疑問に、ジンは「うん」と頷いてから答えた。
「それぞれの世界で秩序が違う以上確たるルールを決めることはできない。だが 世界を脅かす犯罪者に対する抑止力として禁止事項は設定している。それもトップの判断に基づいているからその基準は彼の尺によるんだが」
「なるほどな」
 あえて敵地でこう言う話をしてるのは誘蛾の効果を期待してのこと。まあ科学者 なんてぐらいだ、こんな安い誘いに乗るとも考えにくいが。
「なんか……ざわざわしてます」
 エルナが言うが、俺にはなんの変化も感じられない。他の面子もそうらしく、一様に不思議そうな反応だ。
「近くの部屋の空気が、あわただしく震えてるんです。ジンさんとかずまさんの話を聞いて、その科学者さんたちが動揺してるんじゃないでしょうか?」
 エルナの言葉には確固たる自信がある、普段不安が人の形したみたいな奴なのに たまに変に自信持つことが今みたいにあるんだ。
「お前の力の及ぶ範囲か?」
「はい、どうにか」
「どんな力なんだ?」
 ジンがエルナの力に興味を持ったみたいだが、ここは水をさしておく。
「今その質問はやめるべきだぜジン。誘蛾を強める目的を含んでるにしたってこいつはいかんせん戦力には心許ない。エリーナの戦闘力もわからないんだ、もう一人護衛対象が増えるのは得策じゃないぞ」
「ごめんなさい」
「謝らんでもいい、お前の力は破壊の力じゃないんだろ?」
 確認の意味でもそう聞く、そしたらエルナは頷いた。
「ならお前のできることをするんだ」
「はい」
「まったく、何度目だ? これ言うの……」
「ぁぅ、すみません……」
「なんだ、まるで初めて言ったみたいな雰囲気だったのに 今回で最初じゃないの?」
 ユナが目を丸くしている。そこで俺は軽い溜息と一緒に答えた。
「俺が戦力としちゃーいまいちだって話をすると、毎度しゅんとするもんだからな……」
「……ごめんなさい」
 再度謝るエルナの肩を軽く二度ほど叩いてやり、戦力だけが全てじゃないだろ と諭す。
「そう……ですけど」
「やれやれ。ここでグダグダしててもしかたない、どの辺りで動くか考えながら進むぞ」
 このままじゃ埒が明かないと判断し、俺は進行方向だった方向に向き直ってそう発した。
「足音……なにか来ますね」
 今度は秀奈だ。言葉どおりこちらに向かってくる足音がいくつかする。
「止まれ!」
 ある程度の距離に来ると、足音の主の一人が俺たちにそう声をかけた。見えるだけでも横に10人は並んでる、道をふさいだつもりらしい。とりあえず見えるのは人型をしてるな。
「お前たち、いったいなんのようだ?」
 止まれって言った奴の質問。それにはジンがひとこと「お前たちの研究データを少し貸してもらいたい」と告げる。
「借り手どうするつもりだ?」
 目が少し泳いだな、今ので多少焦ったと見える。ってことはこいつら、さっきエルナが言った空気が震えた部屋の連中か?
「なに、興味があるだけだ」
 あくまでもジンは自分が時空警察官であることを隠して穏便に済ませようとしてる。
「興味?」
「ああ、あんたたちの研究に興味がな。いろいろとあぶない橋も渡ってるらしいって小耳に挟んで、どんな橋を渡ってるのか知りたくなったんだ」
「あんたらも魔力を使った永久機関を搭載した兵器に興味があるのか?」
 早え、もうボロ出しやがったぞ?
「ほぉ? 魔力を使った永久機関か。どんなものなんだ?」
 なんか徐々に語気が強くなってねえかジンの奴?
