ここは何処なのだろう。
自分は、なぜこんな場所でずっと・・じっとしていなくてはならないのだろう。
そんなのイヤだ・・・。
そんなのイヤだ・・・。
自分は、こんな所から早く外へ出たい。
そう、自分は自由なのだ。
歩くこともできれば、飛ぶこともできる、自由なのだから。
自由なのだから・・・・
そう・・・・
自分は自由なのだから・・・・
―SARABANDO―
薔薇の埋葬      片翼・紗央里
大きな悲鳴が部屋に響いていた。
白衣を着た、研究員達が次々に彼の手にかかり倒れていく。
それは、なんとも無残な風景だった。
がらがらと大きな音を立てて、パソコンに研究員の一人が突き飛ばされる。
その研究員は、頭から血を流し地面に倒れこんでしまった。
『自分は・・・自由なのだ・・・・・』
声が倒れている研究員の耳に聞こえてきた、霧がかかったようにもやのかかる頭に
研究員はただ、胸をせきたてるだけだった。
「やめるんだ!サラバンド!!いいかげんにしないと痛い目にあうぞ!!!」
彼の前に一人の男性が立ちふさがった。
白髪混じりの髪をして、灰色をもっとにごらせたような目をした老人だった。
その老人は、手になにかの注射を持っていた。
中には、緑色の液体が入っている。緑色の液体は小さな粒を浮かべていた。
老人の言葉に彼は振り向いた、変に腕が重い。
ああ・・そうか、腕の肉がたれてきているからだ・・・・・・。
彼は、老人に振り返るとどこか泣きそうな瞳で老人に訴えかけた。いや、泣ける目はもうない
『博士・・・自分は外に出たい・・・。空を見てみたいんだ。雨も見たい。そうだ雲も見たいんだ。そして・・・仲間がほしい・・・外にはいろんな物があるんだろ?自分は見てみたいんだ。すごいんだ・・すごいんだよ!博士!!!教えてくれたんだよ・・彼が、ケンティフォーリアが』
彼の言葉を聞いて、老人はぎょっと目を大きく見開いた。そして何かにおびえるようにがたがたと震えだす。
「け・・・ケンティフォーリアだと!?う・・嘘だ・・・奴は・・奴はわしがこの手で・・・」
『博士・・・外はすごいんだってね・・・・すばらしいんだってね。自分はもう自由なのだから』
彼はそういうと、ゆったりとした足取りで研究所を出て行こうとした。
ずるずると何かを引きずるような音が聞こえてくる。老人はそれを見て急いで止めようと足を走らせようとした・・・が・・・。
がしっ
なにかが、老人の足を掴んだ。重々しく引っ張って。自分の方に寄せようとする力に。
老人は、それを見て顔を蒼白にしてしまった。
倒れた研究員が・・・老人の足を掴んでいたのだ。
しかも、普通の姿じゃない。肉は剥がれ落ち、唇は削げ、目は白目を向いている。
なんと言うことだ・・・・
老人は、息を呑んだ。ずるずると何かを引きずる彼の足跡は少しずつだが確実に外に向かっている。
あんな彼を外にだしたら・・・・この街はどうなる。
老人はその時、酷く自分のしてしまった事に後悔してしまった。
彼を作り出してしまったこと、そしてなにより、自分がしてしまった過去のこと。
奴は自分に復讐したかったにちがいない、だから彼を使って自分に復讐したのだ。
そう、自分が作った物の手で殺されるという最後を。
ということは・・・奴は生きていた!自分の手から逃れ・・生きていた!
