さて休憩も終わって、ご一行はアチラヘンへの道を再び進んでいる。
「後は街道一直線よねオーディー?」
 現在地はアレカナを出て間もない辺りなので、姫様はオーディーにそう道を確認した。
「そうですよ。まああのほっそ〜い道も含めて、結局アチラヘンまで一直線なわけですけどね」
 軽く苦笑してオーディーはそう答えた。
「なんもなきゃいいけどな」
 ぼそっと言った佼に、ホワイトは「そうね」と自分の身に起きたことを思い出して溜息混じりにこたえる。
「んでアチラヘンつくはいいけどよ、宿のあてってあんのか?」
 ふと湧いた疑問を姫様に投げかける佼。姫様はそれに振り向かず背中で答える。
「それについては問題ないわ、特にアポもないけど大丈夫でしょ」
「アポなし訪問かよ? ほんとに大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。心配しなさんなって」
 佼は「その根拠のない自信はどっからくんだよ」と呟いたがしっかり聞かれており、姫様から振り向きざまに軽く肘鉄を食らうはめになった。
「あいててて、お前さぁ。俺はアポなし訪問でいらんトラブル起こされても困るからしつこく聞いてるんであってだな……」
「あんたそのリアクションは一つ前にしとくとこよ。ずれてるずれてる」
「肘鉄にかんしてはノータッチかおい?」
 面食らった顔でつっこみついでに言うものの、姫様にはさらっと「うん」とさも当然な言い方で切り返されてしまい、佼はなにもいえなくなってしまった。
「姫様、なんか少し先に人がおりますよ?」
 佼の状況をまるで無視したオーディーの状況報告、姫様も姫様で「見えてるわ」と佼はガン無視である。ちなみにホワイトは最後尾のためあまり話しかけることもできず、街道に入ってから非常に不満そうな表情である。
「検問かなんかかなぁ?」
 今がチャンスと会話に入るホワイト、あいかわらず背中で答える姫様の答えは彼女の望んだ答えとは少し違った。
「こんなとこに検問なんて張る意味はないわ。おそらく盗賊のたぐいでしょうね。まったく、このあたしの通り道に張るなんてバカな奴等」
 心底バカにした感じで吐き捨てる姫様。他の面子も同意権らしく頷く、最も姫様以外の三人も十二分に普通の人間に負ける実力ではないのだが。
「ま、たかが石ころ一つ。あたしの蹴りで弾き飛ばしてやるわよ」
「スタン、いくら盗賊だろうからって石ころ扱いはちょっとかわいそうじゃない?」
「いいのいいの、どうせたいした抵抗もできずに瞬殺できるから石ころといっしょよ」
「なるほどな」
「それもそっか。とか言ってたらそろそろ石ころにも声が聞こえそうな位置ね」
 全員はまったく緊張も脅威も感じることなく、彼ら曰く石ころこと、あからさまに怪しい風体の男の前まで来た。
「よう坊主たち。ここを通りたかったら」
「邪魔」
 男の言葉を遮った姫様。心底うっとおしそうな言い方で相手の腹に蹴りを見舞う。だが思ったより足ごたえがいい。
「ふん、なるほど。少しは知恵が回るようじゃない」
 どうやら男は普通の服の下に、なにか鎧のような物を装備していたらしく その金属部分に足が当たったようだ。
「て、てめえ。人が話してる最中だぞ! 舌噛むとこだったろうが!!」
「ああごめんごめん。どうせそういう類のこと言うと思ったから無視してた。それに今の蹴り一撃で吹っ飛ぶと思ってたから聞くつもりもなかったし」
「こんガキャアア!!」
 いきなり激昂モードに入った男に溜息をつくと、姫様は後ろ二人と一体に言った。
「先行っといて、あたしこのザコのすから。あたしがなにものか、こいつの身体に叩きつけなきゃなんなくなった」
 三人は軽い調子で「オッケー」と答えると、少し下がって助走つけたジャンプで軽々と男を飛び越えた。
「なに?!」
 男は自分の上をなんの問題もなく飛び越えた子供に、思わずそんな声が漏れた。
