タイ・ビルマ(現ミャンマー)国境地帯を行く II チェンラーイ県 3

 

 暗くなった道をメーチャンに向かい、国道110号に出てメーサイまで走る。メーサイの町中、国道が行き着く国境ゲートの脇のホテルに一泊。夜中、路上には屋台が並ぶが、そう珍しいものはない。白い米麺や濃い茶色の乾し豆腐、カオラーム(竹筒飯)など、シャン州にも北タイにもある。八ヶ月前、チェントゥンから陸路をこのメーサイまで走ったが、途中のモン・パヤッあたりからこちら側は北タイの風景と変わらない印象だった。もともと人が住んでいたところに国境という明確な線が引かれたのは、100年ほど前のことだ。それで、向こう側は大英帝国の領土だったのだが、1935年頃ここを通った日本人の記録を見ると、「国境線を示すべき標識もなければ、旗のやうなものが立てられてゐる譯でもない」(原文のまま)。「メツサイ河に架した、堅固な鐵骨コンクリート橋」を渡った「タキーレクは・・・十数軒の小村落であるが、・・・印度人官吏が一名駐在してゐる。税関といつても名ばかりのもので、華僑や印度商人等からの収賄で小さな腹を肥してゐるに過ぎない」そうである。

 

       

メーサイ国境の橋、タイ側ゲート                                              メーサイから見るターキレクの町並み

 

 ちなみに当時、バンコクからここまでどうやって来たかというと、週二便あるチェンマイ行き急行を利用して17時間でランパーン駅着、国境まで「自動車を雇用すれば六十バーツ位吹き掛けられる」そうで、定期的に運行するバスがお薦めとしてある。「ペトロールはビルマ北部地方より安い」とあるから、今でも変わっていない。道路は「寔に立派な舗装路であり、自動車は如何なる快速力も欲する儘」だそうで、「本路線の各橋梁は建造が頗る頑丈で、その幅員の如きも寧ろ路面より廣い位である」から、これも現在のパホンヨーティン道、国道110号線と同じである。

 それに比して、ターキレクからチェントゥンを経てサルウィン河に至る242マイルは決して良好な道路とは言えないものの、「全行程頗る風光明媚の一帯で、特に十二月より一月の交は全山紅葉に映え、これに點綴する青松は更に一入の風趣を添えて」と、海軍諜報機関報告というよりは旅行会社の案内かと見まがう名文がある。ただ国分正三先生、これはちょっと筆が走り過ぎではなかろうか。

 

 朝、八時前、町中に響くスピーカーの音で目が覚める。ビルマ軍事政権の朝の号令かと思うと、タイのラジオ放送らしい。八時になってタイ王国国歌が鳴り渡り終了。小奇麗な食堂で朝食をとると、場所がら皆怪しげな人物にも見えてくる。横柄な男ばかりの白人グループに地元の案内人らしいのが付いているのはCIAで、隅のほうの夫婦者を装った中国人顔のテーブルは台湾コネクションか、何かの売人か人買いかと勝手に想像する。

 

             

建物の後ろ、国旗の間に橋が架かっている                                ホテルの食堂のスタッフ

 

 国境の橋は渡らずにメーサイ川に沿って町を見てまわると、ほんの狭い川を挟んで両側に家並みが続き、どこでも簡単に行き来できそうである。

 

             

真ん中奥に国境の橋、右側ターキレクの町                                メーサイ川の上流、左タイ右シャン州

 

 メーサイを出て、東に水田の続く道を40分ばかり走るとメコン河の流れが見える。黄金の三角点である。売店と船着場が並ぶ河岸で眺めると、前方の緑はメコンの中洲で、上流に向かって左側にリゾート風のホテルが在る。あのホテルにはどうやって行くのか尋ねると、目の前の小川を渡す船に乗れと言う。なんと、この小川がメーサイ川でタイ・ビルマ(現ミャンマー)国境、あのホテルはビルマ(ミャンマー)領内に建っていて、カジノがあるのだとの話。

 

 メコン河を望む小高い山の上にお寺がある。黄金の三角点を眺めるには絶好の場所で観光客も多いが、このワット・プラタート・プーカオの本堂は遺構に仮屋根を掛けた形で保存は良くない。因縁書きを読むと、グンヤーン(チェンセーン)の年代記に「昔、農民を悩ます大きな蟹がこの小山の洞窟に住んでいて、ラワ・チャカラージャの三人の息子によって退治された」とあるらしい。説明では、ラワ・チャカラージャは仏暦1182年にチェンセーンを造ったとあるが、この年代の読みの怪しさや話の細部は別にして、登場人物の名とか三人の息子と蟹の登場とか、チェンマイ年代記と共通する伝承である。チェンマイ年代記では兄二人のいい加減さに比べて末弟を評価する話の筋で、やや唐突に思えた蟹のモチーフが、農民を悩ます蟹という説明を読んで納得できた。と、同時にこの大きな蟹というのは、先住民のことかとも感じる。

 

       

メコン河に出会う                                                                      右ラオス、左手ビルマ領内にカジノホテル

 

             

ワットプーカオ                                                                          因縁書き

 

 カジノホテルを覗くことにする。ホテルの看板が揚がった駐車場に車を止め、専用の小型ボートで狭いメーサイ川を渡る。上陸すると荷物検査場、武器持込禁止の表示。つまりそういう種類の人々も来るということか。軽トラック改造の車が、数百メートル先のホテルまで送ってくれる。ホテル入口にミャンマー官憲の事務所があり、パスポートをチェックする。車の中に置いて来たと告げると、「何か身分証明書はないか?」クレディットカードを見せると、「まあこれでもいいか。預かっとくから」、いやそういうわけにはいかないから、タイに戻ってもと言いかけると、「今日中に帰るんだろう。じゃあ250バーツ」。領収証なし。

