ドッカ村事態は目の前だったため、難なく到着。
「ん〜、流石に村ねぇ。こう 見るからにこじんまりしてるわ」
「ちょっ 姫様、いくらなんでもそれはいいすぎじゃ……」
「こりゃ野宿かね〜?」
村の中を回りながらの一行。特に宿らしい宿がみつからず、咬はそうボソリと。
「え〜、いやよ野宿なんて」
それを聞いて姫様がぶうたれた。
「ってったってお前、それらしい建物みつかんなかったぞ 今んとこ」
しかたないなと言いたげに、その不満に事実を突きつける咬。
「言えば泊めてくれるでしょ」
姫様のとんでもない発言に、「どっかの押しかけお泊りTVか!」と反射的につっこむ咬。
「あのぉ……」
と、そこに控えめにかけられる少女の声。
「なに?」
不機嫌さ丸出しのまま答える姫様。その迫力に気圧されたのか、少女はビクリと身を知事メて黙り込んでしまう。
「やれやれ、ごめんね ちょっとごたごたしてたの。それで どうしたの?」
そんな状況に呆れつつ、改めてホワイトは少女に優しく質問する。
「あの、宿泊場所をお探しなんですか?」
「どっから聞いてた?」
おずおずと切り出した少女の問いを、姫様はきつい口調と射抜くような視線で詰問するように問う。
「あ、え あの……」
「スタン、いい加減にしなさいよ。怖がって喋れなくなってるじゃないの」
そんな姫様に痺れを切らしたホワイトの睨むような言葉と視線で、場が一触即発である。
「はぁ やれやれね。うさぎ、忘れたの。さっきあたしたちが村に入る直前のこと」
逆にそんなホワイトに呆れた姫様はクールダウン。そうしてホワイトに問い返す。
「村に入る直前のこと。って 話題摩り替えてんじゃない」
わよ、と言おうとしたが。
「頭冷やせ この駄ウサギ!」
「いたいいたいいたい! アイアンクローはかんべんしてっ!!」
ホワイトは、言葉の最中に姫様にアイアンクローを喰らっていた。しかもその手の力だけで空中に持ち上げられている、さらに言うなら その手は左手。聞き手ではないのだ。
「さて」と若干ホワイトをさらに持ち上げた後で下ろしてから、改めて姫様はホワイトに聞いた。
「覚えてる? この村に入る直前のこと」
「絶対叩き付けるつもりだったでしょ……。で と、村に入る直前のことでしょ? ……尾行してたと思われる女の子……?」
考え考え、不振店を答えるホワイトに 姫様は満足気に頷くと「そういうことよ!」と縮こまったままの少女をビシッと指差す。
「ひ っ!」
「見逃さなかったんだからね、今うさぎが尾行されてたって言った時に目を一瞬見開いてたの」
「あ、あう……」
そう甘えるような可愛らしい声でうめいた少女は「ばれちゃいましたぁ」と今にも泣きそうである。
「それ、芝居だったらしばきたおすわよ」
姫様の脅迫に、少女はぶんぶんと首を振る。
「んで? ブラックビートのお手先さまが、あたしたちになんのごようかしら?」
目の笑っていない笑みで、姫様 いや暴君スタン=プローズはあどけない少女に口を割らせるために問いかける。
「あ、の……おやど ありますけど……おつかいになられますか?」
最早恐怖で縮みきってそのまま存在が消滅してしまいそうに、件の少女は縮こまっている。
「いい加減にしなさいスタン! いくらなんでも限度ってもんがあるわよ。自重しろ!」
キッとスタン=プローズを睨みつけるホワイト、また一触即発再来だ。
「……つまんなーい」
ふっと軽く息を吐いてから、本当につまらなそうに言う姫様。それにホワイトは怒り心頭。
「貴様!」
この少女は目の前の友人を、つい一日ほど前に命を救ってもらったにもかかわらず 今完全に敵と認識している。
「てめえら、いい加減にしやがれ!」
「あぐっ!」「ぐっ」
二人の左頬に、咬の拳が炸裂。予想外の攻撃に、二人とも直撃であった。
「お前ら 二人とも頭冷やせ。ったく、なんだかんだ言うくせして 泊まる気満々なんだろうがスタン」
心底あきれ返っている咬、その言葉に姫様は「あたりまえでしょ、野宿か宿かって言われりゃ宿じゃない」とさも当然と言い放つ。
「なら人一人を恐怖のずんどこに叩き込む必要ねえだろうがアホ姫」
「な、アホとはなによアホとは!」
「そのまんまだ!」
「ええ加減にしぃや!」
突然のオーディーの声。これがマンガであったならば、キーンとハウリングの効果音がこのコマに書き込まれているであろう それほどにでかい声であった。
「……オーディー、いくらなんでも声でかすぎよ」
頭を抱えてうずくまる姫様、いかこの場の人間は全部そうである。
