中央線特急VS中央高速バス

 中央本線と中央自動車道は多くの区間で並行しており、中央自動車道の高速バスは特急列車のライバルと言えるだろう。高速バスの利点としては路線が多い、運行本数が多い、快適な設備と言ったことがあげられる。逆にすぐ予約でいっぱいになる、定時性がないなどの欠点も。ここでは区間別に中央本線特急と高速バスを徹底比較してみる。
バスの運行会社と路線
 中央高速バスは路線にもよるが京王バスを中心にJRバス関東、富士急行、山梨交通、諏訪バス、信南交通、松本電鉄などが共同で営業している。起点は新宿駅西口で河口湖・甲府・諏訪・松本・長野・白馬・駒ヶ根・飯田・名古屋と多方面に路線を伸ばしている。途中高速道路上のバス停もある。
居住性とサービス
 鉄道、バスともに座席はリクライニングシート。シートピッチは鉄道が910mm(185系)〜1000mm(383系)でグリーン車ならさらに200mmほど長くなっている。座席は2&2列配置。グリーン車は3列配置が主流だが中央本線では4列配置が基本になっている。グリーン車には裸足でも使えるフットレストや読書灯もある。383系は普通車にもフットレストがある。喫煙席と禁煙席があり喫煙席にはアームに灰皿が内蔵されている。また座席を回転させて向かい合わせにもできる。
 一方バスは車種にもよるが900mm前後が多い模様。背面テーブルもある。フットレストもあるがピッチが狭いので使わないほうが足を伸ばせる気がした。バス車内は全面禁煙。
 トイレは鉄道は和式・洋式両方が基本、バスは洋式が多い。列車の場合飲み物の自動販売機や車内販売も利用できる。一方バスでは水やお茶のセルフサービスがある。
  肘掛 テーブル 缶ホルダ 足置 読書灯 文字放送 防音床 喫煙室 前面展望 その他 作者評価
257
普通車
可動 背もたれ PET対応 × × 特殊ゴム   ★★★★★
257
グリーン
固定 背もたれ 絨毯 ×   ★★★☆☆
351
普通車
可動 肘かけ × ×   × ×   ★★★★☆
351
グリーン
固定 肘かけ ×   × 座席ヒータ ★★☆☆☆
183
普通車
可動 背もたれ ×   × ×   ★★★☆☆
183
グリーン
固定 背もたれ   × FMラジオ ★★★★☆
185
普通車
可動 背もたれ × × ×   × ×   ★★★☆☆
185
グリーン
無し 肘かけ × × 絨毯 ×   ★★☆☆☆
383
普通車
可動 背もたれ ×     ★★★★★
383
グリーン
固定 背もたれ ×     ★★★☆☆
381
普通車
無し 肘かけ × × ×   × ×   ★★★☆☆
381
グリーン
無し 背もたれ 絨毯   ★★★☆☆
高速バス
(例)
無し 背もたれ ×   ×   ★★★☆☆
 設備評価を上に一覧してみた。参考に183系グレードアップ車も入れた。座席の間の肘掛けやテーブルの収納個所は車種で異なる。缶ホルダは最新のE257系がペットボトルにも対応したサイズになっている。足置きは●は靴でも素足でも使え、383系普通車は靴のみで使用する。
 さて見てみるとJRの普通車は格段に進歩しているしまずまずの設備だと思う。E257系は座面スライド機構を備えており、同モデルのE653系(常磐線特急で使用)よりもピッチが5cm広い。383系のピッチは新幹線並である。バスは設備は充実していても特急電車のほうがゆったりとしている感じがある。
 だがグリーン車と高速バスは他地域と比べるとむしろ低い水準にあると思う。183系グレードアップ車で採用された3列シートやFMラジオ(189系のみ)は以後見送られてしまっている。今やJRでグリーン車の3列シートは常識だし北海道や九州は本皮革電動リクライニングシートを採用したり、秋田新幹線ではフリードリンクサービス(便によっては軽食サービスも)をするなどハイレベル化している。高い料金を取る以上サービス向上には努めてほしい。高速バスでも夜行便は3列独立シートが標準なのに中央高速バス(新宿〜高山・名古屋・白馬線)は昼行便と同じ4列シートで、TVモニターによる設備・停留場案内や飲み物(紅茶やコーヒーなども)などもっと充実した路線もある。
進化している予約システムと割引制度
