薔薇の埋葬 片翼・紗央里
1話:見えない薔薇
「起きろ、仕事だぞ」
ぴぴぴぴぴと電子音が頭の上で鳴り響いている、ライドは目を擦りながら薄目を開けた。
目に映るのは、ぺんぎんの形をした黄色の目覚し時計。
青色をした自分の今被っている布団。そして、相棒の可気朗である。
可気朗は、ライドが薄目を開けたことに気づき、部屋を出て行った。
耳障りな目覚ましを止めて、ライドはうーんと背伸びをする。
カーテンからは朝でもなく昼でもない、太陽の光が隙間から流れてきていた。
「おはよーーー」
「おそようだ、いったい今何時だと思ってるんだ?」
「おはようございます、ご主人様」
ライドがリビングにやってくると、ソファーに腰をかけて新聞を読んでいた可気朗と
大きな丸いクッションの上にのしかかり、テレビの方を興味深く見ている虎の刃が顔を同時に上げ、口から挨拶の言葉を交わしてくれた。
虎の刃が黄色の毛並みをした身体をライドに寄せながら、なつくように足元へやってくる。
ライドはそんな虎の刃の頭をなぜながら、にかっと微笑んだ。
「今何時?」
「11時34分54秒。寝すぎだ。昨日あれほど夜更かしするなって言ったのに。どうせお前のことだから起きてたんだろ」
ライドの言葉に可気朗は、テレビの上に置いてある時計を指差しながら答える。
今日の可気朗は、すこぶる機嫌が悪い。それはライドが見ても虎の刃がみても分かる物だった。
ライドがこっそりと虎の刃に聞く。
「可気朗・・・なんかあったのか?」
「さ・・・さぁ・・・・・」
どこか苦笑いを浮かべる虎の刃に、ライドはうーんと悩み、頭を抱えたが、朝(昼とも言う)ご飯を食べていないことに気づき、腹が悲鳴をあげたのでライドはとりあえず、遅い朝ご飯を食べることにしたのだ。
ライドが朝ご飯を食べ終えると、可気朗が書類を持って机のほうにやって来た。
書類は青いファイルに入っていて、そのファイルをどんっと机の上に置く。
食後のデザートである、アイスを食べていたライドはその書類を片手で取ると可気朗に視線を移した。
「これが、今回の仕事か?」
「ああ、ナノハンターのリーダーフォレスからじきじきの仕事依頼だ」
「ナノハンターから?」
ライドはそういいながら、ナノハンターの事を思い出していた。
世界警察機構が組織した、少数精鋭の戦闘グループで、ナノマシーンという本来なら医療に使う
極小な機会を身体に埋め込み、原始の配列を変えて体をどんな物にも変えられる力を持ち、さらに神霊も使うことができる奴もいるという集団だ。
つい先日も、ライドはそのナノハンターの一人であるシュートという青年と戦い、両者一歩も譲らぬ戦闘を繰り返した後、二人ともぶっ倒れたという過去を持つ。
たしかに、彼らの実力は確かだった。
そのナノハンターからの依頼、ライドは腕がなる思いで、可気朗の話を聞いた。
「フォレスの話では、つい先日。スリーピーホロウで連続殺人事件が発生したらしいんだ」
可気朗の話は、今から2時間ほど前にさかのぼる。
二時間ほど前、可気朗は新聞を読みながらコーヒーを飲みゆったりとしていた。
そんな時に、ナノハンターのリーダーフォレスから、通信が入ったのである。
「はい、もしもし」
電話でも取るかのように可気朗は目の前の画面に写っている長い金髪をしている美女であり、ナノハンターのリーダーフォレスに話し掛けた。
画面に写っているフォレスはどこか微笑を浮かべて、可気朗に挨拶した。
『こんな時間にすみません。ただ、おねがいしたいお仕事があるんですが。』
「話を聞こう」
可気朗はそういうと、足を組んでフォレスに言った。
その言葉に満足したのか、フォレスは何かの写真を画面に写してきた。
どうやら、死体である。
フォレスの出した写真は全部で四枚だったが、どれも体格のいい大人が肩を食いちぎられるような無残な姿で写っていた。
『二日程前なのですが、スリーピーホロウという街で連続殺人事件があったんです。その被害者が、この写真に載っている四人なのですが。スリーピーホロウはご存知ですよね』
「もちろん、有名な発展途上区の1つだ」
可気朗はどこか頷きながらこたえた。
スリーピーホロウというのは、5年程前から急遽に発展してきた街の事だ。
絹や綿、織物を輸出しており、その絹は本当に美しく上等の一品だと聞いた事があった。