老人が気が付くと、自分の周りには足を掴んでいる研究員と同じような状態になった
研究員があふれ、老人にじりじりと迫ってきていた。
冷や汗が額に零れ落ちる。
もうおしまいだ・・・・・。
老人が逃げようとすると、彼の逃走経路は研究員達によってふさがれた。
腹をすかせた肉食動物のように迫ってくる研究員に、老人はただただ後ろへ下がるしかなかった。
老人の背中に壁が当たったのは、そのすぐ後だ。
老人は、もう逃げ場がない事を知ると、歯をぎりぎりと食いしばり死に物狂いで叫んだ。
「おのれ!!!!ケンティフォーリア!!!!わしは許さんぞ!!絶対に・・呪い殺してやる!!!!」
狂った研究員が、老人に覆いかかるようにして襲い掛かってきた。
老人の声が小さくなっていく、叫び声はすぐに悲鳴へと変わってしまった。
老人の悲鳴が聞こえなくなり、研究員達は、息を荒くしながらのっしりとした足取りで
外への道へ殺到した。道が狭いためお互いにつっかえた研究員達が襲いあう。
やがて、十人のうち五人の研究員達がゆっくりとした足取りで外へと歩いていった。
ずるずると何かを引っ張るような音が無数に聞こえてくる。
巨大な街を一面することのできる、丘の上に建っていたこの研究所からでてきた研究員達は
急な斜面の丘をまるですべるように転げ落ちていった。
時間は夜、空には月が雲の所為で見え隠れし、研究員達はすぐに街へと消えていった。
そんな風景を一人、優雅にたたずみ見ている男性が居た。
暗闇の所為でよくは見えないが、藍色をした髪の毛に、白い白衣をきた赤目の男性は
研究施設から転がるように街へ向かった研究員達をどこか喜劇でも見るかのように楽しんでいた。
「愉快だね。カジノ博士。私を殺して研究の成果を横取りしようとするから、こんなことになるんですよ」
男性は、くすくすと笑いながら、そう答えた。
近くに人は居ない、その男性一人だけだ。だかその男性は研究員達が出てきた研究施設の入り口に立つと、ゆっくりと歩いて来るある人物をみながら答えていた。
月明かりで、その人物はすぐに分かった。
あの老人だ。ただ、さっきまでの老人ではない。髪は全て抜け落ち。
肉はさっきの研究員達のように削げ、何より、灰色の瞳は片目がなかった。
『あ・・・ああ・・・・・・・ケン・・ティフォー・・・リア・・・助けてくれ・・・わしが悪かった・・・・たのむ・・このとおりだ・・・・』
老人の口から、さっきの叫んでいた声とは違う二重になったような声が聞こえてくる。
息を荒くして、今にも転んでしまいそうだった。
そんな老人を見て、男性は一人笑う。まるで道化のように。
「助けてほしい?それを貴方が言うのですか?片腹痛いですね。その言葉を二年前に
聞きたかったですよ。でも、まぁいいでしょう」
『助けてくれるのか!!』
「ええ、カジノ博士は私の恩師ですから」
男性の言葉に老人は、笑みを浮かべた。笑みといえるかどうかは分からないが。
元の普通の顔ならば、笑みと言えたであろう。
今の老人の顔はそれさえも分からないぐらい、変わり果てていたのだ。
男性が懐から何かを出す、それは青色をした液体で、少し前に老人が持っていた注射器に入った
緑色の液体と似たような物だった。
その液体を取ろうと老人の手が伸びる。男性はくすりと口元を微笑ますとその薬を老人に渡した。
老人が急いでその液体を飲もうと、コルクを抜く。
しかし、飲もうとした瞬間。老人の首が宙を舞った。
ぼとりという音がして、老人の首が地面に転がる。老人の口から赤い血が流れた。
『な・・・なぜ・・・・』
「そういえば、二年前。カジノ博士言いましたね。お前は邪魔だ。その言葉そっくりお返ししますよ。お前は邪魔です。消えろ・・・ってね」
くすくすと男性はまた笑い始めた。地面に転がっている青い液体をこぼれないうちにコルクを
再びはめて、そっと懐に戻る。
地面には、あの老人の死体が転がっていた。
もはや、老人とは言いがたい。首のない死体が・・・・。
男性は事切れた男性をみて、笑いを止めた、笑みはどこか全てを知っているかのような笑みで
ただ、勝ち誇ったような顔をする。
そう、自分はよみがえったのだ・・・。あの苦しく辛い日々から・・・。
もはや、全ての道が途絶えたと思った瞬間から。
「可憐ではかない薔薇のように・・・。私の復讐は今始まる」
男性が一本の薔薇を老人の投げつける。
赤い色をした、薔薇はトゲが大きく、老人の肉のはがれた体に静かに刺さった。
そして、次の月が出た時にその男性の姿はなかったのである。
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(管理人からのコメント)
というわけで さおちゃんこと片翼社央里さんからの作品、どこがTORAじゃあ!と言う突っ込みはしちゃだめですw
これからどうやってライド達が絡んで行くのか、気になった方は続きをどうぞw
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