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あれから四箇月。今は8月某日。
アマノジャッカーズ入団&解散から後、俺は逆転リハビリをしている。殆ど治ったが、まだたまに逆転発言してしまい恥ずかしいことになっているが、徹君 明美 空の三人はまったく問題なく通常モードに戻っていた。
現在時刻は午後8時。真夏のじとっとした空気がうっとおしい中、今、俺達四人は校門前にいる。それは明美の聞いた噂に端を発する。
「幽霊?」
発端は昨日、突然携帯にかかって来た明美の電話だった。
「うん、わたしもありがちな話だとは思うんだけどさ」
受話器越しの彼女の声は、否が応にもテンションの高まりを知らせている。
「んで? その幽霊話ってのはどんな話なんだ?」
「学校の周りに猫を連れた女の子がいるんだって。その子は少し話をしたら、猫共々どっか行くんだって。おいかけてみても、もうその子はどこにもいない……んだって」
「それって夜限定じゃなくてなのか?」
「みたいよ?」
「ありがちっつうかさ、お前が捏造したとかじゃないのか?」
「違うわよ! で空と徹君にも話したんだ。そしたらたいしたリアクション返ってこなくってさ。ま 良人君もそうみたいだけど」
「だってそんな話、嘘臭すぎてリアクションする気にもならないぜ?」
「う〜ん、じゃあわたしが目撃者だ。って言ったら?」
「ますます捏造説が濃厚だな」
「う うう……とにかく! わたしは、この噂を確かめたいの」
「それで?」
「それでって。あの……ええっと……」
「ーー 怖いのか」
「えっっ」
「だから、みんなで確かめに行きたいな。ってことだろ?」
「ーー うん」
「ふぅ。んーで? 空と徹君はどうなんだよ?」
「来てくれるって言ってたわ」
「……そっか。じゃ俺も参加すっかな」
「徹君目当て?」
「いや、怖がるお前を見たいから」
「酷っ」
「ともかくだ。いつどこ集合だよ?」
「え? あ ああ。明日のそーねー、日が落ちてから」
「……夜じゃねえかやっぱし」
「雰囲気よ雰囲気」
ってなわけで、今俺達通称アマノジャッカーズは肝試しじみた幽霊探索をしようとしている。もう解散して四箇月だが、アマノジャッカーズ=俺達四人で通っているので、通称ってのは間違いじゃあない。
「明美。校門潜るのはいいとしてだ、その幽霊少女の当てはあるのかよ?」
「出てくる時、猫が鳴くんだって」
「女の子が連れてるって猫か?」
「と思う」
「でも、この辺猫ってあんまり見ないよね?」
と徹君が不思議そうに考えながら言う。
「い いや、だからこそ怪談話が成立するわけで……」
そう俺が苦笑すると、なにか聞こえたような気がした。
「ーー ん?」
「良人君にも聞こえた?」
とは空。
「ああ、小さくではあるけど、なんか音が……。」
「え? わたしには聞こえなかったけど?」
「うん」
明美と徹君が言った直後、それははっきりと聞こえた。ニャー と。
「出たな」
俺の台詞に、明美はひじょうに驚いたようで、裏返った声で「えっ?!」と言った。
「今のが、その幽霊猫?」
徹君の疑問な独り言。それに答えたのは俺達ではなかった。
「そう言われてるよ」
「ひゃっ?!」
無論この声は明美。俺達も多少ビックリしたが、声を揚げるほどではない。俺だけじゃなく、三人ともそうなので、どうも空と徹君も心の準備ができてたらしい。
「君が……幽霊か?」
「でも 足あるよね?」とは徹君。それに幽霊少女は楽しそうに笑って答える。
「別に足がある幽霊いたってよくない?」
「じゃあやっぱり幽霊なの?」
そう空が、幽霊少女をまじまじ見ながら訪ねる。俺としてもこの女の子が、明美いわく噂の幽霊少女かどうか、実に怪しい。見たところ普通の女の子で、なんら幽霊っぽい感じはない。
「幽霊とは、ちょっと違うけど」
とは女の子。そばにいる黒猫をなでながらそう言う。見た感じ、たぶん10歳ぐらいだと思う。
「幽霊と違う?」
俺が疑問を発すると、女の子は頷いて答えた。
「わたしはこの猫、たまきの魂だもん。だからわたしも霊生(たまき)って言うの」
「ううん、たしかに微妙に違うかもな。けど、なんでそんな風に擬人化してるんだ? その猫の魂は?」
「……わかんない」
そう女の子 ーー 霊生は考え込んでしまう。
「擬人化って?」
そう徹君が聞いてきたので、本来人じゃない物を人になぞらえて表現することだよ、と解説。
「そうなんだ。人っぽくした人じゃない物……でも、霊生ちゃん 普通に人間だよね?」
「でも本来は猫の魂。人じゃないだろ?」
「あ そっか」
「もしかして、元々飼い主がいて、その人の思いがたまきちゃんにも移ったとか?」
納得した徹君に続いて、空は霊生を分析する。俺はそれになるほどと唸るが、霊生は首を横に振り言う。
「う〜ん。わたし、元々野良猫だから、飼い主はいないの。でも ごはんくれてた人はいた。その人がたまきってつけてくれたから」
「そうなのか? それで、今はどうなんだ?」
「その人、ごはんくれに来なくなっちゃった。今どこにいるんだろう?」
遠い目をしながら霊生は話している。もしかすると、この子の外見は、その餌付けしていた人の物なのかもしれないな。
「所在不明……か」
「うん。それで、その人が来ないかって思って、この辺りをぐるぐるしてるんだけど、違う人ばっかりで……」
「なるほど、明美の言ってたことはほんとだった と」
「今更言う? それ」
どうやら霊生に恐怖を感じなくなったのか、明美は普通に戻っていた いつのまにか。
「ねえ? あの、もし よかったら……お友達になってくれない?」
ふいに霊生がそんなことを言って来る。
「猫とお友達? いいかも」
徹君が先行してOKっぽい発言をする。俺もそれに続いて「だな」とOKを出す。
「そうね。明美は?」
「え? あ うん。オッケーよ」
「ありがとう」
霊生がそう言ってペコリとお辞儀をする。と 横の猫もお辞儀をしたように見えた。
「今、猫お辞儀しなかったか?」
「うん。だってたまきとわたしは一心同体だもん。魂だから」
「ああ、なるほどな。でも ーー 猫の瞳に光がないのはなんとかならないのか? 怖くてしょうがないぞ?」
言われてみんなそれを見る。
「っ!」
「ちょっ 明美、大丈夫?」
どうやら倒れそうになった明美を空が支えた、って状態になっているらしい。徹君はと言うと まじまじと猫の目を見ている。
「目……乾かない?」
「そこかよ?!」
「だって、すごい開いてるから」
「ううん。そうなんだよねぇ、魂戻ると目が乾いて痛いんだ」
「やっぱり」
「なんだかなぁ。ってことはさ霊生? 制限時間あるのか? 魂がそうやって擬人化できるの」
「よくわかんないけど、あるみたい」
「噂だと貴方と話した人たち、1分ぐらいだって言ってたみたいだけど。もうとっくに1分はすぎてるわよね?」
今しがた倒れそうになったにもかかわらず、もう元に戻った明美が、そう霊生に問い掛ける。
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