可気朗本人も、一度ライドと仕事で行ったことがあり、風景もよく覚えている。
美しい町並み、川が流れ、出店などもさかん。できればもう一度生きたいと思っていた。
そんな、街で連続殺人事件。可気朗はすこし頭をひねった。
大きな街だから、事件などは仕方がない。だが連続殺人事件などという物騒な事件などはぜんぜん起こらなかった。
スリーピーホロウには、大きな警察機構の建物があったため事件はすぐに解決されていた。
だからこそ、大きな事件が今まで起こらなかったのだ。
『この四人の被害者はどれも、大きく噛み付かれたような傷が沢山有ります。動物にこんな器用な真似ができるわけ有りませんし。おかしな事件だと思いませんか?』
「まぁな、スリーピーホロウで起きてるって事もおかしい気がするし・・・」
『そう思って、少し調べてみたのですが。スリーピーホロウには警察機構の研究施設が丘の上にあるそうなんです』
「そういえば・・・そんな話も聞いた事があったな」
警察機構は表向きはごく普通の事をしているくせに、裏では何をしているか分からないことが沢山ある。
このスリーピーホロウに研究施設があったと言うことは、なにか匂うものがあると言えた。
フォレスの言うとおり、この事件は普通の人や野犬などができる芸道ではない。
むしろ、能力を持つ自分達に近い者の仕業だ。
そう考えていくと、この研究施設と謎の連続殺人事件は結び強いものだった。
『それでなのですが、私達はこの事件が奥の深いものだと感じています。なのでぜひとも可気朗さんやライドさん達のお力を借りたいのです。シュートとマインはすでに先にスリーピーホロウへと向かいました。彼らを手伝ってくれないでしょうか』
フォレスがどこか静かな声色で言った。戦いを好まない彼女がここまでこうして頼んでいる姿はなんだか、不思議な気分がした。
可気朗は、そんなフォレスを見て、ふうとため息を付くと静かに頷いた。
「わかった、手伝う。そのかわり金ははずんでくれよ」
『ありがとうございます。スリーピーホロウまでの地図は後でお送りしておきます』
フォレスはかすかに微笑を作ると、静かに画面から消えた。
可気朗は、画面から消えたフォレスを確認した後、フォレスから送られてきた書類に目を通していたのだった。
「それ絶対、警察機構の仕業だって!!」
ライドが大きな口を開けながら、可気朗に叫んだ。
元気で押さえることを知らない、彼の相棒はいつもフルパワーで迫ってくる。
可気朗は、コーヒーを飲みながら、ライドに言った。
「たしかに、フォレスの話を聞いたり、今までの経験上。どうしてもそういう考えになる。けど・・・なんだか違うような気が俺はするんだ」
真剣な表情で可気朗がこたえるのに大して、ライドは絶対に警察機構の仕業と決め付けていた。
ライドはとにかく、考えることがどこか苦手である。
難しいことは、だいたい可気朗に任せきっている。
だから、自分はいつも直感で動くのだ。
今回の事件だって、難しく考えなくても少し考えれば警察機構がしたというのは確実。
ライドは可気朗がなぜ、こんなふうに考えるのかが分からなかった。
「なんにせよ、スリーピーホロウに行って。確めるしかなさそうだな」
「そうだな・・・あっ!」
可気朗が席を立ち、スリーピーホロウに行く準備をしようとしたときである
ライドがすっとんきょうな声を上げて、席から立ち上がった。
辺りをきょろきょろと見渡すと、部屋を覗いたりして、しばらくすると帰ってきた。
そして、可気朗に一言。
「紗織は?あいつ俺達の仕事手伝いたいっていってたじゃん」
「うっ・・・・・」
ライドの言葉に、可気朗が肩をびくっと震えさせた。それをみてライドが?を浮かべる。
なにか会ったのか・・・・
ちなみに、紗織というのはつい最近可気朗がたすけた少女だ。
腰までの長い黒髪に、蒼色の綺麗な瞳をした美少女で。
回復という珍しい神霊を持ち、ヘブンズドアのデュオ達から逃げているという。
記憶をなくしており、過去がわからないからかどうかは分からないが、可気朗はその少女を家に置いていた。
それだけじゃない、ハデンという少女とマリーヌという少女もヘブンズドアから救い出した少女だ。彼女達も可気朗の家に厄介になっている。
その彼女達も居ない。可気朗と喧嘩でもして、家を出て行ってしまったのだろうか・・・。
ハデンならありえる・・・。
