| 体育室〜タザワクンノレポ〜 |
| FoodBattleClub〜King of Masters〜 |
| 第零章〜RUN!〜 | |||
都内某所、その時僕はひたすら走っていた。 ・・・遅刻だぁ!! 前日、一睡もせずに夜を過ごしていた筈なのに、何だかんだで30分の遅刻。 テレビは予定時間に始まる事なんてまず有り得ないんだけど、それでも本当に申し訳ないっす・・・。 控え室ではお馴染みのFF達がぞろり。 「おぉ〜田澤ぁ〜。・・・お前来ないかと思ったで」 とiGUCC@さんに言われ、ただただ恐縮するばかりの僕でした。 選手はみんな、戦いの前に健康チェックを受けるんだけど、その時の僕の血圧が144/80・・・。 高っっ!!! ずっと走ってたからね・・・。 というかそんな状態で血圧を計る僕って・・・。 で、間もなく衣装さんがブレザーを持って登場。 『選手の方はこれを着てくださ〜い!』 そしてブレザーを着込んでいくFF達・・・。 白田さんに合うブレザーがあるのはまだ分かるけど、キングコングバンディーのまであるとわ・・・。 逆に小林さんや山本さん、射手矢や立石さんはミョ〜に似合う・・・。 本当に、どっかの高校の修学旅行みたい。 あ、マイケルだ。ボウズになってる・・・。 あれ? 右手に包帯が・・・。 どうしたんだろう? 立石さんに聞くと、 「何か、スケボーで転んで骨折したらしいよ」 ・・・あらららら・・・何やってんの・・・。 早食い勝負なのに、大丈夫かな。 ・・・そして、FF達は1Rの抽選会場へ向かうのでした・・・。 収録スタジオで番号順に並べられ、椅子に座らされる僕ら。 基本的に、(FBCの)チャンピオン、成績優秀者、各地方のタイトルホルダー、そして海外招待選手・・・ という順番なんだけど・・・、僕は24番中16番・・・。 めそり。 まあ、いいや。これから頑張ればいいんだから。 1Rの抽選は番号順にくじをひいていくんだけど・・・。 頼む! 小林さん、白田さん、射手矢、山本さんetc・・・には当たらないでくれぇ・・・。 そんなこんなでいよいよ本番。 しかし、この時僕は気がついてなかったんだ・・・。 抽選BOXで眠る、『FBCの魔物』の存在に。 山形さんの抽選の時、そいつは覚醒した。 ・・・白田さんとの対決。 確かに面白そうだけど、だけど、だけど・・・。 その他にも、射手矢VS小国さん、小林さんVS赤坂さんなど、見所たくさん。 そんな僕は駿河さんと対決。 む〜・・・わからんなぁ・・・。 駿河さん・・・速いのかなぁ・・・情報がないっす。 まぁ、僕は自分の力を全力で出すだけだけどね♪ |
| 第一章〜それぞれの戦い〜 | ||||
|
||||
| 第二章〜Wait&See〜 |
| 数時間の休憩の後、 勝ち進んだ12人は1Fのスタジオに向かった。 1つのテーブルを円形に取り囲む12個の椅子。 椅子の前には電動で開くゲート。 横にはメモ帳、電卓、ボールペン・・・。 頭上にはメニューと制限時間、1個(1杯、1本、1切れ)あたりの重量を知らせるモニター。 遥か高い所には僕らを見下ろすオークショニア・・・。 ほとんど前回と同じ。 照明やカメラなど、相違点はけっこうあるんだけど。 前回――初めてのHangOverで、僕は大チョンボをやらかした。 『天むす20分』・・・僕がコールした「100個!」・・・それで僕のFBC2は終わった。 このレギュレーションは、新人君には過酷すぎるものだったんだ。 何もしないで黙っていれば、トップの選手がさっさと抜けていってしまってそのまま負け落ちてしまう。 予選下位の新人FFはそう考え・・・自滅が連続して起った。 僕もその一人。 ・・・と言っても、僕は『競り合いの数値を吊り上げよう』としてコールしただけなんだけど。 