 ホテルは洒落たつくりで、メコン河に面した対岸はラオス、敷地内の草花は良く手入れされ、庭で働いているのはビルマ人らしいロンジー姿。正面玄関を入ると、大理石とシャンデリア装飾で四つ星以上のグレード、築二、三年と見える。レセプションでちなみに一泊いくらか尋ねると、メコンに面した上等な部屋が4000バーツ(約12000円)、裏側の一番安い部屋でも2100バーツ。「そんなに高いの」と言うと、華人顔のキャリアウーマン風レセプションは、「カジノのチップを5万バーツ(約15万円)お求めになりますと割引になりまして、35万バーツですと無料でございます」。

 カジノはそう大きな部屋ではない。テーブルは10台ほどで、ほとんどバカラ。ミニマムベットは500バーツ、平日の正午前だがタイ華人らしい客が数組いる。メコンを眺めるレストランで食事にする。接客係りはみんなタイ人。パッカーパオカイ(鶏のバジル炒め)で100バーツ、ここは何でも高い。バンコクの路上なら30バーツがいいところだ。国境地帯なのだから煙草は安いかと思うと、これも70バーツ(タイ国内で55バーツのパッケージ)。メコンを見ていると中国の旗を立てた船が行き来している。

 

 タイ側に戻るが帰りはチェックなし。メコン沿いに数キロ下ったチェンセーンの船着場では、版納とか思芽とか書かれた中国船が荷物の積み下ろしをしている。

 

             

三角点の船着場                                                                          チェンセーンに着いた中国船

 

チェンセーンの町は通り過ぎ、下流のチェンコーンを目指す。国道1129号は途中メコン河を離れて山間をショートカットする。山にかかると山地民の村が点在し、この時期は大きなススキに似た草が白から銀色の穂を光らせている。再びメコンに出会うと、川幅は狭く岩礁が多い地形。確かに大型船を通すには爆破したくなる問題のところだろう。もうだいぶ太陽が西に傾き、このあたりを南下するメコンに沿って右手の山は暗い陰をつくり、岩礁の多いメコンの速い流れを挟んだ対岸のラオス側の森林にだけ陽が当たっている。

 チェンコーンの町、というより村に入ると、船着場の看板を辿って河岸に出る。ゲストハウスが数軒あるようで、水際に降りる坂道の途中にはタイのイミグレーションオフィス。河にはロングテールボートが数隻いて、対岸のバンファイサイとの間を往来している。そこに居た人間に訊くと、渡し賃は20バーツ(約60円)だが、ラオスに上陸する外国人はVISAが必要でUS40ドル。正規のVISA代はUS30で、10ドルはその場で発行する手数料とのこと。ちょっと見に行くだけに40ドルは高いし、対岸のバンファイサイに何かあるか尋ねると、一言「マイ・ミー・アライ(何にも無い)」。彼の説明では、朝はラオス側から仕事に渡って来る人間が多く、夕方はその帰りで、対岸のラオスの船着場からは景洪(シプソンパンナーのツェンフン)とルアンパバーン行きの船便があるそうだ。それぞれ二日の距離だそうである。

人が大勢乗った船が渡って来る。降りたのは白人観光客で、イミグレーションの窓口に列を作る。

 

 夕暮れと競いながらチェンラーイに走る。チェンコーンを出て国道1174号入ったつもりが、もうひとつ東側に平行する1020号に入ったらしい。このあたりメコンに注ぐメーイン川の河川平野で景色は良い。幾つめかの村で、1174号に向かう道の表示。水田地帯の真ん中をほぼ直線で横切る農道を走って1174号に出る。ひと山越えてパヤメンラーイの町を過ぎると、メーコック川の水系になる。西に向かって夕暮れの中を走ると、不思議な風景が見えて来る。水田地帯の真ん中にポツンと100メートルほどの高さの切り立った岩山が残っている。ほぼ垂直に立ち上がる山の際まで水田があり、なにか不思議な形である。ちょうど地平線に沈む太陽の、短い時間にたちまち変化する光を浴びている。

 

             

奇岩と夕暮れ                                                                             夕陽を受ける岩山

 

 

 

 

[PR] | ハウスクリーニングデータ復旧FXSEOアクセス解析ハウスメーカーレンタルオフィスSEO対策消費者金融不動産担保ローン時計車 買取ハワイハワイ挙式アスクル転職生命保険テンプレート沖縄旅行動画FX免許合宿二輪引越し消費者金融税理士ゴルフ会員権留学レーシックマッサージ貸し店舗FX投資信託くりっく365アフィリエイト育毛剤FXホームページ制作デイトレードFXホノルルマラソンベスト ハワイ ホテル レーツバリ島ハワイウエディングHawaii hotelsHawaii Activitiesbhhr
【運営会社「パラダイムシフト」サービス】 ハワイ現地オプショナルツアーリラックマ.) - ビジネスクラス航空券 - 格安航空券(1) - 格安航空券(2) - 海外ホテル - 韓国旅行
無料ホームページ作成 - レンタルサーバー - 携帯ホームページ - ブログ - ホテル 予約 - 格安航空券 - 長期滞在 - タイムシェア - ヴィラ - ハワイ コンドミニアム - バリ島 ホテル
[PR] 消費者金融を徹底比較!新金利でお得になった消費者金融を比較