そうライドは考えながら、唯一三人がいない理由をしってそうな虎の刃に聞いた。
虎の刃はどこかくすくすと笑いながら答える。
「紗織さんって、ここに着たばかりで服がないでしょ?流石に可気朗さんやご主人様の服を切るわけにも行きませんから。可気朗さんが、ハデンさん達と服を買って来いって外に出したんです」
「虎の刃!!!」
笑いながら話す、虎の刃を妨害しようと可気朗が近くに置いてあった新聞を投げる。
しかし、新聞はライドが綺麗にキャッチしてしまい、にやぁとライドは面白そうに微笑んだ。
そして、手をぶんっとふると可気朗の肩を掴みながら笑った。
「いいとこあるねぇ〜!可気朗!!!」
「らっ!ライド!!!!!お前!!いい加減にしないとぶっ飛ばすぞ!!!」
リビングにライドの笑い声と可気朗の怒鳴り声が聞こえてくる。
虎の刃はただそんな二人の仲のいい風景を面白そうに見ていた。
可気朗が紗織に、服をどうする?と聞いてきたのはフォレスからの通信が入った後だった。
紗織は、ハデンやマリーヌに今まで服を借りていたりしたが、どうしても似合わないし。
サイズも合わないことが多い。だから以前から困っていた。
「あの、でもご迷惑じゃ・・・・」
紗織がどこかひかえめに可気朗に言った。可気朗は顔を少し振るとハデンにお金を渡して困った顔をしている紗織に言う。
「でも、服がないほうが困るし。迷惑がかかるだろ。遠慮しなくてもいいぜ」
「あ・・はい」
可気朗に優しく微笑まれ、紗織はどこか顔を赤めてハデンやマリーヌと一緒に近くのショッピングモールへと向かった。
桃色をしたピンク色の袖なしワンピースがふわりと揺れて、ドアが静かに閉まる。
三人が出て行ったのを確認した可気朗は、紗織達に見えないように隠していた書類を
そっと取り出すと、詳しく読み始めた。
「危険な目に・・あわせられないしな・・・・・」
可気朗がどこかぼそりとつぶやく、その声は近くにいる虎の刃にも聞こえないくらい小さかった。
家に紗織が来てから、彼女はなにかしようと必死だった。
ただ、守られているのはイヤだと、仕事を手伝いたいといってきたのはつい最近。
ライドは、傷を癒すことができる彼女が仕事を手伝うことに賛成していた。
だが、可気朗はどこか不安で仕方がなかった。
彼女の力は他人を癒すことはできても、自分は癒すことができない。
仕事を手伝って、大怪我をしたらどうする・・・。
そう思って、可気朗は仕事には参加させないと、ずっと言おうとしていた。
だが、いざ言うとなるとなかなかいえない。
紗織のことだから、怒ったりしないし逆らったりもしないだろ。だがきっとなんともいえない悲しい顔をするのだ。
それを想像して、可気朗は言えずに居た。
そして、今日。フォレスからの依頼を受けてライドなら絶対に紗織を行かしたらいい
と言うと思い、なんとかしてばれないうちに紗織を外にだしておいた。
彼女達が帰ってくるのは夜、少しでてくると書きおきでもしておけば大丈夫。
だから、早く行こうとした。
なのに、ライドはなかなか起きてこない。
起きてきたのは昼過ぎ。だから可気朗の機嫌が悪かったのである。
「ライドーーーーーーーーー!!!!!」
「照れなくていいって〜〜」
リビングで繰り広げられる、物の投げあいはじょじょにエスカレートして。
今はお互い、可気郎はいろいろ物を出現させては投げ、ライドはそれを受け止めたり叩き落したりしている状態。
しかし、両者本気ではないので。どちらかが死ぬということは多分ないだろう。
虎の刃は一人暇そうに、昼寝をしていた。
こうして、またスリーピーホロウに行く時間が短くなっていくのだった。
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(管理人からのコメント)
第一話でした〜、出てまいりましたですね〜ライドとか。虎の刃が可愛い、ライド くれww
俺にはここまで虎の刃を可愛く描けません、日常こんなんだろうかこいつら? ちょっと覗きたい気もw
しかし能力者同士の物の投げあいってw、可気郎はいったいどんなものをライドに投げつけてたんだろうw
さて こっからどうなるのか…気になった人は下の上側をクリックですぞぉw
第二話へGO!
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