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「あいつら、なにしてんだ?」
俺は隣の席にいる、クラスのアイドル赤峰徹に問い掛ける。
こないだの席決めで隣になった時は、美少女の隣とあって密かに狂喜乱舞したが、一週間も経つともう慣れた物だ。
とはいえまあ、恨めしそうな男子の視線は、あいかわらずいろんな角度から注がれているんだが。
「さあ? なんか聞いた話じゃ、あの顔になった後少しすると奇妙な会話をし始めるらしいわ」
横の彼女は、簡単にそう答える。俺は「そうなのか」と相槌を打ちつつ、二つほど前の席に座る二人組みを見ている、現在時刻は放課後。
その女子二人組みは、どういうわけだかわざわざこちらに顔を向けて、恐ろしく真剣な表情をしている。
視線を合わせたりする様子がないので、別にこちらを見ているのではないのだろう。
「「アマノジャッカーズ 発動」」
そんな声が正面からした、すると俺達以外残った数人の生徒が二人の台詞を聞くや否や、ものすごい勢いで教室から逃げるように出て行った。
「なんだ?」
「みんなどうしたのかしら?」
疑問符の俺達をさておいて、前方の二人 ーー 天野空と天原明美は、本当に奇妙な会話を始めた。
「背後の二人、わたしたちから目をそらしてるわね」
俺から見て右側の女子、明美が俺達に視線を合わせながらそう言う。
「「……は?」」
俺と徹は同時に、目が点になる。あたりまえな話 俺も徹も二人の真正面におり、しっかりと視線を向けているのだ。
「違うわね」
今度は左側の空が、納得したように頷きながら、その言葉をはっきりと否定する。なんなんだ? こいつらは?
「いつものことよね、ジャッカーズ中のわたしたちから離れてるのって」
「ええ いつものことね」
「……な なあ、徹君?」
「なに? 良人君?」
俺はその名前から、赤峰徹のことを徹君と呼んでいる。で俺の名前は紅良人と言う。
別に彼女のあだなは、えとに取り付かれた人たちと、お友達になるヒロインから取ったわけではけっしてない。
「この二人……なにがいいたいかわかるか?」
少し唸ってから、徹君は自分の考えを答えた。
「もしかして、さっきの発動から暫くの間 全部を反対に喋るようにしてるんじゃないかしら?」
「え?」
「だって、そうじゃないと わたしたちに対して、自分達から離れて行くことがいつものこと、なんてことは言うはずがないから」
「まったく違うっ!」」
徹君の言葉に、前方の二人がそうハモった。ええっと? つまりそれは……。
「そのとおり……か?」
ものすごい勢いで、明美の方が首を横に振りまくっている。う……や ややこしい。
「なるほどねぇ、みんなが逃げるのはこういうことか」
俺は現状にそう納得する。今しがたみんながものすごい勢いで教室を逃げ去ったのは、このへんてこワールドに捕まらないようにするためだったのだ。
前方二人は、珍しい物を見るような顔だった表情を普通に戻して俺達を見る。きっと珍しがって見ているのだろう逆と言うことは。
「そう、わたしたち4年後ぐらいにやめるつもりだから、まだぜんぜん慣れてないけど みんなは、わたしたちを見慣れてからこっちに近付いてくるのよ」
「ええっと……それはつまり?」
「……どういうこと?」
俺達は空の言うことが理解できず思考をめぐらせる。すると突然明美が腕時計をちらっと見て「活動限界です」とひとこと。
それに頷いた空は、ふうと溜息をついてから言葉を改めて作った。
「わたしたちは4年前ぐらいからこれやってるからもう慣れたけど、みんなは変な物を見るような目でわたしたちを見て それで離れて行くの、いつもね」
と寂しそうに言う空、まあそりゃーそうだろうけど、ん? まて? どういうことだ?
「活動限界って?」
俺よりも早く、徹君が尋ねると、明美が答えた。
「もう普通に喋れるってことよ、アマノジャッカーズが発動してる間は貴方の言うとおり、全ての意味を逆転させて思考するの」
「なんでそんなことするんだ?」
「ただの遊びよ」
にこやかに明美が答えた。なんてややこしい遊びを考え出したんだ 小六のこいつらは?
「でもそれ、混乱しない?」
徹君の最もな質問に、俺は同意をこめて頷いて見せた。すると明美がこともなげに頷いた。
「さいしょは大変だったわよ、でも時間制限をつけたらそんな大変でもなくなってね、普通に喋ってて反対のリアクションしちゃって爆笑したりしたんだ、逆に」
「器用なんだか不器用なんだか……」
俺のあきれた溜息に、徹君も「そうね」と楽しげに笑う。
「でも、初めてだったわ ジャッカーズ発動中のわたしたちを、そうやってずっと見てたの」
「それも変人視線じゃなくしっかり見てた人」
空の補足に、俺は唸り徹君も同じく唸る。
「なんというか……」
「お前らの言ってることを噛み砕いてる間に時間が経った、って感じだな」
「なるほど、そうなんだ」
パッと明るい表情になる明美、なんか いやな予感が……。
「貴方達もやらない?」
「なにを?」
「アマノジャッカーズ」
「「えっ?」」
にこりと言うより、にやりに見える明美の笑顔から出て来た、つい考えてしまった転回……リアルになる必用はなかろうが……。
「おねがいっ」
媚びるような顔って、こういうのをいうんだろうか? 上目使いで見上げてくる明美。まあ並よりは可愛いのでいやな気分ではないんだが。
「なにゆえだ?」
「わたしたち……友達ほしくてね」
溜息交じりの空、いや それは自業自得だと思うのだが?
「ならやめればいいんじゃないのか? そのアマノジャッカーズとやらを」
「でも楽しいのよねぇ これ」
と空は左手で頭を掻いている、やっぱし自業自得じゃないのかそれは?
「3分だけだから、ね 一日3分」
明美の懇願するような表情、んな必死な顔で頼むなよ……困るだろ。
「んなこと言われてもだな、俺そんなのやっても、すぐにギブだぞ」
「悪いんだけど、わたしもちょっと……」
露骨に涙を浮かべる二人の少女、いや それ ずるくね?
「ええっと……」
「考えさせて」
せいいっぱいと思われる徹君の台詞が、俺の思考台詞の後を補足。
「って おい徹君、そいつはやばいぜ」
「え? なにが?」
「うん! わかった」
明美が、ものっすごい笑顔で返事した……ほらみろ。
「ううむ……んじゃそーゆーことで」
俺は答えをそうやって誤魔化すと、帰り支度をして席を立つ。それに合わせて他の三人も立ち上がる。
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