本当、食べるつもりはなかったの。 それが・・・ねぇ。 今回はその教訓を活かし、ひたすら『退き』の姿勢で臨む事に大決定。 自滅は、絶対にしない。 正直、某Kさんに『タザワ、自滅したら坊主だぞ〜』と脅されてたくらいで。 僕達は椅子に座りどんなメニューが登場するか、 そして自分ならどれだけ食べられるか、どうやって食べるか――を頭の中で反芻していた。 僕が予想していたのは、 ・冷たいモノ(かき氷、アイスクリーム、ソフトクリーム) ・お好み焼き ・ピザ ・果物(バナナ、リンゴ、いちご) えとせとら。 さてさて。 ゲスト陣のトークも終わり、いよいよ本番! 緊張感はマキシマムです・・・。 最初はかっぱ巻き、10分。 ・・・微妙だ〜〜〜! 何でかっぱ・・・せめて鉄火かかんぴょうにしようぜ。 一応、コールはしたけど、すぐ退いた。 だって山本さんには勝てないもん!(←やめろって) 山本さん・・・海苔巻まで飲みますか。 放送では短かったけど、本当に凄い! 感動した!(←またベタな・・・) 最後は一気に2本喰いを、魅せる。 さて、次は・・・コーヒー牛乳、5分。 出た、飲み物系! これは是非、山本さんにやってほしかったなり・・・。 で、競り落としたのが小林サン。 25本。 ・・・まじっすか? で、結果2分11秒で完飲。 ・・・はぁ(ただ、ひたすら溜め息)。 僕は何でここに座ってるんだろう・・・。 迷宮(ラビリンス)に迷い、自分の居場所が分からなくなるタザワでした。 そしてお次は、冷やし中華、10分。 おぅ、僕の好きな麺類だ♪ これは攻めるぞ! でも結果は立石さんの8杯。 う〜ん、どうするか・・・。 この時、本当は『9杯!』って言ったろうかとも思ったんだけど、無理だよね・・・、10分だし。 で、立石さん。 すごい勢いで麺をかっ込むのですが、その時、気がつかなかったのですか? あなたの横で刀を振り上げる魔物の存在に。 順調に食べ進む立石さん・・・が、 突然胸を激しく叩き、頭を抱えてしまう。 「あぁ!立石さん死んじゃう!立石さん死んじゃう!!!」 彼は手にした匕首を自らの腹にズブズブと突き立てていく、 横に立つ介錯人は刀を下ろす時期(タイミング)をはかっている・・・。 しかし、立石さんは危うい所で匕首を投げ出したのです!。 立石さんは残った僅かな具を口に押し込み、・・・そのまま頭を抱えて動かなくなった・・・。 彼はドクターに支えられて退場していく・・・。 大丈夫なのか・・・。 彼の病状も気がかりだったけど、僕らは戦い続けなければいけない・・・。 今度こそ競り落とす!と決意を固めるタザワ。 次のメニューは・・・パンケーキ、20分。 ・・・タザワの決意、崩壊。 『あーた、ワタクシ甘味大食いは苦手だって言ってるじゃないですか!』(←デビ夫人口調で) それに、ケーキ巨人、白田さんも残っている事だし。 ここは彼にまかせませう。 知ってますか? 彼の体の12%は生クリームでできているのですよ。 バファリンの半分が優しさでできている様に。 みんなもそう考えたのか、すぐに白田さんに決定。 モグモグモグモグモグ・・・。 気がついたら、皿の上のケーキはなくなっておりました。 流石ですわ。私が見初めただけの事はあります(←だからお前誰なんだよ!)。 さぁ〜、2人のチャンプが抜けた事だし、そろそろ、『攻め』の姿勢に移らなければ・・・。 さてさて、次は玉子焼き、5分。 実際に見ると一切れがけっこう大きいし、何より食べ辛そうだ・・・。 美味しそうだけどね♪ これはみんな狙って来てたものの、新井さんが29切れで競り落とし。 ・・・むー。 5分で29切れデスカ。 いくら新井和響といえども、これはヤバイのでは!? ・・・何ていう完全な杞憂でしたわ。 