「で、でぇっっかああいわねぇ」
「そうだね……」
「王白さんちって、お金持ちだったんだ〜」
「なんか、ユーフォーみたいな形の家だね?」
「ここが……連中のアジトか」
ってなわけで あたしたちこと、有由羽子 弟の気障夢 花園ありか 昭芽るな んで……なんか弟の友達は、王白ってあたしから見ての後輩ちゃん家に遊びに来た。まあなんか一人だけ妙なテンションだけど。
るなちゃんが言うとおり、家の形がUFOみたいなんだけどさ、縦は普通の二階建て程度 横と奥行きがそうだなぁ……。駄目だ何メートルとか何坪とかってのもよくわかんないし、てきとうなたとえが出てこないわ。とにかく第一印象がでかい家、それで許してちょ。
「連中……アジト。なあ崎野?」
「なんだよ」
ああそうだ、崎野崎野。で たぶん木刀だと思う袋を肩に担いでる崎野君は、弟の怪訝そうな顔の問いに、こっちも俺なんか変なこと言ったかなぁって顔で返事してる。
「いったいキワミマルの家となにがあったの?」
「いや、丸出しとはなんの関係もねぇんだけどな」って言ってから、崎野君は続ける。丸出し、こんなあだなの弟の知り合いは マルー一族とか言う奇妙な冒険……じゃなかった、奇妙な一族なんだそうで。
「前にな、マルー一族筆頭! 座敷丸、そこのお前 勝負じゃー! とか言って、いきなり殴りかかられたんだ」
「なに……それ?」
全員の声がハモった、勿論話してる当人以外。ちらっとメインの喋り手以外を流し見てみると、みんな一様にポカーンとしている。まあ当然よね。
「んで、いきなり来た左の抜き手を左腕で防御したんだけど」
一度言葉を切ると、寂しそうなちょっと遠い目をする。
「そのせいで木刀……折れてよ 今のこいつは二代目なんだ。まあ左腕にこの袋木刀入った状態でくくりつけといた俺も俺なんだけど……」
自嘲気味に笑ってから、崎野君はその二代目木刀をグッと握りこんで「だから、初代のかたきを打ちたくってな」と硬い決意を示した。
たしかに、おそらくその抜き手を受けたと思われる袋の部分は縫い合わされている。にしても木刀に初代とか二代目とか、なんか恥ずかしいぞ。まあ、嫌いじゃないけど そう言うのさ。
「んで? なんで連中とかアジトとか言う話になるの?」
思った感想はさておき、若干陶酔してる感じの崎野君を現実に引き戻しつつ、あたしは弟が聞き出したいであろう本題に話を戻させる。
「あ、ああ……それな。筆頭ってのとマルー一族って台詞で、暴走族なんだと思ったんだ」
「なるほど」
あたしとるなちゃんと弟が納得するが、ありかはどうにもよくわからないらしく、きょとんとしてる。
「さて。事情も飲み込めたところで」
「いえ あの羽子さん。わたし、どうしてマルー一族から暴走族に行くのかわからないんですけど……」
ありかの声を「別にわかんなくてもいいよ」ってさらりと流し、あたしは先陣を切るべく王白家の玄関扉の前に立つ。
「たの〜もぉ〜!」
インターフォンがあることに気づいて、それを押しながらのあたしの言葉に 弟は「ね、姉さん?」と不思議そうと言うより不可解そうだ。
「がー! 俺の台詞をおおお!!」
一方、弟の友人らしい崎野君はものすごく悔しそう。しめしめ、計画通り。こう言うのは早い者勝ちなのだ〜。
まあ、リアクションがあまりにもステレオタイプでちょっとものたりないな、とは思うんだけど。
「ん? インターフォンが鳴ってる?」
わたし王白円は、突然の来客に首をひねりました。だって、こんなところ新聞だって来るかこないかってぐらい人が来ないんだもの。
「麻瑠、央丸を抑えてて。わたし、ちょっと見て来るから」
「了解」
口数の少ない妹の返事を確認すると玄関に向かいます。夕刊にしては中途半端な時間だし、いったいなんだろう?