 特急列車では事前予約なしで乗れる自由席と事前に座席を指定する指定席があり、自由席の場合満席でも乗ることができる。指定席の場合¥310〜710(季節による)高くなるが、最近JRが発売している回数券やフリーパスは指定席券無料発行できるようになっているのが特徴。また予約・座席指定も窓口だけでなく自動発行機も新宿・甲府駅にある。指定席特急券の販売のほか回数券での座席指定もできる。回数券は千葉・新宿から各所にあり6枚つづりで3割程度安くなっているものの、盆と正月、GWには使えない。有効期限は3ヶ月だが利用不能期間があればその日数だけ使用期限が延長される。
 指定席料金はJRでは閑散期は特急料金に¥310、通常期は¥510、繁盛期は¥710と変動する。とても料金計算が複雑でこの変動性は廃止すべきである。伊豆・草津方面の観光列車ならまだしも中央線や常磐線の特急列車は平日でもビジネスユースが多く、事実上閑散期がないからである。またお盆や正月などには特急回数券の利用制限などで対応しているのでそれで十分だと思う。
 一方バスは予約が原則で、空席がある場合に限り予約がなくても乗れるが満席なら乗せてもらえない。回数券は4枚つづりで2〜3割引き。利用制限区間はない。JRのように学割やフリーパスはないがほとんどの路線で往復割引制度があり、しかも回数券と同じ割引率だ。
 最近登場したのがインターネット予約サービス。JR東日本のえきねっと、中央高速バスのハイウェイバス・ドットコムがそれで自宅にいながら空席照会や予約ができる。iモードなど携帯電話でも予約できる(夜行除く)。2003年2月から中央線特急も携帯電話予約が可能になった。JR東日本のえきねっとは新幹線ではインターネット割引があるのに在来線特急ではそれが採用されていないのが残念である。
徹底比較-1 新宿〜甲府
運行本数 片道料金 標準所要時間 総評
特急 30往復 ¥3980 1時間35分 ★★★☆☆
バス 24往復 ¥1950 2時間10分 ★★★☆☆
概説:東京の中心地の一つ新宿と山梨県の中心甲府を結ぶ路線。距離は120km程度ということもあって需要も多い。JRは特急あずさ号とかいじ号が原則交互に運行されているので新宿〜甲府は30分おきに走っていることになる。一方高速バスもばらつきがあるものの30〜45分間隔で運行されている。甲府盆地には温泉も数多くありJRでは甲府市の隣石和町、石和温泉駅に毎時1本特急を停車させている。一方バスも2002年から夕方下りと午前上りを甲府駅から市内の湯村温泉まで延長し、宿泊客を狙う。
 所要時間は特急列車は新宿〜甲府が最短1時間25分。しかし列車によって異なる。スーパーあずさが1時間半弱、あずさが1時間半〜1時間40分、かいじが1時間40分強で、しかも朝の上りはラッシュに重なるので2時間近く要している。一方バスは新宿西口から甲府駅まで標準2時間10分である。朝の上りは特急始発が遅く所要時間もバスとさほど変わらないが、夜は新宿発20:30でバスがなくなり特急は新宿23時発まである。
割引制度:バスは新宿〜甲府・湯村温泉の回数券(4枚セット¥7020)のほか平日限定回数券(2枚セット¥2900)など平日利用を優遇している。一方JRではかいじ東京週末フリーきっぷ(¥4500)がある。これは週末の特急(かいじ・はまかいじ号限定)指定席往復のほか東京周辺のJR線(りんかい線・東京モノレール含む)が2日間乗り放題という鉄道ならではのメリットを生かした企画券で出発地は塩山〜竜王の各駅のみ。あずさ回数券は6枚セット¥16800で指定席も利用できるがこれは東京でも山梨でも販売している。
総評:バスと特急は時間帯によって優位性が変わる。甲府起点で考えると朝はバスのほうが早くからあるが夜の下りはすぐ終わる。バスは等間隔運行がされていないのが残念。特急もラッシュ時は遅いが昨年末改正で終電を延長したのは評価できる。また割引制度を見ればバスは平日、JRは週末の利用を優遇しているのはわかる。バスは週末の渋滞、JRは平日ラッシュによる遅延が運行のネックになっていることと関係があるのだろう。
徹底比較-2 新宿〜諏訪盆地
運行本数 片道料金 標準所要時間 総評
特急 18往復 ¥5980 2時間25分 ★★★★★
バス 11往復 ¥3060 3時間15分 ★★☆☆☆
概説:温泉や諏訪湖、白樺湖などの観光スポットが点在する一方、大手企業の精密機械工場が集積するためビジネスユースも多い茅野・諏訪・岡谷エリア。上表は新宿〜上諏訪での比較。特急は30分〜1時間おきで全便が茅野、上諏訪に停車。スーパーあずさ号で上諏訪まで最短2時間強だが、岡谷は一部通過なので普通列車乗換えが発生する。上諏訪駅にある足湯は列車を待つには丁度良い。一方バスは約60分おきだが等間隔運行ではない。中央道が諏訪湖の南側を通るため一般道を走る距離が長くなってしまう。また新宿から上諏訪駅を経由して岡谷駅までいくのが基本だが、11往復中3往復は逆に岡谷駅を経由して上諏訪駅へ向かう。この場合新宿〜上諏訪は3時間40分かかる。このため停留場も異なる。また茅野では中央道茅野バス停が市街地から離れているのでこの点でもバスは不利に。なおバスは途中甲府付近の双葉SAで10分程度休憩する。