「まったく、あんたらなに子供みたいなことでギャーギャーギャーギャーギャーギャー。やかましいんじゃ、温厚なわいでもおこりますよ。姫様も、咬はんの言うとおり こんないたいけな女の子を恐怖のどんぞこに叩き落してなに考えてますのん」
諭すよか説教を始めそうなオーディー、さりげなく咬の間違いも訂正している。
「わ……わかった、わかったわよ」
そんなオーディーに観念して、姫様は一度全員が自分を見れる位置に行くと。
「すまんかった!」
「な! おい、ちょっ」
「姫様……」
「あ、あの……土下座とか、しなくていいから……」
「あ あの、その……」
突如、スタン=プローズが 一国の姫君が土下座をしたのである。それもすごい勢いの土下座を。
この勢いが地面に付くすんでのところで止まったからよかったようなもので、もしこれが地面に頭突き状態だったらおそらく額型の跡が地面に残っていた。
「顔 あげてください。その……大丈夫ですから」
正直なにが大丈夫なのか、少女自身にもわからなかった。だが 少女も今目の前に土下座しているお姉さんが、このトアール国の姫であることは知っていた。だから、いたたまれなくてしかたがないのである。
「……ふぅ」
気まずいのか、立ち上がった姫様は軽く息を吐きながら体についた土ぼこりやらなにやらをはたいている。
しかしその視線は姫様以外のメンバーを見ていない。
「あの、それで。山荘カブトムシ、お使いになるんですよね?」
少女はおちついた場の空気に安心して、姫様ご一行に確認を取る。
山荘カブトムシ。おそらくそれが少女の言う宿の名前であろう。
「カブトムシ、なぁ。ブラックなビートル、まんまじゃねえか」
「えっ、どうして名前の秘密を!?」
ものすごい驚いている少女。名前だけでブラックビートの息のかかった場所だ と言うことが看破されたのが、よっぽど意外なことなんだろう。
「で、一つ聞かせてくれる?」
通常に戻った姫様に聞かれる少女、なんでしょうか と首をかしげて問いを待つ。少々姫様より背が小さいため、上目遣いに自然となっている。
「貴方の名前。案内してくれるんなら、呼べないと不便でしょ?」
そんな少女のしぐさが可愛くて、一瞬お持ちかえってしまおうかと考えた姫様だが 今はお持ちかえるどころか目的地にすら辿り着いていないことに気がつく。
「あ、はい。ムーン=ルースと申します、申し送れて申し訳ございません」
恭しくお辞儀する少女改めムーン。
「ねえ子猫ちゃん?」
「あの、わたしのことですか?」
返されたムーンの問いを肯定した姫様は、改めて質問する。
「メイドかなんかしてる? 格好は特にそう言うんじゃないみたいだけど」
姫様の指摘のとおり、ムーンはいわゆるメイド服と言うのは身に着けていない。現在の彼女の服装は、白の花柄ワンピースと言う少女らしいものだ。
「あの、はい。主に案内役をやらせてもらっていますけど」
なんでそんなことを聞くのか、とムーンは不思議そうだ。
「やっぱりね、やけにしっかりしてるから ちょっと気になってね。んじゃ あないせい」
「あ、はい かしこまりましたっ!」
わざと変な姫キャラをやってみた姫様、どうやらそれがムーンに緊張を生んでしまったようで ピンと背を伸ばして なんでか敬礼された。
「しかし……子猫ちゃんってお前……」
ようやく宿こと山荘カブトムシへ向かうことになり、自称案内役のムーンを先導に歩き出して少ししてのこと。
姫様が決めたムーンの呼び方に、咬はまたもやれやれと深い溜息を交えて言う。
「しかたないでしょ、そんな感じしたんだから」
姫様はいつものように、そのネーミングセンスをなんとも思わず そう切り替えした。
「ううん、特に伏兵はいなそうね。オーディーは、なんか感じる?」
「いや、周囲にそれらしい気配はありまへんな」
そんな二人をよそに、ホワイトはオーディーと共に周囲を索敵していたりする。最も二人とも気配で ではあるが。
「そろそろ見えてきますよ」
ムーンの声に全員視線を進行方向にしっかりと向ける。すると、まるで墨でもぶちまけたような真っ黒い建物が見えた。
「カブトムシ、ねぇ。墨汁荘とかに改名した方がいいんじゃないの?」
それを見ての姫様の感想。それには他のメンバー なんとムーンまでもが同意した。
「なんか、足取り重いわねぇ」
ホワイトが素直な感想を言えば、咬も「だな、中は大丈夫なのかよ?」とムーンに問いを投げる。
「はい、中は普通の木造建築ですから」
と前を向いたままで答えた。
「その言葉を信じるか」
咬はそうしかたなさげに呟くのであった。
雑談? ま、見てやるかな
波動をさけるため本を手放す