20029月西双版納景洪旅行記 3

 

打洛の町を通り抜け中緬国境の南覧河に架かる橋まで進むと、眼前にあの大金塔が建っている。景洪のホテルの英語を話すフロントもタクシーの司機も言っていたように、外国人は中国側の検問所を越えられないが、中国人はヴィザもパスポートもなしに(身分証の提示?)モンラーに出入りできる事がわかった。

 

   

モンラー大金塔                                              南覧河橋                                          中緬国境

 

打洛の町に戻り昼食。タクシーの司機の言うとおり美味い物は無い。客のいない食堂の調理場に招かれると、野菜が数種類有り炒めれば良さそう。肉類は干し肉を煮込んだようなものの方が、冷凍の鶏・豚よりましか。ふと見ると納豆と味噌の間のようなものがある、つまむと辛味と塩味があって悪くない。空芯菜と白菜をそれぞれ炒めたものに、干し肉煮込み炒め風、納豆味噌に白飯で食べたが、納豆が一番美味かった。

 

   

打洛の町                                          打洛午餐

 

泰国製品(タイ王国からの輸入品)の看板を出した商店を覗くと、景洪にはなかった外国煙草マルボロライトが、しかもタイ王国にも無いフリップトップの箱型で並んでいる。値段は1060元で、これは安い。今や香港の免税店でHK$110だから深圳国境でHK$90ぐらいとしても90元、早速買ってみると出てきたのはインドネシア5000ルピーの証紙が張られたもので、味は不味いやつ。なんでインドネシア国内流通用の商品がここにと思ったが、考えればインドネシア5000ルピーなら約60円、6元(約90円)で売って充分儲かるのである。それとも、インドネシア流通用を闇で流すルートがあるのか。何しろミャンマー領内の軍閥自治区モンラーの周りであるから、何があっても不思議ではないが。

 

同じ道を戻るが、先ほどスピーカーが聞こえた村に近づくにつれ、ちょっと綺麗な格好をした人々が村に向かっている気配。何かあると、孟板というその村で車を止め、歩き回る。タイ・ルー様式の立派な家並みの奥から拡声器の声が聞こえ、よそ行きの服と見える人影が有り、村全体にハレのムードが確かにある。しかしその中心がわからない。人の流れが様々で、ちょっと綺麗な衣装の後を追うと、家の中に消えてしまい、どうやら何処かからの帰りだったらしい。これは何処かにお寺が在るはずだと探すのだが見当たらない。諦めて、景洪に向かって一気に走る。

 

   

孟板                                                 孟板                                                 孟板

 

   

孟板                                                 孟板                                                 孟板

 

   

孟板                                                                             孟板

 

夕刻5時頃帰着。中国の道を一日走ると、頭の先から靴の中まですっかり埃だらけになった気分で、シャワーを浴びる。

 

景洪市街図

 

夕暮れの市街を歩く。まずホテルのひとブロック先を走る景洪南路を北に向かう。この辺り、いかにも新市街で酒店(ホテル)や商場(大型店舗)とした建物が多い。通りに面して並ぶ小商店には、ビルマ人が多く、翡翠や紅玉を売る店。景洪南路が東西路と交差し景洪北路になる交差点が即ち中心ということか。特に目立った建物とかは無く、単なる中国の地方都市の街角。脇の細い通りに季節物の月餅を売る屋台が並んでいるが、どうも美味そうには見えない。高級感のある詰め合わせにはワインか、チベットのポタラ宮が画かれた強そうな酒がセットされている。香港製の月餅は無し。

景洪北路になる東北角に小さな池があって孔雀湖と名がつき、新聞の掲示板と運命鑑定師が並ぶ。ここから少しひと昔前の中国の雰囲気が漂う。建物も60年代には建てられていた様子で、所々奥の居住区に入る門柱に共産党景洪市**委員会とかの看板が挙がって開放路線以前の中国の残り香がある。