割引制度:バスは往復割引で上諏訪・岡谷¥5500、回数券(4枚セット)でも¥11000と同じ割引率であるが甲府と違い平日割引はない。あずさ回数券(6枚セット)は新宿〜上諏訪・下諏訪が¥25200、新宿〜岡谷が¥25500。さらに行楽用の東京週末フリーきっぷ(往路はあずさ52号・スーパーあずさ2号限定)は辰野〜富士見の各駅発で¥7100と格安だ。東京発は設定されていないが、これで往復の特急指定席と東京周辺のJR線(りんかい線・東京モノレール含む)が2日乗り放題になるし、使い方次第ではバスの往復割引よりも安くなる。
総評:中央線特急で最も需要の多い区間。それだけにJR特に長野県側は力を入れていると思う。一方バスは地理的な制約が大きい。
徹底比較-3 新宿〜松本
運行本数 片道料金 標準所要時間 総評
特急 あずさ 10往復 ¥6510 2時間50分 ★★★☆☆
Sあずさ 8往復 2時間35分 ★★★★☆
バス 16往復 ¥3400 3時間10分 ★★★★☆
概説:長野県中部の都市で空港があるものの羽田からの路線はない。特急はスーパーあずさ8往復とあずさ10往復があり所要時間が最短2時間25分(スーパーあずさ6号)、最長3時間8分(あずさ52号)と差が大きすぎる。またスーパーあずさ号でもあずさ号でも2時間40分程度の便があるなど所要時間差が大きい。停車駅が少なくても遅かったり多くても速かったりする。このへんは2002年末改正で多少是正されたがまだまだ改善する必要がある。一方バスは駅から徒歩3分ほどのバスターミナルから出ているが、諏訪線よりも距離が長いのに所要時間は短い。高速道路区間が長く一般道区間が短いためだ。途中双葉SAで休憩する。また松本は上高地への玄関口で松本駅からは松本電鉄が、松本バスターミナルからはバスがでている。
割引制度:バスは往復割引で¥5950と特急片道より安い。回数券(4枚セット)では¥11900と同じ割引率だ。あずさ回数券(6枚セット)は新宿〜塩尻・松本が¥27000だ。また東京週末フリーきっぷは塩尻・松本発もある(¥7700・往路はあずさ52号・スーパーあずさ2号限定)。
総評:松本駅出発を見る限りあずさ号は空席が目立ち岡谷・上諏訪・茅野・小淵沢と次第に客が増える。一方スーパーあずさ号では松本でかなり席が埋まっている事が多い。新宿〜松本ではあずさ号はいまいちだ。バスは岡谷JCT〜松本ICを長野道でショートカットしているため速くなっていると思われる。
徹底比較-4 新宿〜白馬
運行本数 シーズン本数 片道料金 標準所要時間 総評
特急 2往復 4往復 ¥7870 3時間35分 ★★★☆☆
夜行快速 × 下り2本 ¥5760 5時間45分 ★★★★☆
バス 4往復 5.5往復 ¥4700 4時間30分 ★★☆☆☆
夜行バス × 下り1本 7時間 ★★★☆☆
概説:北アルプスのウィンターリゾート地として有名な白馬。特急はスーパーあずさ2往復で、従来混雑期は新宿からの臨時列車を運転していたが、近年はスーパーあずさ号定期列車の松本〜白馬延長が主流になり臨時便での所要時間も4時間を切った。また名古屋からのしなの号(これを含むと新宿〜白馬シーズン特急本数は5往復に)と新宿からの夜行快速ムーンライト信州91号はほとんど毎週末運転されている。後者は全席指定で女性専用車(1号車)もあり、3列シートのグリーン車は快適。普通車指定席は青春18きっぷとの組み合わせで大幅に安くできるが普通車は消灯しないのが残念。一方バスは通常4往復、冬季6往復と本数が多い。運賃は確かに安いが4時間30分という所要時間はいただけない。移動だけで半日使ってしまう。夜行バスは今や独立3列シートが標準だが、夜行便も昼行便も共通運用しかも季節運行なので4列シートになっているのは残念。だが快適なのは確かだ。
割引制度:他の路線に比べ利用客が観光偏重だが回数券がある。バスは往復割引(¥8500)、回数券(4枚セット¥17000)だ。一方JRのあずさ回数券(6枚セット)は新宿〜白馬・南小谷が¥35100。東京週末フリーきっぷは白馬始発の設定はない。一方東京発では長野新幹線+路線バスになるが冬季限定往復きっぷスノーライナー白馬栂池(¥17200・学割¥14900)がある。