嘴でついばむ様に、パクパクと食べあげていく新井さん。 早いです。 難なくCleared。 ベテランの意地を見せつけましたネ・・・。 ・・・そろそろ、本気で焦らないとやばいかも。 ここまで5人、5連勝。失敗は1つもナシ。 さすが、ここに残った12人は強豪揃い。 FBCの魔物も山形さん、赤坂さん、射手矢、立石さん(未遂だけど)と獲物を得て満足したのか、 最近は姿を見せず。 僕はこのまま終わってしまうのだろうか・・・。 次の食材は、ウィンナー、10分。 ウィンナーか・・・。卵焼きに輪をかけて食べ辛い食材ですな。 この時はかなり攻めていったものの、 マイケルや小国さん、加藤さんは僕が想定していたよりも上の数値で競り合っていく・・・。 とにかく、無理なコールをして自滅するのだけは避けたい。 それだけは、絶対に。 そう判断した僕は仕方なく退く事に。 そして、競り落としたのは手負いのマイケル。 10分で80本・・・。 右手が自由なら、この数字でもいけたかもしれない。 ただ・・・あの身体では・・・。 更に、今回は基本的に寿司以外『手掴み禁止』。 つまり、マイケルに残された道は・・・ A.使いづらいのを我慢して、左手でフォークを使う。 B.痛みを我慢して、右手で箸を使う。 C.痛みを我慢して、右手でフォークを使う。 D.犬喰いをする の4つ。 マイケルは最初、Aでいったものの、途中BになったりCになったり・・・。 ただでさえ食べ辛いのに、これでは・・・。 正直、今回は失敗すると思ってた。 彼の背後で、魔物がニヤニヤ笑ってるのが見えたのは僕だけではない筈。 でも、高橋信也は正真正銘、奇跡を起こす男だったんです。 ・・・14秒を残して80本完食。 前回の餃子と同じく、収録現場はスタンディングオーベーション。 あんた、やっぱり凄えよ・・・。 興奮冷めやらぬ中、次の食材が発表された。 いちご、5分。 僕の読み通り・・・しかし、いちごとはね・・・。 マイケルが勝ち抜け、残る座席は2つ。 壮絶な椅子とりゲームの開幕。 ・・・しかし、競り落としたのは小国敬史、146個。 僕の最初の感想――「ありえない」。 5分で、146個・・・1個20gだから、総重量は3s近くだ。 実際、競り合いが100個を越えた時点でまたしても僕は退いていた。 『お前、退いてばっかりじゃねえかよ!』と揶揄されそうだが、 これは仕方がない事で・・・。 慎重に慎重を重ね、鉄筋の橋をすら叩くくらいの心積もりでないと、 このレギュレーションに勝つ事はできない。 しかし、それは選手全員同じ事。 存在するのは絶対的な『力』の差のみ。 そして、 小国敬史という男は、 ボクタチにその『力』を見せ付けたのです・・・。 4分30秒で、完食・・・。 その結果に残りの選手は驚愕し、ただただ、 打ちのめされた・・・。 12人のフードファイターを乗せた、沈みゆく豪華客船。 しかし、救助ボートは人数分用意されていなかった・・・。 数少ないボートに次々と乗り込んでいくファイター達。 残されたのは一人用のボートのみ。 ここでボートに乗り込まねば、僕らは大海の藻屑に帰するのみ。 次で、決まる。 いや・・・決める。 チャーハン、20分。 来たぁぁぁぁ!!! 僕は人知れずガッツポーズを決めていた。 僕の好きな(得意な)ご飯系だ! 神楽坂飯店の1升チャーハンなら11分で食べた事がある。 そこで僕の設定したセーフティラインは・・・10杯。 重量にすれば3キロだ。 僕の胃の容量、水の重量、20分という時間、この三点を考慮すれば妥当なセンだろう。 勿論、吊り上れば・・・かなりの冒険も辞さない覚悟だ。 オークション開始。 予想通り僕と加藤さんとの戦いで、すぐに10杯に到達。 僕は当然の如く「11」とコール。 