「さてと、手は使わないで揚げるからかかってきなさい」
 踏み込める程度の間合いをとってから、姫様はそうやって男に言った。
「ふざけんなぁぁぁ!!!」
 わずかな距離を詰めてきた男、しかし。
「遅い!」
 さきほどの軽いキックとは比べ物にならない、矢のような蹴りが 再びがら空きの男の腹部を捕らえる。
「ごぶあっっ!?」
 自分の受けたダメージが信じられず、混乱した表情になりながらおおよそ人二人分ぐらい吹き飛ぶ男。
「なーんだ、もうちょっと飛ぶかと思ったのになぁ。あんた、全身鎧着てるでしょ実は?」
 ゆっくりとした歩調で、倒れた男に近づいている姫様。
「な……ぜ……わか……ぎっ!?」
 またも言葉の途中で、男の左腕を踏みつける姫様。たしかに金属が砕けるような音がした。
「ほら、だからこの程度しか飛ばなかったのよ。あの蹴りならそうねぇ、だいたい見えなくなるくらいまで吹っ飛ぶはずだからさ。ま吹っ飛んだ先にはビールとかうさぎがいるわけだから、結局あんたの命はないわね」
「お、お前は……なにものだ?」
「ん? 爆裂姫」
「……そうですか……」
 気力が吸い取られたような表情になった男は、それで立ち上がることをあきらめたようだ。
「んで? あんたなにするつもりだったの? こんなとこに立ってさ。まさっきの台詞からすると、身包み剥ごうって魂胆だったんでしょうが、相手が悪かったわね〜」
「くっ……後は、まかせる」
 その言葉を言うと、男は四つんばいになると 姫様に尻を向けて逃げようとした。
「アホか!」
 それと同時に向けられた尻を蹴る姫様。つっこみテンションだったおかげで、予想よりも少々力加減を間違えてしまい、男はまた前方に吹き飛んだ。
「で、そこら辺にもいるのよね、今の台詞から察すると。出て来い! あたしが全員まとめてぶっ壊してやるから」
 その挑発以外にはまったく聞こえない言葉を聞いて、さきほど思わず蹴っ飛ばしてしまった男の仲間らしい同じような風貌の男が数人、周りを囲むようにゾロゾロ現れた。
「はいはい、バカ正直に出て来てくれてありがとう汎用さん。で? 言い残したことは?」
 それに全員怒りを露にした。普通の人間が聞けば当然の反応だろう。
「爆裂姫だかなんだかしらねえが、ちいと礼儀ってもんを教えてやらねえといけねえらしいなあ!!」
「あんたらトアール王国の人間じゃないわね。あたしの名前を聞いてもビビらないんだもん」
「あ?」
「むしろ礼儀を知るのは、あんたたちだってことよ。おとなしく逃げるなら半殺しで済ましてあげる。ま あんたらみたいな基本プログラムに忠実な汎用キャラは、それではいすいませんでしたって逃げるようなことできないんだろうけどね」
「ふざけやがって。おい この女生け捕りにしてオモチャにしようぜ。こういうはねっかえりの気が強え女って奴は一度堕としちまえば、もう後は ギヒヒヒびぎゃっ?!」
 姫様の目が、逝った。
「……女を性的欲求の捌け口にしか見てねえ、てめえらみてえなクズは、このあたしが瞬壊してくれる!!!」
 今なにか言っていた男の腹部に鉄拳を浴びせる。すると最初に蹴飛ばした男のとは違う、金属が砕ける音と同時になにか それ以外も砕ける音がした。
「ぎゃあああ!!」
「骨砕いただけで終わってるんだ、ありがたく思いな!」
 完全に別人とかしているスタン=プローズ。最早この姿を見て、トアール王国の姫君であるなどと誰が言えよう。今の彼女は。
「……鬼だ……」
「黙れ! 声も聞きたくない!」
「ぎゃっ! 腕が! 腕がああ!! 両腕が!! 一瞬で、一瞬で両腕がぁぁぁ!!!」
「後何個だ?」
 最早人としてすら見ていない。
つ、続き 見てやろうじゃねえか
波動をさけるため本を手放す
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