「お世話になりました」
「いやいや、大したこともできないで」
「気にしないでください、一晩泊めてくださっただけでも充分ですから」
「じゃ、道中気をつけて。あまりお父さんお母さんを心配させちゃ駄目だよ」
「ええ、わかっています」
 翌朝。そんな会話をし終えると、会釈と共にもう一度礼を述べる。そうして次の目的地、アノアタリまでの道を行くトアール姫スタン=プローズ一行。
「なあホワイト?」
「ん?」
「お前、あんな社交スキル。いつのまに覚えてたんだ?」
「淑女のたしなみって奴よ」
 アチラヘンを出て少ししたところでの咬とホワイトである。二人とも、ハンマー夫妻とのやりとりの緊張がなくなったおかげでどっと疲れが出てしまい、出発したばかりだと言うのに態度がどこかだるそうだ。
「あんたたち、そんなんで疲れてたらアノアタリまででばてるわよ。あくまでアノアタリは休憩点なんだからね」
 姫様の檄が飛び、二人ともそれに「了解〜」と疲労感の抜けない声で返事をする。
 やれやれと思いつつ、そこを言葉にせずオーディーをあいかわらずナビゲーションに進む。
 
 あれからどれくらい歩いただろうか。特に今回はトラブルもなく、第一目標地であるアノアタリに到着。現在休憩中である。
「いや〜ハイペースですよ〜。姫様たちの身体能力、想定外にスペック高いわ。流石ちゅうとこですな」
 今はまだ日も高い、むしろもう少しで日の位置も頂点に届こうかと言う時刻だ。
「てことは、オーディーの見立てだともうちっとかかるはずだったんだな?」
 咬の問いに、頷いてオーディーは答える、自分の見立てでは現状ではまだアノアタリには暫くかかる予定の位置にいるんだと。
「なるほどね。いいじゃない、予定より早いんなら」
 ホワイトはうーっと、思いっきりのびをしながら言っている。
「ペースを変えないで行った場合、今日の目的地のドッカ村にはどれくらいに着くか オーディー。割り出せる?」
「ちょっと待ってください」
 三人の期待の視線を一身に浴びつつ少し、その答えは出た。
「夕刻辺りにはつけると思いますよ」
「夕方か、流石に山を夜から登るのは危険すぎるからちょうどいいわね」
 オーディーの答えを聞いて、満足そうに姫様はそう感想を言った。
「でもですね。もうそろそろ行かんと予定時刻オーバーしますよ」
「OK、二人とも 休憩はもう充分よね」
 有無を言わせない姫様の言葉の選び方への不満を軽い溜息で表現しつつ、二人は頷くことで出撃可能なことを伝える。
「よっしゃ。んじゃ、いきますか」
 そういうわけで、姫様たちは再び歩き出した。
「こっから先はアップダウン激しい道ですんで、注意してくださいよ
 少し行ってのオーディーのアドバイスである。たしかに目の前には坂が見えており、それが幾つもあるのが確認できた。
「わかったわ。でも、これの連続程度なら楽勝じゃない」
 余裕たっぷりに坂を上りきる姫様、この先の道を把握しておこうと目を凝らして先を見た。
「なんか……徐々に坂の高さが高くなってるんだけど?」
 前のオーディーに尋ねる姫様。その声色は少々不可解そうである。坂の下からでは、先の情景はよく見えなかった様子だ。
「そうですよ。ドッカ村はムコウ山の麓であるのと同時に、山の二合目辺りに当たる場所にあるんです」
「この変な形の連続勾配は、自然にできたのかしら?」
 ホワイトがおいついて話に加わる。
「そのようですな、自然の要塞とはよく言うたもんです」
「たしかに、大概の奴なら村に着く前に疲れちまいそうだもんな こりゃ」
 咬が一足遅れて話しに入って来た。
「うまいことできてんのねぇ。じゃ、その要塞に挑むわよ」
 言うと姫様はオーディーの肩を軽く叩く、どうやら先導を再会してほしいらしい。
「了解です、道もあまりよくないようですから、足元に気をつけてください。走ったあきませんよ、転ぶか膝が爆笑しますんで」
 言うとオーディーは先導を再会、最初の坂を下る。
「なるほど、たしかにこれは走るな危険ね」
 ホワイトが坂を下り始めたところで、感想を言う。すると、
「うわっ!」
 と言う声と同時に、ズッと地面をこする音。さらに
「おわーっ!!」
 進行方向に滑り落ちる咬の姿が、二人と一体の目に飛び込んで来た。
「ついてないわねぇビール」
「ほんとね」
「石にでも躓いたんでしょうなぁ」
 だが、誰も彼のことを心配してはいないようである。ペースを崩さずにそのまま坂を下り続ける。
「こ……こら! 少しは心配しろよ!」
 背中を泥だらけにした咬の抗議の声が姫様たちに飛ぶ。
「大したことないでしょ?」
 どうやら姫様たちは、あの程度では怪我のうちに入らないと思っていたようだ。
「いやいてーよ。それなりに痛かったよ!」
 咬の表情から抗議の色が抜けていない。
「なんならスタンたちも天然滑り台やってみるか?」
「いやよそんなの」
「右に同じくね」
「同じに同じですわ」
「お前らなぁ……」
 肩から力が抜ける咬を見て、二人と一体は噴き出した。
「ま、足元に気をつけることね」
 姫様がまだ少し笑いを含んだまま言う。咬はそれに「わかってますよ」とやれやれな雰囲気で答えた。
 そうしてフォーメーションを元に戻した姫様たちは、二つ目の上り坂を上り始めるのだった。
 
