薔薇の埋葬           片翼・紗央里
第二話:咲き乱れた薔薇
結局、ライド達がスリーピーホロウへ向かう事ができたのは二時ごろだった。
すっかり、我を忘れて互いの力をぶつけ合う大人気ないバトルをしていた所為で
二人とも、体力を使いきり、一時間ほど休憩してしまったためだ。
スリーピーホロウまでは来るまで二時間ほど車に乗ればつくことができる。
発展途上区ということで、栄え。夜は電気の明かりが途絶えることがない。
夜でも、店が開き、活気にあふれている。
ついてすぐバーにでも行けば、情報を集めることができるだろう。
車の中で、ライドが可気朗に尋ねた。
「スリーピーホロウにつく頃は・・・もう夜中だな」
「しょうがない、誰かさんが寝坊して。バトルなんかをしてくれたおかげで家をでる時間が遅れたんだ」
ライドの言葉に、まだ機嫌を良くしていない可気朗が仏頂面を浮かべながら答える。
家には、紗織達に当てた手紙を残しておいた。
一応のために、虎の刃も家に留守番として置いておいた。何か会ってもすぐに知らせに来てくれるだろう。
ライドはそんな仏頂面の可気朗を横目でちらりと見ながら腕を頭の後ろでくみ、ただひたすら目を閉じた。
昼近くまで寝ていたというのに、なぜか眠い。
睡魔がライドを襲い、ゆっくりとゆっくりと夢の世界へと連れて行ってしまう。
車の窓からどこか冷たい風がライドの頬をなぜた。
その頃、スリーピーホロウに二つの影があった。
青い髪に薄い赤色をした瞳。茶色の皮ジャンに緑の薄いトレーナー。黒いジーパンをはいた青年と。黄緑色の髪に水色の瞳、紫のトレーナーに黒いチノパンにをはいた青年。
そう、シュートとマインである。
ナノハンターの二人は、リーダーであるフォレスに言われ、このスリーピーホロウにライドや可気朗よりも一足早く調査に来ていた。
まわりの風景をみて、シュートがマインにつぶやく。
その声はどこか不気味がっているようでもあり、意味ありげな声でもあった。
「なぁ、マイン。これが本当にあのスリーピーホロウか?」
「さぁな・・・・・ただ、なにかあったのは間違いなさそうだぜ」
マインが焦点の会っていない瞳で、辺りを見渡す。
彼は、目がほとんど見えない代わりに耳が人以上の働きをもつことができる。
そのため、目では分かりにくい物を感じたりすることができるのだ。
さて、このナノハンターの二人が、今のスリーピーホロウをみて、言葉を失い確めるのもしょうがない。
今、彼らが来ているスリーピーホロウは、以前とは変わり果てた姿をしていたからである。
人の活気はなく、店や家に電気がついていても人は居ない。
そう、本当に人一人居ないのだ。
二人の正直な感想は『気味が悪い』だ。20分ほど人を捜してみたが。人の姿は見当たらなかった。
シュートが懐から、通信機をだしてリーダーのフォレスに連絡しようとする。
この気味の悪い状況と、つい二日ほど前まではいつもと変わらなかったこの街の状況を知らせるためだ。
ぴぴという音がして通信機が音をだす、しばらくして通信機の向こうからフォレスの声が聞こえてきた。
「リーダー、俺だ」
『フォレス?どうしました?何かあったんですか?』
フォレスはいつもと声が何処となく違うシュートに少し異変を感じながらも冷静に対応した。
シュートが深いため息をついて、フォレスに言う。
「リーダー。大変だ。この街・・おかしいぜ。あきらかに何かあったに違いない」
『何かあった?どういう意味です?』
「街に人が一人も居ないんだ。捜したけど。一人も犬やネコも一匹残らず居なくなってました」
シュートの通信を聞いて、フォレスはどこか苦い顔をもらした。
ついさっきの事だ、フォレスの所にレッドから連絡が入った。
その連絡では、あのスリーピーホロウにある研究施設で行われていた実験が。
たった一つの細胞から、自分の意志を持ち成長する生物を作り出すという実験だったのだ。
人間が違う存在を作りだす・・・そんなことあってはならない。
しかも、自分の意志を持ち成長する・・・。それはある意味、危険過ぎる物。
成長するというのは一番恐れなくてはならないことだ、もしそんな物が世の中に出回ったら・・・
フォレスはそう思うと、急いで可気朗に連絡を取ることにした。
この状況の事を早く知らせないと、スリーピーホロウにも何か会ったに違いないのだから。
フォレスがシュートとの通信を切って、可気朗に連絡しようとしたときだった。
『わぁあ!!!!』
「!?」
いきなり、通信機からシュートの物と思われる叫び声が聞こえてきたのだ。
フォレスが急いで、通信機に言葉を発しようとしたときにはもう遅い。通信は切れていた。
「・・・いったい・・なにが・・・・・」
フォレスとの通信が切れたとき、シュートの身を襲ったのは信じがたい存在だった。
「なんだよこれ!」
マインがさっき、自分が居た場所から大きくジャンプして、違う場所にひらりと下りる。
そして、自分を追ってくる存在に大きく蹴りを食らわすと、シュートの元へ急いだ。