しかし、しばしの逡巡の後、加藤さんは「12」とコールしたのだ。 ここで僕が13以上をコールしなければ、ここで加藤さんに決まってしまう。 13杯・・・約4キロか・・・。 20分で4キロのチャーハンなんて食べれるものなんだろうか固形物の僕の容量などたかだか3キロ がいいところだ水の分も考えればそれ以上の重量だ1時間もかければ食べられるかも分からないがい ややっぱり無理だろう天むすの時だってそうだったじゃないか加藤さんはどうなんだろうこれだけの 量のチャーハンを食べる事ができるのか彼だって無理なんじゃないかいや立石さんや小国さんの例も あるもう余裕はないんだ加藤さんが完食すればもう終わりなんだもう終わりなんだもう終わりなんだ (この間、約0,5秒) その時、僕は自らが仕掛けた『もう終わりなんだ』という呪(しゅ)にかけられていた。 直前に、小国さんが絶対無理だと思われていたチャレンジを成功させたという事実。 過去2回、セミファイナルまで進んだ加藤さんの実績。 椅子がもう一つしか残されていないという現実。 ・・・僕は、自分でも気がつかないうちに「13」とコールしていた。 「田澤選手、13・・・他にはありませんか」 オークショニアの声が響く。 永遠とも思える時が流れ、場を沈黙が支配した。 加藤さん頼む!僕にチャーハンを食べさせてくれ・・・! 「14」 ゆっくりと手をあげ、加藤さんがコールした。 いつ終わるのかもしれぬチキンレース。 壁の目の前、ギリギリ数センチのところで僕はブレーキを踏んだ。 そして・・・ブレーキを踏まなかった加藤さんは、 そのまま壁に衝突した。 僕の見た限り、加藤さんはちょっと水を飲みすぎに思えた。 これは後で聞いた話だけど、あのチャーハンは相当油っこかったらしく、 普通のそれを食べるより多くの水を必要としてしまったらしい・・・。 取りあえず、3rdへの椅子は確保されたままだ。 加藤さんには悪いが、僕はほっと肩を撫で下ろしていた。 と、椅子の横に来て僕に話し掛ける人物がいた。 小林さんだ。 小林サン「田澤、大丈夫か?」 タザワ「ええ・・・まあ」 小林サン「お前、13杯でいけると思ったの?」 タザワ「いやぁ・・・10杯がセーフティだと思ってたんで」 小林サン「・・・自滅だけはするなよ」 これだけのやり取りなんだけど、 小林さんに声をかけてもらってすっっっっごい励まされた。 絶対に、通過する。 次は、生春巻き、5分。 ・・・思わず口を出た言葉が、 「なんだそりゃ!?」 勿論、名前くらいは聞いた事がある。有名なベトナム料理だ。 ただ・・・この20年間、食べた事は一度もない。 完全な、未知なる食材。 ただ、何となく食べ辛そうではある。 そして、当然のことながら、 オークションは僕と柿沼さんの競り合いとなった。 結果、27個で柿沼さんが競り落とした。 この時も僕は僕なりの計算をめぐらせていた。 前述した様に、この生春巻きという代物はおよそ早食い向きとは思えないし、 何より柿沼さん自体が早食い選手ではない、と僕は思っている。 そしてこの、27個――約2キロという重量。 この成功はないだろう・・・。 そして結果はその通りになった。 1個目からして、柿沼さんはすごく食べ辛そうだったし、 何より、本人が「モサモサしてて全然飲み込めない」と明言している。 この食材はスタッフが仕掛けたトラバサミだった様だ。 引っ掛からなくてよかった・・・。 周りを見渡すと、僕の他に残っているのは武田のおかんとバンディー、そして僕。 二人には失礼だが、競り合いで負ける相手じゃない。 また失敗者が出るか、僕が成功するかの2択だ。 さて、次に来るのはなんだろう? アシスタントが蓋を外した時、そこにあったのは・・・。 チーズケーキ、10分。 うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!! 何でこんな時に限って甘味なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!! 僕は臍を噛み、天を仰いだ。 1個辺りの重量が70gだから、重さだけで考えれば40個くらいは食べられるだろう。 しかし、いかんせん相手はケーキなのだ。 体の1割が生クリームでできている白田さんとは違う。 コチトラ体の7割がビールでできてるんでぇ。 十数個食べた所で吐き気を催してしまうだろう。 くそ、これがチャーハンなら・・・。 武田のおかん&バンディーは冒険する事なく、 順当に僕が競り落とした。 20個だ。 はっきり言ってこの時、僕は成功を確信した。 いくら甘いものが苦手といっても、20個くらい訳ない。 スタートと同時に、チーズケーキをフォークで両断し、 その半分を口に放り込む。 思ったよりもケーキが崩れやすくて閉口したけど、 全部食べ終わるまでに制限時間の半分も用さなかった。 4分36秒・・・これなら、気合を入れれば倍くらいいけたかもしれない。 とはいえ、やはり甘味大食いはこれからの課題だな・・・。 ともかく、こうして長かった2ndステージは幕を下ろした。 BATTLE NO.05 加藤昌浩 BATTLE NO.12 柿沼敦夫 BATTLE NO.13 武田昌子 BATTLE NO.23 キングコング・バンディ 脱落 【残り8人】 |
| 第3章〜魔物の住処〜 |
| 過酷な初日を終え、僕たちはホテルに帰った後ベッドに倒れこんでそのまま動かなくなった。 気がついたのは二日目の昼前。 スタジオに辿り着いた僕たちが見たのは敗者復活で勝ち上がった山形さんと柿沼さんの姿だった。 射手矢は勝ち上がる事ができなかった・・・その事実に、僕は言葉もなかった。 ・・・でも、勝負は、勝負。 何とも言えない感情を胸に、僕たちは3Rに向かったのだった。 僕たちが薄暗いスタジオに辿り着いた時、そこには新たなる戦場が浮かび上がっていた。 立体的に組まれた黒金の城。 その金属的な佇まいは、この番組自体の雰囲気を象徴している様であった。 レギュレーションは、シンプルと言えばシンプル。複雑と言えば複雑。 総重量4キロの食材――ラーメン、餃子、ウーロン茶、寿司――を、如何に速く食べるか。 その総タイムを競うのだ。 正直、僕はレギュレーションブックを貰った時からこのラウンドが一番楽しみであった。 そのために何とかして2Rを勝ち進んだ様なものなのだ。 少し話が逸れるが、ここで僕の『早食い』観を述べたいと思う。 某番組で銘打たれている『早食い選手権』だが、僕はこれは短時間の大喰いだと受け止めている。 それも10分以上の制限時間の闘いならなおさらだ。 今、トップ選手の大食いスピードは目まぐるしいものがある。 30分でも1時間でも、それを食べる速さは尋常ならざるものだ。 純粋に『速さ』を競うのなら、やはりタイムトライアルが理想の形だと、僕は考える。 それに要求されるもの・・・咀嚼力、嚥下力はもちろんの事、 熱さに対する根性、ゼロコンマを争う集中力、 そして、やはり勝負に――そして自分に――負けまいとする闘争心だ。 それを限りなく具現化できるレギュレーションだ、と期待してこの闘いに向かった。 僕の儚い、そして傲慢な想いが粉々に打ち砕かれるとも知らずに。 これは2Rと同じく、一人づつ闘いが展開される。 金属の『檻』の中での、孤独な勝負。 順番はスタッフによってアトランダムに選ばれる。 ただ、1番手は2Rで最初に抜けた山本さんで、 最後の9番手、10番手は敗者復活の山形さん、柿沼さんと言うのは初めから決まっていた。 できれば最後の方になりたいな・・・。 