次の横道の入口に門が建ち、民族工藝品市場とある。観光客用の土産物屋街だが、ここでも緬甸人と翡翠紅玉がほとんど。若干の山地民グッズ。

抜けると嘎蘭中路で、向かいに老舗の西双版納賓館、こちら側に景洪市政府の建物。開放路線の初めにはこのあたりが外国人客の泊まる地域だったのだろう。版納賓館の敷地は広く、右手にドミトリーらしき建物、左手と正面奥は高級そうな客室棟が中庭を囲んで建ち、奥の棟に泊まれば窓から瀾滄江と西双版納大橋が眺められる造り。

今度は南に歩き景洪東路を渡ると嘎蘭南路になり、町に活気がある。向かいには西双版納州医院(病院)で、州衛生学校や防疫站なども。通りに並ぶ小吃店のひとつに入る。表に並べた惣菜は泰族風で、瓜のスープ、豚肉の甘煮風、大蒜と赤唐辛子を使った野菜炒めに白飯を注文、値段は4元5角。顔は泰族なのにみんな普通話を話している。

 

次の交差点の附近で、英語の看板を挙げたカフェとその隣にトレッキングの案内所を発見。案内所の奥では眼鏡をかけた年のころなら234歳、品の良さそうな青年がひとりでパソコンに向かっている。声をかけ、ちょっと質問していいかと入り込む。

まず、「この町に旧市街やツァオペンディン(シプソンパンナーの泰族首長)の宮殿とかは残っていないのか?」尋ねると、あっさり「何も無い」。それでも、こちらが物足りなさそうな顔をすると、「まあ、曼听公園というのはツァオペンディンの庭園だったところで、この町にはその子孫がいるけど」と続ける。彼の英語の音は、留学ではなく中国国内で学習したようである。何族か訊くと、父は漢族、母は泰族という。この地域「シプソンパンナー」の歴史を知っているか尋ねると、「昔は国で、王がいた。大きな変化は1949年」との返事。中華人民共和国の成立を言っているのだが、実際のところ雲南省の国民党残党を逐ってここに人民解放軍が入ったのは1950年以降のはず。

少し微妙な質問だが「昔は国だったと言うのに、今では泰族の若い世代は普通話ばかり話すし、この町はもう中国人の町みたいだが」と話を向けると、「うーん、まあ中国でいいか、と思ってる」。

彼が「日本人と基諾族は似ているところがある。前に日本からの旅行者を基諾族の村に案内したら、同じような単語もあって直ぐに基諾語を話せた」と言うから、「たぶん基諾族はチベット・ビルマ語族で、それなら文法が日本語に近いから簡単だろう。水稲耕作と食材という面で言えば、泰族とも似ているし、昔は長江流域で隣に棲んでいたかも。まあしかし、もう500年もしたら、日本も中国内の一少数民族かも知れない。漢の時代から漢族が日本人を呼ぶ族名も有るし」と話すと、「それは何だ」と訊く。「倭」だと教えると、「それは良い呼び名ではない」と蔑称のように言う。「だから中国の考えと言うのはいつも中華思想で、周辺は蛮族。しかも、中国世界は常に周辺を取り込んで拡大する」。

 

「ところで、ここからタイ王国のチェンマイに行くメインルートの途中に、チェントゥンという町が在るだろう?」

「えっ、それはどこですか?」

「ここから西に、打洛の中緬国境にモンラーという新しい町があって、それを越えてシャン州の」

「シャン?ああ、それは墠邦(サンバン)の景棟(ヂントン)のことですね。それに中緬国境の町は小孟拉(シャウモンラ)です、別に孟拉という町があるので」

「その小孟拉の首領の林明賢というのは、元は雲南の紅衛兵だと聞いたけど」

「林明賢?緬甸には三つの軍がいると聞いてます」

「それは?」

「墠軍とワ軍と緬軍」

「ビルマには、他にカレン軍とかいるけど」

「知りません。ああ、その林明賢という人はビジネスマンですよ」

「じゃあ、景棟の歴史とか伝説とか知ってる?」

「全然」

「ところでここでコーヒー飲めないの?」

「それは隣です」

 

隣のカフェには、英語のペーパーバックスを読んでいる角刈りの中国人小姐が居る。エスプレッソが有るか尋ねると、出来るとの返事。出てきたエスプレッソは濃い目の普通のコーヒー。値段は6元だった。さっきの晩飯が4元半だから、かなり高級な飲み物だったのか。

 

 

 

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