シュートは腕を切られていた。
だが、そんなに深い傷ではない、近くにあったガラスが割れて、そのとばっちりを受けただけだ。
腕から流れる少しの血を簡単にぬぐうと、シュートは目の前に居る無数の存在にあきれたような表情を見せた。
「ゲームじゃあるまいし・・・・・」
「ゲームだったら、リセットできるが。このゲームはリセットできそうにないな」
マインがそういいながら、目の前に居る存在を再び蹴りつける。
気持ちの悪い感触が彼の足を襲った、そう、彼らが今戦っているのはあの研究員達だった。
それだけじゃない、街の人間であろう男性や女性までもが肉がたれ、唇は削げ、目が白目をむいている状態だったのだ。
シュートは昨日した、ゲームを思い浮かべながら自分達を食べようと襲ってくる彼らに蹴りを食らわせ、道を捜した。
マインも、とりあえず。こんなに多い数ではいくら戦ってもきりがないということで逃走経路を捜した。
やがて、マインが鍵が開いている家を見つける。
頑丈そうなつくりで窓には鉄格子がはめられているから、一時的に身を守る事ができるだろう。
そう思い、マインはシュートを呼んだ。
「シュート!!!急げ!!!」
「わかってる!」
シュートが、近くにあった郵便ポストを蹴飛ばして倒すと、マインのいる家へと急いだ。
後ろを振り返ると、研究員達がそのポストの所為で前に進めないように固まっている。
どうやら、彼らはあまり物事を考えることができないらしい。
シュートはそれを見て、軽く微笑むと。マインのいる家へと滑り込んだ。
シュートが入った瞬間、鉄の二重式の扉がマインによって重く閉じられる。
逃げ込んだ家の中は、殺風景な家で、丸机が1つと椅子が二つ、酒のビンがたくさん転がっており、壁には三年前のカレンダーが貼ってあった。
どうやら、空家のようである。
鍵を閉め、マインがかすかにため息を漏らした。はっきりいって、自分のみた光景はすさまじかった。研究員達の姿はゲームの世界でみるそれである。
いやいや、ながらも昨日シュートがしていたゲームの内容を思い出してしまう。
―発展した街で急遽起きた事件、主人公達がきた頃には先に来ていた調査員は全て死亡していた―
「くそうっ!縁起でもねぇ!!」
横で叫ぶマインをみて、シュートはどこかしんどい顔をしながら、フォレスに連絡するため通信機を再び手にとった。
そして、番号を押す。
しかし、帰ってくる返事はどこか壊れたような音だった。
それを聞いて、マインが家の壁を叩く。
「イカレたのか!?その通信機!!!」
「いや・・・壊れてないはずなんだけど・・・」
通信機のボタンを何度も何度も押す、シュート。しかし帰ってくるのは壊れた音だけだった。
マインの機嫌が悪くなる、熱血だがどこか冷めているこの青年は、こんな性格なのに
正義感が人一倍すごいので、シュートもあきれることがある。
そんなマインをため息を付きながら、通信機を触るシュートはふと家の窓をみてぎょっとした。
「お・・・おい・・・・」
「ん?・・・なっ!!」
シュートが窓を指差す、その指先を見てマインは凍りついた。
窓の外には、例の研究員達がうじゃうじゃと群れを作りなんとかこの家に入ろうとしていたからだ。
研究員の一人が鉄格子を抜こうと、手を引っ張りそのまま片腕をぼろりと地面に落とす。
気持ちの悪い音がして、シュートは顔をそむけた。
マインが、どこか冷や汗を流しながらシュートに言う。
「このままだったら・・・ここもじきにあいつらのアジトになっちまうぜ」
「そうだな・・・ここは一発しないとな・・・。あの研究員・・いや・・・」
―ゾンビ―にな
「ライド・・・ライド!」
「んあ・・?」
どんどんと何かを叩くような音が何度も繰り返され、ライドは目を覚ました。
自分を叩いたのは相棒の可気朗。可気朗は、どこか少し混乱したような表情でライドを見る。
まだ寝ぼけた目をしているライドは、周りを少し見渡した。
辺りは真っ暗で、そうまるで、明かりがない林の中へ放り込まれたみたいだった。
ライドはまだ自分達がスリーピーホロウについていないと思い、そんな表情をしている可気朗に問い掛けた。
「まだついていないんだろ?なら、早く行こうぜ」
「なに馬鹿いってるんだ、もうついた」
「はぁ?」
ライドが信じられないような顔をする、いくら自分が馬鹿でも、スリーピーホロウには一度きたことがあったし。
それになにより、今この場所は街の明かりなんか少しもありはしない場所。
それをどう考えたら、街になるのだろうか。
可気朗が、そんなライドを察したのか、目の前にある看板を指差す。
たしかに、そこには看板があった。真新しいペンキに塗られ、赤い字で『スリーピーホロウ』と
ライドがそれを見て混乱する。
そして、目の前に大きな都市がある事をやっときずいたのだ。
暗闇の中、闇と溶け合うかのようにして建っていたため、どうしても分かりにくかった・・。
それぐらい、今のスリーピーホロウはおかしかったのである。