「さ……流石に疲れたわね……」
 現在地は全ての坂を上りきったところ。姫様が息を弾ませながら言いつつ地面に座り込んでいる。
「走らなくても膝が笑い出しそうよ」
 姫様の横に座っているホワイトが、深い息をはいてから言った。そのさらに横の咬も「そうだな……やれやれ」と疲労困憊。
「お疲れ様です、皆さん」
 オーディーは三人を気遣ってそうねぎらいの言葉をかける。
「暫く休まして」
 姫様から疲労感満載の言葉がメンバーにかけられ、全員は二つ返事だ。
「流石の爆裂姫も、これはこたえたようだな」
 咬が同じく疲れた声で言う。姫様は「ええ、流石にきっついわ」と答えを返す。
「まだ、空が青いわね。予定より早かったみたいよ」
 ふと空を見たホワイトが、そうやって全員に知らせる。
「ん? あ、ほんとね」
 つられるように姫様も空を見た。
「……誰!」
 突然少し後ろの茂みから、ガサっと言う音がして 姫様は素早く振り返りながら声をかける。
 そうすると、村側へと走る足音と、「きゃうっ!」と言う女の子の声がした。
「今の声の主ね……、どうやらこけたみたいだけど」
「後ろにいたってことは、わたしたちについてきてたのかなぁ?」
 姫様の後で、ホワイトが考えるように言う。
「案外例の連中かもな」
 比較的親権に咬が考えを述べる。それに姫様は「にしては早すぎるわよ」と腕を組んで考えていると言うしぐさをしながら答えた。
「ありえるんとちゃいます?
「どうしてよオーディー?」
「わいらがブラックビートを潰しに行くことは、おそらく伝わっとるはず。それやったら、どっかで尾行人員を配置しとっても不思議やないと思うんです」
「でも相手だって徒歩で来てたはずよ。ならあたしたちとそうかわらないでしょ、拠点に行くまでの時間」
「移動手段があったらどないです?」
「たとえば?」
「移動魔法とか?」
「そのとおりですホワイトはん。それやったら時間もかからんと報告やら次の行動やらに移れます」
「なるほどね。その手の方法はまったく視野になかったわ」
 ホワイトとオーディーの言ったことに膝を打つ姫様は、続けて「で……今にいたるまでまったく気付かなかったってことは。声からして女の子だったけど、よっぽど影薄いのね」とさきほど転んでいたと思われる声の主のことを分析した。
「(ああ……なんかシンパシー感じるわ……)」
 姫様の結論に、そう一人複雑な思いを抱くオーディーであった。
 
 ーー 本編後の雑談 ーー
咬「俺、なぜに不運キャラに?」
ぷちミント「インスピレーションですから」
咬「お前それ免罪符にしようとしてないか?」
ホワイト「ところでオーディーは?」
スタン「横にいるでしょうさぎ?」
ホワイト「ん? ああ、なんかやたらキラキラ光ってるなぁと思ったら、これオーディーだったのね。で……なんでこんなに輝いてるの?」
オーディー「出番や。出番が来た! それもなんか急に喋っとる。……はっ! これは死亡フラグ!?」
スタン「こらオーディー。なに一人で喜んだり絶望したりしてんのよ」
オーディー「……はっ! す、すんません。ついテンション上がってもーて……」
ホワイト「わかるわよ、やっと出番が来たんだもんね。そりゃテンションも上がるって」
スタン「よっぽど出番に餓えてたのねオーディー……。で 作者? 次回はどうする予定?」
ぷちミント「インスピレーションですから」
スタン「あんたは機械か!」
ぷちミント「もとい。次はドッカ村についてからなにがしかあるんではないかと」
スタン「そりゃ流れ見ればわかるわよ。なるほど、ほんとにインスピレーションなわけね」
ぷちミント「勿論ですよ。ま そういうこって次回まで」
スタン「自信たっぷりに言うわね……」
次、行ってみますか
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