後の順番になれば、前に人間のやり方を見て色々と勉強できる・・・そう思ったのだ。 しかし、そんな僕に与えられた番号は、2番。 山本さんの次だ。 今思えば、これがケチのつきはじめだった・・・と思う。 僕たち出場選手はスタジオ隅のモニターの前で、 山本さんの快進撃を嘆息と共に見つめていた。 ・・・やっぱり凄い。凄いや。速すぎる。 特にあのペットボトルは・・・職人だね。 僕は高まる胸を押さえつけ、自分の出番を待った。 気がつくと、僕は『檻』の前に立っていた。 水しぶきが背中にあたって冷たい。 この時になって僕は初めて、自分のキャッチコピーが『未知なる野人』だと知った。 『未知なる』は分かるとして、『野人』ってどうなんだろう? サッカーの岡野ぢゃないんだから。 上昇する台に乗って、僕はこれから自分のする事を反芻していた。 ラーメンを、速く食べる。 活字にすればこれだけの行為なのに、どれだけ奥深い事か。 ラーメンは茹で立て。 とてもではないがそのまま口に頬張れる代物ではない。 麺だけならまだしもスープまで。 普通の人が(僕だって普通の人間だけど)食べるにはどうやっても5分以上かかるだろう。1杯でも。 それを2杯で1分くらいで食べろと言うのだから・・・。 僕は2杯のドンブリの前で、気合を入れた。 箸を手に、右の拳で『フードイン』のボタンを殴りつけた! 麺の塊を引き上げ、空気に触れさせ、冷やす。 それを口に押し込み、水で口内を冷やす作業と嚥下する作業を同時にこなす。 そして、熱湯か、と思わせる程のスープを喉に流し込む。 んぐ、んぐ、んぐ、んぐ・・・。 それを2回繰り返し、『フードアウト』を報せるボタンを殴った。 タイムは山本さんのそれには遠く及ばないものの、僕としてはまずまずの結果だ。 大して間を置かず、僕は2番目、『餃子』ゾーンのゲートを通った。 箸を取る手ももどかしく、僕は皿の上の餃子を勢いよく頬張っていった。 さすがに飲み込みやすい寿司や麺類とは違い、完全なる固形物である餃子は強敵だ。 しかし、やはり『飲み込む』という行為に代わりはない。 もうすぐゴールゲート、という所に来て・・・。 「おぉ〜と!旗が上がりました!!!」 しかし、その時には僕はもう全ての餃子を食べ終えていた。 後ろを見ると、赤旗を上げた審判員。 そして床に落ちた1個の餃子・・・。 「餃子が床に落ちたので、田澤選手はBゾーンの最初から、やり直しになります!」 えっ!なに言ってんだ・・・? 瞬間、僕は理解できなかった。 ゲートを出た所で、そのまま固まっていたのだ。 しかし、このラウンドのレギュレーションでは、 1個でも、床に食材を落とした場合、選手はそのゾーンからやり直し、だと言う。 僕はそんな事はその場で初めて聞いた。 レギュレーションブックにも一言も記載されてなかった・・・。 早食いをする上で、胃の中にものが入っていた場合そのスピードは格段に落ちる。 食材を等差級数的に食べた所で、スピードは等比級数的に遅くなる訳だ。 特に、胃袋にキャパシティのない下位選手にはそれが著しい。 (逆に言えばトップの選手は多少量が増えた所で痛くも痒くもない、という事だが) 能力的に、上位6人に入れるかどうか、と崖っぷちに立たされていた僕は、 見事に谷底に突き落とされた、という構図だ。 僕はBゾーンのゲートの前で、 漆黒の無限回廊を落下していく幻を見ていた。 僕如きがセミファイナルに進もうなどと、 なんて大それた事を夢見てしまったんだろう・・・。 ここまで来れたのだって半分以上運がよかった、というだけなのに。 『タイトロープの上の道化師』 それが僕にぴったりのキャッチコピーだ・・・。 その後、餃子はできる限り早く食べたが、 やはり1回目と比べるとひどく遅いタイムが弾き出された。 