「た〜の〜もぉ〜!」
「この……声は……!」
足元に気をつけながら玄関に向かっているわたしの耳に、聞きなれた そして聞けると嬉しい声が入って来ました。
「先輩だ、先輩が来てくれた」
思わず笑みがこぼれます。だって、大好きな羽子先輩がうちに来てくれたんだもんっ♪ 思わず足も早くなって……。
「きゃっ!」
見事に転びました……央丸の這排のせいでできたくぼみに足を取られて……。やっぱり専用レーン作ろうよ〜。
そんなこんなありまして、玄関ドアに「ちょっとまってください」と声をかけます。だって先輩ったらず〜っとたのもぉピンポンやってるんですよ、いい加減に止めもします。
「いらっしゃい」
ガチャリと開けた扉の先には、先輩だけじゃなくて昨日いっしょに帰った先輩の弟さんやお友達でしょうか、一人は先輩といっしょに下校した時にもいた女の子 もう一人妹なのかな? その二人より少しちっちゃい女の子。
それからもう一人、やけにやる気満々と言った雰囲気の先輩の弟さんより頭一つくらいおっきい(弟さんはそんなに背はおっきくなくて、わたしくらいです。ちなみにわたしの身長は153センチです)男子が立っていました。
「おう王白ちゃん、あっそびに来たわよん」
う ウィンク、先輩が楽しそうにウィンクしてくれた……わぁ〜。
「皆さん どうぞ。あの、靴脱いだ後、足元に気をつけてくださいね」
皆さんを案内するために わたしは皆さんが靴を脱いで玄関に上がってくるのを、少し先で待ちます。
「いらっしゃい」
さて鬼が出るか蛇が出るか。と 思ったけど、ドアを開けて顔を出したのは、意外にもよく知る後輩。
「おう王白ちゃん、あっそびに来たわよん」
なんぞとウィンクを交えておどけて見る。そしたら王白ちゃんの表情が「わぁ〜」と言う溜息めいた声と共に幸せいっぱいになる、これは誰かが遊びに来たことの歓喜……なのかな?
「皆さん どうぞ」
ドアをめいっぱい開けた状態で言う王白ちゃんは、言葉の後背中を向けて少し移動 先の辺りであたしたちを待ってくれている。
「あの、靴脱いだ後、足元に気をつけてくださいね」
くるりとこちらに体を反転させて、王白ちゃんはそう忠告。靴脱ぎスペースで靴を脱ぎつつそれを聞く。
「どういうことかなぁ?」
あたしの疑問の言葉は王白ちゃんにではなく、弟たちへ向けられた物。
「まだ廊下見てないからなんでかわかんないね」
弟はあたしと同じようだ。
「トラップだな、トラップが張ってあるんだな」
崎野君は、一暴走族のアジトだ と言う考えを改めていないらしい。一人でそう言いながら納得した表情をする。
「でもさ、トラップが張ってあるならわざわざ注意する?」
あたしの言葉に崎野君は「それもそうだなぁ」と熟考し出しそうな雰囲気だ。
「ついてきてください、そぉっと そぉっとですよ。慎重に歩かないと転びますから」
すっかり案内役の王白ちゃんは、なんだか不自然な歩き方をしてる。まるで足の周りにレールでもあるみたいな……。
「きゃっ」
「花園さん?」
後ろでありかが言われたそばからこけたらしい。弟君は突然のことに声をかけただけにとどまったようで、そこは抱きとめるとかしとこうぜぇ?
「d きゃうっ!」
ありかの声に驚いたようで、王白ちゃんがバッとこちらに振り返りざまにこけた……。
たぶん 大丈夫ですかって言いたかったんだろうなぁ。あたしは慌てて横に倒れそうになる小柄な身体を抱きとめる。
ちなみに王白ちゃんは、あたしより頭一つほど小さい。
「大丈夫? どういうこと これ?」
王白ちゃんを抱きとめたまま聞いてみるあたし。
「あ、あの……ありがとうございます」
見れば、ゆっくりとこっちを向く王白ちゃんの顔が真っ赤だ。あたしに抱きしめられた状態だからか、それともこけたのが恥ずかしいのか?
「あの、その 先輩。あの……」
もじもじする王白ちゃんには、なんだか色気を感じる。なんでだろう? 上気した顔のせいかしらん?
「あ、ああ ごめん。抱きしめたまんまだね」
自分に対しても苦笑し、王白ちゃんを解放する。改めてこっちに体を向けた王白ちゃんを見ると、まだ頬の赤みは引かないけれど 平静にはなったよう……に見える。
けど、視線がものたりなさを訴えてる気がするのは気のせいか?
「で? 改めて聞くけど、どうなってんのここの床?」
指差す先は、特になんのへんてつもないフローリングの床だ。こう相次いで人が転ぶようなしかけはないように見受けられる。
「それは……あのぉ……」
言うのが恥ずかしいのか、言いよどんでしまう王白ちゃん。
「な、なんだ?」
「地震?」
「それにしては向こう側からなんか、煙みたいなのが……火事……でもなさそうだし」
「なんか、煙みたいなの……近づいてくるよ?」
「むぅ、なんだろう……けふっ」
「けふっ! 、な なに? 急にほこりっぽく けふっ!」
上から崎野君 あたし 弟 ありか るなちゃん でもっかいあたしの順。
「麻瑠、抑えてられなかったんだ……」
額に手を当てて困った顔をする王白ちゃん。かわいいなぁ、っと そうじゃなくて。
「抑えるってなにを?」
たしか麻瑠は王白ちゃんの妹の名前だったはず。いったいなにものを押さえつけてたんだろう? そもそも押さえつけなきゃいけないような物を飼ってるのかしら?
「来ます……うちの最強の問題児が……」
うなだれて深い溜息をつく王白ちゃん。最強の問題児……最強の辺りにトラブル臭がプンプンするんですけど?
続きがありますぜ
本を閉じる