しなの号との接続を:実は長野からも週末を中心に1往復が白馬まで乗り入れる。このしなの号とあずさ号を乗り継ぐとそれぞれに特急料金がかかってしまう。下りのしなの5号はスーパーあずさ3号の直後で接続列車がないが、帰りのしなの24号は松本で千葉行きのあずさ68号に接続する。逆に名古屋方面から松本でスーパーあずさ号に乗り換えることもできるがこれもそれぞれに特急料金がかかってしまう。これは相互で特急料金を通しで計算できるようにすべきではないか。また回数券でも乗り継ぎができるようにするなどの工夫が必要だろう。
総評:シーズン期の夜行は従来急行列車中心だったが2002年12月から全席指定快速列車中心になった。急行料金が不要になり青春18きっぷなどの格安きっぷでも利用できるようになったとともに、全指定席で着席率を上げたのは英断と言えよう。一方バスも所要時間というハンデがありながらも格安でしかも夜行便まで出しているのは評価できる。
徹底比較-5 新宿〜駒ケ根
運行本数 片道料金 標準所要時間 総評
特急+飯田線 6往復 ¥6930 3時間35分 ★★☆☆☆
バス 16往復 ¥3650 3時間50分 ★★★★☆
概説:急行電車全盛期、新宿から急行こまがね号が直通していた路線。特急中心のダイヤになってからは廃れた。一方中央線に沿って走っていた中央道も岡谷から南下し飯田線に沿って走る。飯田線は電化されているとはいえ、駅間が短い上に軌道が弱く急カーブ急勾配もあるため列車は非常に遅い。高速バス運行に格好の場所だ。上表の特急+飯田線は岡谷駅で特急と飯田線直通普通列車を乗り継いだ例だが一部上諏訪乗換えもある。バスは1日16往復。往復割引や回数券では割引率は低いが、始発便は4:30駒ケ根駅発にするなどかなり努力しているとみえる。岡谷までではJR特急のほうが速いのだから、飯田線の電車がいかに遅いかを露呈する結果になった。もう一つ新宿〜飯田という路線があるが比較の結果は明らかである。
徹底比較【番外】 長野〜松本
運行本数 片道料金 往復料金 標準所要時間 総評
普通(快速含む) 19往復 ¥1110 ¥1430 1時間15分 ★★★★☆
特急 13往復 ¥2260 ¥2430 50分 ★★★☆☆
バス 15往復 ¥920 ¥1530 1時間20分 ★★☆☆☆
概説:県内の2大都市を結ぶローカル幹線。長野自動車道の整備で台頭してきた高速バスは定員制。満員にならない限りいつでも乗れるし切符を買う必要もない。鉄道では松本〜長野のうち松本〜篠ノ井が単線だったが、JR化直後に明科〜西条がトンネルに切り替えられ複線化された。3箇所の行違い設備がスイッチバック式で残るなど難所もあるが普通列車でも高速バス並のスピードだから大したものだ。名古屋からの特急しなのが乗り入れるが松本〜長野のみの利用も多い。また普通列車と快速みすず号は115系3両だが朝晩にE257系(長野総合車両所の検査を兼ねている)の快速もある。長野〜飯田の快速みすず号は国鉄末期に高速バス対抗策として169系回転リクライニングシート車を新急行かもしか号に運用したのが始まり。1988年に急行料金不要の快速みすずになり1998年に115系になった。アコモデーションでは大幅なサービスダウンである。信越本線長野〜直江津では特急の中古車189系の普通列車が運行されておりこれを手本にすべきだろう。特急では383系を使うも最高時速110(複線区間は120)km/h、最大曲線通過速度本則+15km/h振り子制御なしと勿体無い気もするが。
割引制度:通常JRでは601km以上でないと往復割引は適用されないが松本〜長野76kmでも往復割引が効く。しかもかなりの割引率だ。また信州特急料金回数券(4枚セット¥2000)と併用すればしなの号にも乗れる。上表の特急料金は自由席利用、往復料金は信州特急料金回数券を使用した場合。信州特急料金回数券は長野県内(中央西線と飯田線は除く)の特急列車のどの区間でも利用できる特急券の回数券で、松本駅での乗り継ぎもできる。つまり茅野からあずさ号で松本へ向かいそこでしなの号に乗り換えて長野までいっても途中下車しない限り回数券は1枚でいい。特急乗り継ぎの場合特急料金は通しで計算できないので大変お得だ。
総評:地方都市間輸送では高速バスが優勢というのが一般的だがその中でかなり頑張っているとおもう。先日引退した中央線の183系を普通列車に投入するくらいはして欲しいが。

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