畜生・・・。 その次のペットボトルについては、大して支障はなかった。 おそらく空腹状態でも、あのタイムだっただろう。 しかし・・・。 Dゾーンのゲートの前で、僕は椅子に座ったまま目の前が真っ暗になっていた。 腹は醜く膨れ、とても寿司の飲み込める様な状況ではない。 椅子に沈み込んで、このまま昇華してしまいたい・・・とまで思った。 後で知り合いの人に聞くと、僕はこの時、 『絶望的な顔をしてて、自殺する直前みたい』と評された。 案の定、寿司のタイムは絶望的だった。 あの1個の餃子を落とさなければ、絶対にあと1分は早く食べられた筈だ・・・。 後になってうだうだ言う程見苦しいものはないから、ここでやめておこう。 心が落ち着いてからは、他の選手の応援に専念する事にした。 モニター席に着いた僕に他のFFのみんなは 「厳しいね〜」と憐憫の表情を見せてくれた。 その後の闘いは、放送の通り。 僕はそのスキルの高さに驚愕し、興奮したものだ。 そして、僕はある事に気がついた。 僕が負け落ちたのは能力の低さも勿論あるが、 それ以上に僕の精神力の弱さがネックだったのだ。 僕は、僕に負けた。 『魔物』は僕自身だったんだ・・・。 BATTLE NO.4 立石将弘 BATTLE NO.11 柿沼敦夫 BATTLE NO.14 小国敬史 BATTLE NO.16 田澤康一 脱落 【残り6人】 |
| 第4章〜六人の侍〜 |
| セミファイナルの会場に現れた、タキシードに身を包んだ6人の選手。 大食いの魔人、 早食いの軍人、 ペットボトルの職人、 早食いの先人、 早食いの闘人、 大食い・早食いの天才・・・。 彼らの闘う姿に僕は『侍』を見た。 世間の人たちは彼らを『もののけ』と見るだろうが、違う。 彼らは『もののふ』なのだ。 強い闘争心と精神力を備えた、侍。 僕は尊敬の念を感じずにはいられなかった・・・。 では、ここらでちょっとした裏話でも。 ・山本さんと新井さんの対決時、 2回目に山本さんが選択権を獲得した時、「寿司で・・・」と 敢えて自分の苦手なものを選択したのは放送の通り。 そこで、彼のマネージャー、iGUCCiさんがぽつりと 「そういう奴や・・・」と呟いた。 僕はこの時、山本さんに『漢(おとこ)』を見た。 ・3回戦、小林さんとマイケルの闘いの時・・・。 1回目のステーキ対決の後の待ち時間で、セットの裏から人影が・・・。 立石さんだ。 手にシュウマイをたくさん乗せた皿を持っている。 FBCの収録では、多くのFFがやる事だ。 この番組ではいい店の料理を使っているため、よく収録が終わったあとで失敬してくるのだ。 まわりにいた選手以外の人たちは次々と手を出し、シュウマイを堪能した。 「・・・でも、次の対決でシュウマイが選ばれて、足りなくなったらどうします?」 「大丈夫だよ〜」 でも、対決で選ばれた食材はシュウマイ。 みんなの視線が立石さんに集まった。 「・・・みんな、お腹すいたねぇ〜」 すっとぼけかい!! 立石さん、かあいいな・・・(←失礼)。 そんなこんなでセミファイナル終了。 6人のファイトに目から鱗、落ちっぱなし。 ホントに、勉強になります・・・。 BATTLE NO.10 山形統 BATTLE NO.8 新井和響 BATTLE NO.3 高橋信也 脱落 【残り3人】 |
| 第5章〜そして伝説へ・・・〜 |
| 東京ビックサイトで行われたファイナル。 出された食材は、10キロのカレーライス。 こんなもの、たとえトップ選手でも、相当の時間を要するだろう。 それを、白田さんは20分かからずに・・・。 やっぱり、彼は『もののけ』なのかもしれない・・・。 そして、全ては幕を下ろした・・・。 BATTLE NO.1 白田信幸 優勝 |
|
|||
|
|