ごくりとつばを飲む、まるで嫌な感じの風が吹いているみたいだ。
体中の鳥肌が立って、ライドは身震いをした。
これこそ、ゴーストタウン
「ライド、行くぞ。早く帰らないと・・・・」
「わ・・わかってる・・・・・・」
なんともいえない雰囲気に、足を引っ張られながら・・・ライドは可気朗の前を歩き
スリーピーホロウへと入っていった。
さて、ライド達がスリーピーホロウへと家をでて一時間ほどたったとき。
ショッピングモールでハデン達と服の買い物をしていた紗織は、三人でアイスを食べながら電気屋さんの前を通りかかった。
四台あるテレビには、それぞれの番組が写っており、料理やゴルフ。バラエティーなどが写っていた。そして、その中一番大きなテレビにニュースをやっていたのである。
「あっ、みてみてハデンちゃん。ここってスリーピーホロウじゃない??」
マリーヌがアイスをほおばりながら、紙袋を三つほど持っているハデンに話しかけた。
ハデンは、紙袋を重そうに持つと、ニュースが写っているテレビ画面を凝視しながら頷く。
「ああ、ほんとだ。何か事件でもあったの?」
テレビの画面には、女性キャスターと男性キャスターが話をしているようだった。
そう、あの二日前にあった連続殺人事件の事である。
どうやら、中継先の人物と話をしているようだった。
『中継先のティルバーさん。そちらの様子はどうですか?』
『はい、街の様子は以前とまったく変わっており、人が一人も居ません』
中継先の男性はどこか焦りを帯びたような声でマイク片手に話しているようだった。
なんでも、このニュースの話を聞くと、ここのテレビ局が極秘のルートで
スリーピーホロウの事件を発見したらしい。
どうやら、この事件は警察機構によってしっかり守られていたのだ。
二日前に起きた連続殺人事件、そしてその後まるで霧のように消えてしまった人達。
そんな奇妙なニュースを見たとき、紗織はどこか心の中に不安が広がっていくのを感じていた。
嫌な予感といったほうがいいのか・・それとも第六感と言ったほうがいいのか。
気持ちの悪い感情が逆流してくるような気持ちだった。
そして、彼女の頭の中に浮かんできたのは『帰らなくちゃ・・・・』という言葉だった。
紗織はこのニュースが最後まで終わるのを待たず、急いで家へと走った。
「え・・ちょっ・・紗織―――――――!」
急に走り出した紗織にびっくりした、ハデンが彼女を呼び止めようと大声をあげるが無理だった。
彼女はあっという間に人ごみの中にまぎれ、見えなくなってしまったのである。
「は・・ハデンちゃん・・どうしよう・・・・」
「どうしようもないよ・・・・」
二人の声が、ただ空しくニュースの声と重なっていた。
ハデンとマリーヌに何も言わず、ただ一身に走りつづけ家にたどり着いた紗織は靴を急いで脱ぐと部屋に走りこんだ。
黒い髪の毛が汗でかすかに額に張り付く、運動があまり得意でない彼女なりに一生懸命走ったからだった。
「可気朗さんっ!!!!」
リビングに入ると、そこにはソファーの上で寝息を立てている虎の刃の姿があった。
ちらちらと視線を動かして、紗織は机の上に紙が乗っていることに気づく。
その紙を手に取ると、上がる呼吸を押さえて文章を読んだ。
綺麗な字で、多分可気朗の字だろう。
―紗織へ、少し仕事で家を出るから。留守番たのむよ。可気朗―
一瞬、どうしようかと頭を混乱させてしまった。
さっきのニュースといい、朝変によそよそしかった行動といい、何かあるのかなとおもってはいたが・・・。
まさか、それが仕事だとは思わなかった。
しかも、大きな仕事である。
人が居なくなった、なにか異変のあるあのスリーピーホロウへと向かったのだろう。
わかっている、彼女にもわかっているのだ。可気朗にとって自分は足手まといでしかない。
感情が高ぶったりしないと、攻撃的な黒い雷を出すことはできないし。それも威力が強すぎて自分で上手くコントロールができない。
だからこそ、癒しの力で傷ついた可気朗やライド達を癒してあげたかったのだ。
悲しかったり、辛かったりするよりも、戦うことができない自分に腹が立った。
紗織は、目をしっかりとした目つきに変えると、靴を履き、外でタクシーを呼び止めた。
そう、ライド達が家をでて少しして、紗織もスリーピーホロウへと向かっていたのである。
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(管理人からのコメント)
ほい 第二話でした、いよいよ来ましたスリーピーホロウ。マインとシュートが比較的ピンチですなあ(なに)、ライド、相変わらずアホですw
そして虎の刃が相変わらず可愛いです、でこの紗織はさおちゃんからいただいたキャラで、本編にも出てきます。
ライドたちも気になるけど紗織ちゃんの方が、大丈夫なんでしょうか?(お前のキャラも気にかけてやれ)
第三話へGO!
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