「まだ準備段階なんだgあああっっ!!」
「な、なんだ!?」
「今の奴の後ろで、なんかいやな音がしたんだが……」
「っ! な、なんですか!?」
 いつものエルナの悲鳴みてえな驚き、けど それも無理ないか。今喋ってた奴の肉体が、どんどん薄っぺらくなってるんだからな。
「こ、これは……」
 ジンの声、俺たちもあまりのことにまともに言葉がでなかった。さっきの奴は結局あのまま肉体が紙切れみてーになっちまってそのままパイプみてえなもんに吸い込まれてった。
「まったく、彼はいつも口が軽くていけなかったんだ。まあおかげでセイジングケージにまたエネルギーが蓄積されたが」
「貴様……なにをした?」
 ジンの声が完全に怒りを内包する。
「セイジングケージ、つまり賢者の籠に人を入れたのさ」
「人を入れた?」
「あ……あれは……!」
 その賢者の籠とやらを見て、驚愕の声を発するエリーナ。
「ん? おお、一度逃げた君がわざわざ戻って来るとはなエリーナ=ハザード。見たまえ、君の魔力のおかげでこうしてセイジングケージは徐々に稼動に向かっている。君のあの膨大な魔力がなければこう早くは行かなかった。感謝している」
 にやりといやな笑みを浮かべるそいつ。おそらくは計画の首謀者だろう、わざわざのこのこ出てくるってことはよほど自信があるのか それともただのバカか。
「まだ、そんなおぞましい物を動かそうとしていたのですか」
「当然だ、これが完成すれば最強の兵器が手に入る。そうすれば全ての世界を手中に収めることも夢ではない」
「下種が」
 ジンのはき捨てた言葉、まったくだなと俺も同意する。
「あなたはそのために、いったいどれだけの犠牲を払うつもりなのです?」
「犠牲? 違うな、この籠に眠る人間は犠牲などではない。全て原動力だ。わたしの夢へのね」
 例のセイジングケージとやらを軽く叩きながら、男はどこか恍惚とした表情で言い放ちやがった。
「そ、そんなの おかしいです」
 エルナが搾り出すように言う、秀奈も「かわいそうな人」と呟いた。
「さて時空警察所属のお二人。首謀者はここにいる、実験データもわたしが所有している。喜んで提供しよう」
「なに……」
 ジンが声からして驚愕と疑いの目で男を見る。その表情を楽しそうに見てから、男は続けた。
「ただし……わたしを黙らせることができれば、な」
 言葉の最後と同時に指を鳴らした。すると急にエルナがうめきだす。
「どうしたエルナ?」
「あ、う……空間が……あの人の空間がゆがんで……空気が……哭いてます……!」
 そのままうずくまるエルナ。こいつは、言霊の力を使うとなにを言ってるのかわからねえことをよく言うようになる。
「察しがいい、これからその空気が哭いている理由をお見せしよう」
 そう言うと、なにを考えたか男は自らの心臓を自らの左抜き手で貫いた。だが男からは一滴の血も出ない。
「言の葉の力が一、エンシェル=フォルスが汝ら万障に命ず。我が断り、外道の外へ変幻せしめんと!」
「っ! この詠唱は……!」
「言霊……だと?!」
 驚愕のエルナに続いて俺も声を揚げていた。今の詠唱は間違いなく言霊の詠唱……いったいなんだってこいつがその力を?
 俺たちが驚愕する前で、奴 エンシェル=フォルスは刻々と姿を変えていく。それはまるで年度が捏ね回されて形を変えるように歪みを繰り返し、徐々に変貌して行った。
 そこには恐怖や嫌悪なんてものはまるでなく、たとえるなら紙切り達人の仕事を見るような どこか魅了される変形だった。
 
ーー 本編後の雑談 ーー
ぷちミント「久しぶりの執筆でした」
風真「執筆単位かよ?」
エルナ「まあまあかずまさん」
ジン「しかし、前回 先月言ってたのとずいぶん動きが違うな」
ぷちミント「ま、まあ……俺の作品って光臨してなんぼだから」
秀奈「で、またもレッツゴー! 陰陽師だったんですね作業BGM」
ぷちミント「そうなんだよねぇ、なんでかねほんと」
ユナ「ぼく、空気だね」
ぷちミント「空気ですね……」
エリーナ「きっと戦闘になったら活躍するわよ……たぶん」
ぷちミント「やーめーてーそういうこと言うのw」
風真「さて、いったいこのエンシェルとか言うのがなにものなのか、その辺は決まってんのか?」
ぷちミント「そこは現段階では決まってる」
ジン「現段階では、か。まあ内容を確約できないのがお前の作品だもんな」
ぷちミント「えい(へい、と同義)、ってことで今回はここまでにしませう。また次回」
風真「ちょっ おい、そりゃないだろ?」
んじゃま次でさ
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